昭和60年(1980年後半)ごろになると、あれだけ乱立していたSM誌もほとんどが廃刊となり、どちらかというと以前のSM誌の流れを組んでいた三和出版のSM秘小説、斬新な写真や情報を発信するようになったミリオン出版のSMスナイパー、少し明るいイメージでSMを見せようとしたSMスピリッツの3誌くらいになっていた。
このSMスピリッツには阿部譲二氏の転落シリーズがそしてスナイパーには屈辱シリーズ掲載されていたため、それだけでも見る価値はありました。
そして現在ではSM秘小説は出版社がマイウェイ出版に変わり2ヶ月に一度の発行となり、SMスナイパーはワイレア出版に変わり現存している。さらにマゾ向けとしてスナイパーEVEを発刊している。 
 そして、この頃になりようやく我々マゾヒストにとってもメインとなる雑誌が発刊されるようになった。
いわゆるマゾ専門誌である。
まずは三和出版から発売された正統派M専門誌と副題ががついたスレイブ通信である。
スレイブ通信は従来SM誌からのマゾ小説に加えて投稿小説や告白手記などをふんだんに取り入れて実に興味深いものとなっていた。特に初期の号には阿部譲二氏の作品はもちろん、萩原耕一氏の「家畜奴隷スラッグ物語」や砂戸増造氏の「セピア色のドミナ」など優れた作品が登場している。
 それから数年遅れて発刊されたのがやはり三和出版から倒錯のマニア情報誌と名打ったQUENNSである。
QUENNSは情報誌というだけあってSMクラブの女王様の紹介やプレイ内容解説、告白手記や写真なども多く使って魅力のあるものとなっていた。
後半にはMビデオレビューなども積極的に取り入れていた。
睦月影郎先生の「保健室の聖女」「学校医・瑠里子の休日」なども掲載されていました。
この雑誌で衝撃を受けた事はVOL.14に投稿されていた「美神に仕える歓び」というものでアンナ様が開いていたS女性とM男性の憩いの場スナック「モンシェリー」で出会ったみゆき様というS女性様と投稿者のやり取りが写真付きで紹介されていて素晴らしいものだった事でです。
そして、多くのM専門誌が世に登場しはじめた・・
SMシークレット
レズビアン&マゾヒズム
クイーンマガジン BLUE
マドンナ スーパーライブ
M的生活
女王様の部屋
Mistyなどetc
しかし、本来喜ぶべき事だったのだろうが、この中にはいわゆる駄本がいくつかあり購入後、意気消沈した事が多々あった。いわゆる以前の記事の焼き直しや単にSMクラブの女王様の写真だけを載せた物など・・我々マゾヒストの心理を理解していない雑誌も多々あった事だけ書いておきましょう。このころの雑誌社にはマゾ物を出せばある一定の売上は必ずあるという考えだけで創刊した雑誌が多かったそうです。もっともそういう雑誌がわずか数巻で廃刊となってますね。
その中でも異彩を放っていたのがSMシークレットとレズビアン&マゾヒズムではないでしょうか?
スター出版から発売されていたSMシークレットはもともとSM交際誌だったのがいつのまにかSM情報誌となったものです。この交際コーナのにS女性からのメッセージを目当てにこの雑誌を買った方は少なくないと思います。現に私も2人の女性と文通し写真交換までして、そのうちのお一人の奴隷になった事がありました。(いつかそのやり取りの手紙を公開しようと思います) さらにこの雑誌には暗藻ナイト氏の連載があった事を書き加えなければならないだろう。
レズビアン&マゾヒズム(L&M)の方はレズビアンとマゾヒズムという全く異なる性癖を一緒に扱っていた実にめずらしい雑誌だった。もっともマゾ情報が大半を占めていたがレズビアンの投稿なども覗けて面白い雑誌だったと言える。
たつみひろし氏のマゾ劇画も掲載があった。

ファッションとフェチにこだわった雑誌BIZARRE MAGAZINEも時代を映し出す良い雑誌だったと言える。 
我々マゾヒストにとって待ちに待った雑誌が創刊されたのは1990年の事だった 。司書房より女王館通信として発売された雑誌、そうですすぐ後にMISTRESS(女王館通信)と改名されたこの雑誌こそ、時代に即したものだったのではないでしょうか?
モデルのように洗練された女王様の写真・・・スタイリストやヘアメイクなども使って撮った写真はまさに美しい出来栄えだった。
 さらにS女性様からの自筆メッセージを掲載したりコミックや女王様へのロングインタビュー等、さらに斉藤優氏の「隷属と改造の日々」が連載されマゾヒストにとって満足いく雑誌だったのは間違いない。
 そしてこの雑誌によってSMというか女王様というものが世間に認識されるようになり、SMクラブで働く女性が著しく増えた事はご存知の通りである。それだけ美しい女王様というイメージを作りあげたのであろう。
残念ながら2007年司書房は姿を消しミストレスも73号を最後に終了した。
 そして、ミストレス創刊からしばらくたって一水社からマゾヒスト専門誌 家畜人という雑誌が発売される。この雑誌も巻頭にカラーのグラビアをもってきて有名女王様やMビデオ撮影風景、素人女性を女王様として参加させての写真などがあり、さらに女王様のエッセイや三条友美氏のマゾ劇画、嶋克巳氏のマゾ小説なども掲載されていた。こちらも廃刊となっている。
 もう一冊、桜桃書房から究極のM専門誌として発売されたCARMENという雑誌があった。
この雑誌の特徴は半分以上を占めるグラビアだろう。さらにその時代の人気女王様のインタビューが載せられていてこれを見てSMクラブに通った方も少なくないだろう。
小説としては桐生涼氏の作品がよく掲載されていた。こちらも廃刊されている。
 その後MAAMやWARNING・卑弥呼などのM専門誌も発売されたが長続きはしなかった。特に大洋図書のMAAMには九紋竜氏のマゾ劇画や館淳一先生の小説などが載っており期待の雑誌だったが発行されたのが遅すぎたのかもしれない。雑誌的には良かったと思う。
 そして最後に三和出版から発売された女王様バイブルを紹介しないわけにはいかないだろう。この雑誌は素人S女性を主体に構成されており実に興味深いものだった。すでに女性がSだと平気で言える、そんな時代になったからこそできた雑誌ではないだろうか。
その女王様バイブルも19号を最後に廃刊され現在ではDVD女王様聖書として姿を変えている。
この頃にはすでに発売されていたスナイパーEVEだけはいまだに現役として出版されているマゾ専門誌である。 
 このように雑誌は推移し、現在に至っている。インターネットやDVDが普及し、すでに雑誌は情報誌としての役割を終えたような感があるが、果たしてそうであろうか?
私はいまだに良い雑誌、良い作品に出会った時の感動は忘れられません。その価値はいつになってもなくなる物ではないと思っています。
現にここで紹介した雑誌の中には入手困難でプレミア価格が付いているものも多数あります。いつになっても良い物は良いのではないでしょうか?
そんな事を思いながらこの歴史を振り返った事に終止符を打ちたいと思います。



私達は誇り高くとも哀れなマゾヒストなり
私達は志高くとも卑しいマゾヒストなり
人々は私達を変態と呼ぶ、私達はそれを否定もしなければ皇帝もしない。ただ微笑まん

・・・・・・
私達は貴女様の臀下に圧殺されんがための痴人なり
私達は貴女様の足蹴に潰滅されんがための奴隷なり
・・・・・・・・
赦されよ、女王様、私達の饒舌を貴女の秘花で塞ぎ召され
赦されよ、女王様、私達の淫書を貴女の黄金で汚し召され
(スレイブ通信 奴隷宣言より引用)

題名 著者 記載雑誌
家畜奴隷スラッグ 萩原耕一 氏 スレイブ通信
屈辱の生命保険 阿部譲二 氏 スレイブ通信
家畜人
CARMEN
MISTRESS