その2 判決を受けた私はしばし呆然としてそこに立ちすくんでいたが女性警察官の声に我に返った。 「手を後ろに回して」 女性警察官は強い口調で言った。 私は無言で手を後ろに回した。そしてその手には手錠が掛けられた。入廷時は前手錠だったのが後ろ手錠にされたのだ。 そしてその背中を押された。法廷がら出る時に奈津美と目が合った。彼女は私を冷たい目で睨みそして嘲笑した。私はだまって頭をうなだれるしかなかった。 法廷から出るとその廊下を後ろ手錠のまま女性警察官と一緒に歩きそのままつながっている次の建物に入っていった。 そこは登録センターと案内板に書いてあったが初めて来るところであった。 「あの・・ここで何を?」 私は尋ねたが・・ 「だまって歩きなさい!」 私よりも10歳以上は年下であろう20代の女性警察官に怒られてしまった。 そしてそのビルのエレベーターに乗りほぼ最上階近くの51階で降りた。そこにはほとんど人は歩いておらず何か冷たい感じのフロアーだった。 「特別登録所・・・」 私は一人でそうつぶやいたが女性警察官にまた睨まれた。 その中の部屋の一つに入っていくとカウンターの中に女性が3人コンピューターに向って仕事をしていた。 女性警察官が「お願いします」と言って用紙を渡すとそれを受け取った女性が何かキーボーでを打ち込みはじめた。 そしてその少し化粧が濃い目の茶髪の女性が私に尋ねた。 「貴方は田辺一樹ですね」 呼び捨てにされた私は少しあわてて 「あ、は、はいそうです」 「これに拇印を」 一枚の紙を警察官に渡すと彼女は後ろ手になった指から拇印を取った。 そしてその紙をまた返すと・・・ 「では削除します」 そう言って彼女はEnterキーを押した。 「終りました。これで田辺一樹という人間の情報はすべて削除されました。そういう人間はこの世に存在しませんので」 「そしてこれが新しい登録情報です」 女性警察官がその紙を受け取り目を通していたが・・ いかにも事務的な言葉で言われた私は何も理解できなかった。 そしてその部屋から出て同じフロアーの違う部屋に連れて行かれた。そこは椅子がいくつか並べてあるだけの部屋だった。
「さあ、そこに土下座して今まで私にとった非礼を詫びなさいよ!」 「す、すいません・・・でした」 「何、その言葉遣い?」 さらに私の横腹を蹴りつける。 「うう・・・や、やめて・・・も、申し訳ございませんでした」 私は年下の女性の前でほぼ全裸で土下座をして謝るという屈辱を受けて顔が真っ赤になった。 彼女はその頭をぐいぐい踏みしめた。 (続く) |