その5
「先生、私も少しいいですか?」
付き添っていた女性警察官が目を輝かせながら口を開いた。
「ちょっと、待って下さいね。もう1本注射を打ちますから」
女医は立ち上がって私の方にきてニッコリと笑ってぎっちりと固定された私の肩先に注射針を刺した。
「あぎゃ〜」
先ほどのの注射とは比べ物にならな激痛に私は大声で叫んだ。なぜなら例の薬のせいで痛みが何倍にも増して感じられるようになっていたからだ。
女医は硬直している私の肩に楽しみながらゆっくりと薬を流し込んでいった。そして針を抜いた。
「ああ〜・・・」
私は痛みを何とか耐えた安堵からため息をついた。
「ふふ、芳恵ちゃん。この牡に何の薬を注射してあげたのか、教えてあげて」
「先生、いいんですか。教えちゃって?」
「いいのよ。どうせこいつは終身牡奴隷でしょう。二度と人間にはもどれないんだから」
「そうですね。お前、よくお聞き!一つは失神防止剤よ。これを一度打たれるとどんな苦痛を受けても失神できない体になるの。わかる永久にお前は苦痛を味わう事ができるのよ。ふふ、嬉しいでしょう?」
「あああ・・そんな・・」
「もう一つはね、」
「あっ芳恵ちゃん、ちょっと待って」
女医はその言葉をさえぎり、看護婦と女性警察官とひそひそ話しをし始めた。私は自らに起こった事を受け入れられないでいてその話を聞く余裕さえなかった。
しばらくすると女性警察官が私の方に来て正面に立った。
そしていきなり私の頬を力一杯のビンタが襲った。
バシッ!バシッと音を立てて私の両頬が打ち据えられる。その痛みといったらまるで顔がどこかに飛ばされてしまうような程の痛みだった。牡奴隷順応薬のせいでこのような痛みを感じるのだと思った。
「ふふ、どう、痛い?牡奴隷なのだからこれからもっともっと辛い目に遭うのよ。どうなの耐えられる?」 「いえ・・も。もう・・・」
私は小さな声でそう言った。
「だったら、殺してあげようか?それとも自分で死んでしまえばいいじゃない?ほらっこれ貸してあげるわよ」
そう言って携帯していた拳銃を見せた。
そう聞いた途端、私の感情にとてつもない不安が襲ってきたのだった。・・・いやだ・・死ぬのは絶対・・・怖い・・・
「どうしたの、ほら?」
「や、止めて・・し、死にたくない・・・助けて・・・・」
「
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「あはは・・薬は効いているようね。ふふ・・自殺防止剤よ。お前は死とか処分とかいう言葉にものすごく怯えるようになったのよ。絶対自殺なんてできないわよ。あはは・・・」
この二つの薬も例の上松麻子教授が作った事を後に聞かされた時、何と残忍な女性だと私は恨んだ。
しかしこの時はいずれその残忍な教授の生贄になるとは夢にも思ってなかった。
「さあ、これでお前の体は文字通り牡奴隷の体になったのよ。後は心を入れ替えてもらいなさい!ほほほ・・」
女医はそう言って私を蔑んだ。
「芳恵ちゃん、外して」
「はい、先生」
柱の戒めを外された時、私はその場に崩れ落ちた。
「207号!先生と看護婦さんに御礼を申し上げるのよ!」
女性警察官が強い口調で言った。
その声に私は震え、すぐさま彼女達の足下に行き、頭を下げた。
「あ、ありがとうございました・・・」
「何よその言い方?全くなってないわね。こうしてもっと頭を下げるんでしょう」
女医の靴が私の頭をグリグリと踏みつけた。
「誰に御礼を言ってるのよ。私達の名前もわかってるでしょう?」
私はさっき看護婦が瑠璃子先生と言ったのをかろうじて覚えていた。
「る、瑠璃子様、芳恵様・・・ありがとうございました。」
「何を?本当に失礼な牡奴隷ね!お前みたいなのを処置してやった御礼でしょう。しっかり言いなさいよ。この能無し!」
「ううう・・」私は情けなさに思わず涙した。
「瑠璃子様、芳恵様。私のような者を処置して戴き・・・ありがとうございました」
「あらあら、こんな事で泣いていたらこれからどうなるんでしょうねぇ。とっても楽しみね、ほほほ・・・」 |
そして散々二人で私の頭をを踏みにじり罵声を浴びせられた私はようやく解放され女性警察官に連れられ部屋を後にした。
四つん這いで歩く廊下は私の惨めさにさらに追い討ちをかけるようだった。そして膝が擦りむけてものすごく痛く感じられたのはあの恐ろしい薬のせいであろうか・・
さらに私はその姿でエレベータに乗る事になった。さすがに誰も乗っていなかったのでホッとしたがすぐその下の階に止まりOLのような格好をした女性が3人乗り込んで来た。どこかに休憩にでも行くのだろうか。
私の姿を見ても驚きもせずひそひそと話を始めた。
「・・WH207だって・・・これってもう牡奴隷になったってことよね?・・・・そうよ・・・もう・・・だからこんな格好なのよ。」
「でもまだ躾けられてないみたいね・・・・そうね、なんとなくぎごちないし・・・・これからあそこに連れて行かれるのよきっと」
くすくす笑う彼女達の足下で四つん這いでいた私は恥ずかしさのあまり真っ赤になって頭をうなだれた。
「207号、女性に対しては土下座よ」
女性警察官が愉快そうに私に命じて私の背中を蹴った。かなりな痛みだ。
「ううっ!」
痛みに悶えながらも彼女達の方に向き直り頭をエレベーターの床につけて土下座をした。
「あはは・・」
彼女達は声をあげて笑っていた。
「よろしければ踏みつけてもいいですよ」
「あっ結構です・・・なんか靴が汚れそうで・・ふふふ・・」
そう言って数回下の階で降りていった・
「お前!牡奴隷は全ての女性を崇拝し服従する事を義務付けられている事を忘れるんじゃないわよ!」
「はい・・・」
私は女性警察官に頭を下げた。
エレベーターは21階で止まった。
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(続く)
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