下流の人生 その2 残飯を食べ終えた敏雄はロープを解かれ、女子寮の庭に引き出された。外の水道で顔を洗わされ、全身に防虫スプレーを掛けられた。それから軍手とビニールの大きなゴミ袋を渡された。加奈子は竹刀を持ち、敏雄に命じた。
「男奴隷、庭の草を全部抜きなさい!」
敏雄は夏草が生い茂っている広い庭を見て、呆然となった。自分一人では夜になっても間に合わないかもしれない。加奈子は呆然としている敏雄の近くを、竹刀で素振りをした。
「何ぼやぼやしてるの!早く取り掛かりなさい!」
「は、はい、ただいま。」
竹刀の風を切る音に怯え、敏雄は慌ててしゃがみ込み、伸びた雑草を軍手を着けた手で抜き始めた。抜いた草は根っこの土をよく払い落とし、ゴミ袋に入れる。全裸に軍手だけ着けた惨めな姿の敏雄に、夏の太陽が強い日差しを容赦無く照りつけた。虫が多く、防虫スプレーを掛けられていても結構刺された。
草むしりを始めて、十分足らずで全身に汗が噴き出した。加奈子と真奈美はつばの広い帽子をかぶって、敏雄を監視している。加奈子が敏雄の後ろから、股間のものを竹刀の先でつついて蔑んだ。
「大の男がフリチンで草抜きしてる姿は、滑稽ね。こんなものをぶらぶらさせて、恥ずかしくないのかしら。まあ、女の下着を盗む変質者に恥なんて無いわよね。」
あまりの恥辱に敏雄は雑草を抜く手が震え、目の奥が熱くなり、涙がこぼれそうになった。しかし竹刀で叩かれる事を恐れ、俯いて下唇を噛み、黙々と草むしりを続けた。
作業を始めて一時間後、全身に汗をかいている敏雄はさすがに喉の渇きに耐えられず、見張りを交代した美由紀と梨恵に顔を向けた。彼女達はペットボトルのミネラルウォーターを、美味しそうに飲んでいる。敏雄は二人に頼んだ。
「あの、すみません。喉が渇いてしまって、水を飲ませて下さい。」
美由紀は敏雄につかつかと近づくと、彼の髪を掴み目が眩むような往復ビンタを張った。敏雄の口から悲鳴が漏れた。
「草むしりが殆ど終わってないのに、寝言を言うんじゃないわよ!全部終わってから、お願いおし!」
美由紀に一喝され、敏雄は彼女の足元にひれ伏して詫びた。
「申し訳ございません。どうか、お許しください。」
敏雄はたったの一晩で、奴隷の卑屈な態度が身に付いたようであった。美由紀はひれ伏した敏雄の頭をサンダルで踏みにじり、叱りつけた。
「男奴隷の分際で私達に飲み物を要求するなんて、身の程知らずもいいとこよ!分をわきまえなさい!」
ひと回り以上も年下の女性に頭を踏まれて罵られた敏雄は、口惜しさのあまり顔を真っ赤にし、涙で地面を濡らした。
「美由紀、まあ、落ち着いて。いくら男奴隷でも、この暑さじゃ喉も渇くわ。水ぐらい恵んで上げましょうよ。」
梨恵の意外と優しい言葉に、美由紀は頭を踏んでいた足を外し、敏雄は安堵した。梨恵はペットボトルを手に、声を掛けた。
「男奴隷、顔を上に向けて、大きく口を開きなさい。」
敏雄は上半身を起こし、言われた通りに顔を上げて口を開いた。喉がからからの彼は、梨恵が早く口に水を注いでくれるよう、切実に願った。
「じゃあ、水を恵んで上げるわ。」
梨恵はペットボトルをくわえると、ミネラルウォーターでガラガラとうがいをして、その水を敏雄の口に吐き出したのだった。梨恵の思いがけない行動に、敏雄は目を白黒させたが、喉の渇いていた彼はそのまま飲み込んでしまった。
「ふふふ、この男奴隷を痰壷に使って上げたわ。美由紀もやってみない?」
「そうね、私も喉のために、うがいぐらいした方がいいわね。男奴隷、口をお開け!」
美由紀も梨恵に倣い、口をゆすいだ水を敏雄の口に吐き出した。彼は屈辱で顔を真っ赤にしたが、飲み下すしかなかった。唾液が混じり、とろりとした感触が屈辱感を倍増させた。美由紀は竹刀で敏雄を小突き、命じた。
「水分補給が済んで、元気が出たでしょう。早く草抜きに取り掛かりなさい!」
「は、はい…」
敏雄は目に口惜し涙を浮かべ、屈辱で肩を震わせて草むしりを続けた。
見張りを交代した久美子と彩香も、美由紀から話を聞いて面白がり、同じ様に口をゆすいだ水を敏雄に飲ませた。最初、梨恵に飲まされた時は屈辱を感じた敏雄だったが、夏の日差しに照らされ喉がカラカラで、脱水症状のおそれがある彼にとっては恵みの水となり、ありがたかった。
昼になって一旦休憩となった。敏雄は女子寮のホールに戻され、女子大生達が昼食を済ませた後、洗面器に入れられた残飯に顔を突っ込んで食べた。夏の日差しを避けられるクーラーの効いたホールは、彼にとって天国のようだった。加奈子は残飯をあさる敏雄を見下し、嘲笑った。
「お前、女が吐き出した水を美味しそうに飲んだそうね。お前に人間としての尊厳は無いの?女の痰壷になって、嬉しい?お前みたいな最低のうじ虫はもっと貶めてやるから、楽しみにしてなさい。」
「お漏らしする程気持ちよかったんじゃ、罰にならないからね。改めてお仕置きして上げるわ。」
加奈子は大きく振りかぶり渾身の力で、一本鞭を敏雄の体に叩き込んだ。
「ぎゃああーっ」
唸りを上げて黒光りする一本鞭が蛇の様に絡み付き、敏雄は生きたまま体が引き裂かれる程の激痛と、骨まで響く衝撃を受け、獣じみた絶叫を上げた。加奈子は容赦無く二発目を、彼の体に叩き込んだ。真っ赤に焼けた鉄棒で殴られたと錯覚する程の激痛に、敏雄は体中の筋肉を硬直させて悶え苦しんだ。加奈子は彼が苦しむ姿を見て、大喜びした。
「この鞭は結構威力が有るわね。真奈美もやってみない?」
真奈美に異論が有る筈も無く、加奈子から鞭を受け取り、振り上げた。
「男奴隷、覚悟しなさい!えいっ!」
掛け声と共に鞭が振り下ろされ、這っていた敏雄の背中を直撃した。彼は背中から焼けた刃物で胴体を切断された様な激痛にのたうちまわって苦悶し、必死に慈悲を請うた。
「ああーっ、許して下さい。真奈美様、どうか、お慈悲を!」
しかし敏雄の哀願は、真奈美を更に盛り上げさせただけだった。
「鞭打たれるのが嫌なら、逃げればいいでしょう。それっ!」
再び鞭が振り下ろされ、敏雄の両腿を打ち据えた。足を切断された様な凄い痛みに、絶叫が湧いた。逃げるにしても首輪のリードが鉄製ポールに繋がれているので、リードの長さの範囲を這い回るしかなかった。加奈子は真奈美に注意した。
「真奈美、この鞭は威力があり過ぎるから、一人二発までにしましょう。交代して。」
真奈美は少し物足りない様子で、一本鞭を美由紀に手渡した。鞭を手にした美由紀は、はしゃいで敏雄に告げた。
「男奴隷、私の鞭は痛いわよ。頑張って逃げなさい。」
美由紀はわざと狙いを外して、敏雄のすぐ傍の床を鞭で叩いた。怯えた敏雄は悲鳴を上げて、飛び跳ねた。彼の慌てふためく姿を、女子大生達は大笑いした。二発目は敏雄の尻を横殴りに打ち据えた。彼は絶叫を上げ、背をのけ反らして両手で尻を押さえた。美由紀は返す手で敏雄の胸を打ち、一瞬呼吸を出来なくさせて彼を悶え苦しませた。敏雄を二回打った美由紀は、久美子に鞭を廻した。久美子は興奮した面持ちで、目を輝かせて鞭を振り上げた。
最後の彩香が鞭打ちを終えた時には、敏雄の体中に赤い条痕が走り、息も絶え絶えに床にうつ伏せに倒れていた。鉄製のポールからリードを外した加奈子は、敏雄の顔を蹴って叱りつけた。
「男奴隷、何時まで横になってるの!昼休みは終わりよ。早く草むしりに戻りなさい!」
敏雄は鞭打たれた痛みで硬直し、引きつった体を無理に動かした。手足を少し動かしただけでも痛みが走ったが、ふらつきながらも何とか立ち上がった。その途端、加奈子が敏雄の背に乗馬鞭の一撃を浴びせ、彼は真っ赤に焼けた鉄棒を押し付けられた様な激痛に、悲鳴を上げてうずくまった。
「変態のくせに、偉そうに二本足で立つんじゃないわよ!お前はもう人間じゃないんだからね、私達の許しを得ない限りは四つん這いで動きなさい。勝手に人間みたいに立ったら、鞭が飛ぶわよ。分かったかい、男奴隷!」
「は、はい、身に染みて分かりました、加奈子様…」
敏雄は鞭の痛みとあまりの惨めさに、目から涙がこぼれた。しかし、これ以上鞭打たれないように、卑屈に答えるしかなかった。
敏雄は四つん這いで庭に出て、草むしりを再開した。午前中と違ったのは犬の様に首輪を着けられ、リードを女子大生に持たれている事と、二十分おきに交代する監視役の彼女達が鞭を手にしてはしゃぎ、
「こっちの草を抜きなさい。」「あっちも伸びてるわよ。」
と、敏雄を打って指図する事だった。
真夏の午後の太陽は容赦無く敏雄の体を焼き、多量の汗を噴き出させ、遠慮無く水分を奪った。彼は鞭が恐ろしくてなかなか言い出せなかったが、草むしりを再開して一時間後、リードを持っている久美子に願い出た。
「久美子様、お願いです。水を恵んで下さい。」
久美子は口元に笑みを浮かべ、敏雄に命令した。
「男奴隷、顔を上に向けて、口をお開け。」
敏雄が言われた通りにすると、久美子は彼の口にかーっ、ぺっと痰を吐いた。とろりとした気持ち悪い感触を口中に感じたが、鞭を恐れた彼は、嘔吐感をこらえて飲み込むしかなかった。
「私も恵んで上げるわ。口を開けて、男奴隷。」
一緒にいた梨恵も同じ様に、敏雄の口に痰を吐いた。喉を通るぬるりとした感触が、敏雄の惨めさを倍増させた。しかし彼女達は、敏雄に水を与えようとしなかった。
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女上司と犬社員
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