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虜 囚

作者 namelessさん

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夏の蒸し暑い夜中に、アパートでぼんやりテレビを見ていた清水直樹は、飲んでいた缶ビールの底をテーブルに叩きつけ、独り言を呟いた。

「クソッ、偽善者の女狐め…絶対に化けの皮を剥いで、正体を世間に晒してやるからな…」

 直樹が立てた物音に驚いた優香が、びっくりした顔で振り向いた。

「直樹さん、一体どうしたの?急に大きな音を立てて…」

 優香の問いに、直樹は無言でテレビの画面を指差した。テレビでは、一般社団法人である女性支援団体REBORN&RESTART(リボーン・アンド・リスタート)代表の仁科雅美がインタビューを受けていた。

「…ですから、我々REBORN&RESTART(再生と再出発)は、夫のDVから逃げ出した困窮女性や、家庭の複雑な事情で家に居場所が無く、家出して繁華街でふらふらしている未成年女子を保護し、支援する活動を行っています。しかし想定していたよりも、保護対象の女性の人数が遥かに多く、東京都からの助成金だけでは、正直賄えない現状があります。それで、この場をお借りして、皆様からREBORN&RESTART(リボーン・アンド・リスタート)、通称“リボン”への支援を是非お願い致したいのです…」

 優香は肩をすくめて、直樹の気を静めるように言った。

「この女の人は、直樹さんが今調べているNPO団体の代表でしょう?裏で色々やっているみたいだけれど、直樹さんがそんなに興奮しなくてもいいんじゃない?」

「まあ、そうなんだけど…つい、気持ちが高ぶってしまってね」

 直樹は頭を掻いて、感情的になってしまった自分を恥じるように、小さな声で優香に返事をした。



 今年36歳になる直樹は、風俗関係のルポライターで、28歳の優香とは取材がきっかけで深い仲になり、半年前から同棲していた。直樹は、本当は社会問題を追求するフリージャーナリストになりたかったのだが、その世界は競争率が厳しくて挫折してしまい、食うために不本意な風俗ルポライターをしていた。

複雑な家庭環境で育った優香は、高校を中退して家出した後は、クリーニング屋・コンビニ店・チェーンの居酒屋・配送関係等々、数え切れない程の色々な非正規の仕事を転々とし、安アパートで何とか一人暮らしをしていた。しかし、二十代後半になると、採用してくれるアルバイト先が極端に減り、条件も悪くなる一方だった。そしてアパートの家賃を半年近くも滞納してしまい、手荷物だけを持って夜逃げし、もう風俗の仕事をするしかないと決心して行ったデリヘルの事務所で、たまたま訪ねていた直樹から取材を受け、優香の困窮した境遇に同情した直樹のアパートに何となく流れで転がり込み、そのまま同棲を始めたのだった。

直樹は優香と気が合って本気で好きになり、ちゃんと結婚して正式に二人で生活したいと思ってはいるのだが、今の不安定で低収入の現状では、結婚はとても無理で、だらだらと中途半端な同棲生活を送っていた。



最近の直樹は、歌舞伎町界隈で立ちんぼうをしている女性達の取材を行っていた。夏休み期間に入った事もあって、近頃では若くまだ未成年の女子が多くなっていたが、その内の一人から妙な話を聞いた。

その少女はヤンキーの不良娘で、親と喧嘩して家出し、歌舞伎町をうろついていたら、リボンの女性スタッフに声を掛けられて、元小学校だったシェルターに連れて行かれ、翌日には生活保護の手続きを受けさせられたと言うのだ。その生活保護費は入居費・食費・その他雑費の名目で全て取り上げられ、本人には二日で1000円、つまり一日に500円の小遣いしか渡されなかった。シェルター内の生活は、何人もの女性スタッフに行動を逐一見張られ、粗末な食事を宛てがわられ、元教室に布団を敷いてザコ寝させられた。シェルターの規則が厳しく、締めつけられるのが嫌になり、四ヶ月で外出許可日に逃げ出した、と話してくれた。

直樹が歌舞伎町界隈で取材を続けていくと、同じ様な話をする少女が何人も現れ、これはヤクザがホームレスを何人も囲って、生活保護を受給させてはピンハネする、貧困ビジネスと同一ではないかと考えられた。直樹は少女達から更に詳しく話を聞き出し、リボン事務所周辺の取材・調査をして、記事に出来るように資料を作成した。そしてリボンの代表である仁科雅美にアポイントを取り、直接取材する事にした。



リボンのシェルターは郊外にあり、統廃合により廃校となった小さな小学校をリノベーションしたもので、外からは中が窺えないように、2.5mの高さのスレート鉄板で囲まれていた。

(まるで自動車解体業者のヤードみたいだな…)

 防犯カメラが設置されている出入口のインターホンで、直樹が用件を告げると、スレート鉄板が横にスライドし、警備員の制服を着用し、目鼻立ちがくっきりとした大柄で屈強そうな女性スタッフが出迎えた。年齢は30歳位で、鍔の付いたダークグレイの制帽を被り、同じくダークグレイの制服に太目の黒色革ベルトを締め、よく磨かれた黒色ブーツを履いた女性警備員の姿は、直樹に一瞬ナチスの親衛隊を連想させた。

「ジャーナリストの清水様ですね。私は警備主任の松村瑞穂と申します。今から代表の所まで御案内致します」

 瑞穂と名乗った警備係の女性スタッフは、直樹を先導して、校舎だった建物に向かって歩き始めた。「あの…随分厳重な警備なんですね」

 直樹がハンカチで汗を拭いながら周囲を見回して、瑞穂に話し掛けると、彼女は口元に笑みを浮かべて答えた。

「私達が保護した女性達を取り戻そうと、DV夫や娘に猥褻行為をした父親等が押し掛けるものですから、どうしても警備が厳重になってしまうんです」

 瑞穂は直樹を元校長室に案内し、リボン代表の仁科雅美が既に座っている、対面の応接ソファに座らせた。30代後半の仁科雅美は結構な美人で、直樹はほんの一瞬、綺麗な顔立ちとグラマーな身体に見惚れてしまった。出されたコーヒーを一口飲んだ直樹は、挨拶もそこそこに、早速取材に取り掛かった。

 最初は当たり障りが無いように、リボンの活動についての話を聞いていたが、頃合いを見て会計予算関係に切り込むと、雅美の顔色が変わった。

「…ですから、リボンのホームページによると、保護女性一人当たりの食費は一日3600円、一食1200円相当になっていますね。しかし、元シェルター入居者のツイッターの写真で見る限り、300円もあればお釣りが来そうなぐらいの貧相な食事ですよね…それと、フードロスを防ぐと言う名目で、都内の何軒ものスーパーや小売店から多量の賞味期限切れの食材を、定期的に寄付してもらっていますから、食費がそんなに掛かるとは思えないのですが…それと、保護した女性達には直ぐに生活保護の受給手続きをさせてますが、元シェルター入居者から話を聞くと、生活保護費は全てリボンの口座に入金され、二日で1000円しか支給されないと言っていました…差額はどこに消えたのですか?他にもあちこちで募金を訴えたり、クラウドファンディング等で相当支援金を集めているようですが、収入と支出の明細を教えて頂けますか?」

 雅美は、顔を些か引きつらせながら答えた。

「食費についてですが、ツイッターのその写真に出ているのは、一回分の食事のごく一部だけを切り取って撮されたもので、実際には栄養バランスの取れた、きちんとした食事を毎回提供しています。食材については、確かに色々なお店に協力して頂いてはいますが、残念ながら供給量が安定していませんので、食材費の大幅な節約にはなっておりません。生活保護費に関しては、食費と電気・ガス・水道代、その他の生活経費として殆ど無くなり、僅かな残りは女性達がこのシェルターから出て、自立するための資金として、私達が一時的に管理しているだけです。募金もクラウドファンディングも、予想していたより支援金が集まらず、予算の当てには出来ない現状です」

 直樹は頭を掻きながら、取材を続けようとした。

「そうですか…それでは、このシェルターの入居者達に直接お話を伺いたいのですが、よろしいですか?」

「駄目です!困窮女性達のプライバシー保護のために、部外者との接触は厳禁になっています…そろそろ私は業務に戻らないといけませんので、お引き取り願います。松村主任、清水様を門までお見送りして」

 警備主任の瑞穂に促された直樹は、止む得ずにリボンのシェルターを後にした。



 翌日直樹は、リボンの会計予算に不審点が無いか確かめるため、都に住民監査請求を行おうとしたが、市民オンブズマンでなければ出来ないと断られた。ならばと、市民オンブズマンへ住民監査請求を申し込んだが、言を左右にして拒否された。仕方が無いので、都に情報公開としてリボンの会計に関する公文書開示を求めたところ、殆ど黒塗りの文書が交付された。会計検査院にも行ってみたが、リボンの名を出しただけで門前払いされた。

 頭に来た直樹は、今までの取材結果を記事にまとめ、自分が出入りしている実話系雑誌の編集長に持って行った。普段なら少々出所が怪しい記事にも飛びつく編集長が、リボンの名を聞くと途端に渋い顔をした。

「…お前さん、風俗ライターだろ?いつから社会派ライターになったんだ?こんなお堅い記事より、もっと読者が喜ぶエロ記事を書いて来いよ」

と言って、直樹の記事をボツにした。

 他の週刊誌に売り込んでも、リボンの名を口にしただけで断られた。新聞やテレビにも売り込んだが、全て無視された。さすがに直樹は、リボンの背後に何か大きな力があるのを、おぼろげながら感じ取った。

 せっかく苦労して取材したのに、全てのマスコミから黙殺された直樹は、金にならないのは分かっていたが、腹立ちまぎれに今までの取材の顛末をツイッターに上げた。すると、ネット上の反応は結構大きく、リボンの色々な悪い評判、それを取り上げようとしないマスコミへの非難、それと直樹への賛同と応援が次々と書き込まれるようになった。パソコンでネット上の反応を見た優香は、

「わあっ、こんなに大勢の人達が直樹さんを応援してくれるなんて、凄いじゃない!この調子なら、世論が盛り上がって、腰の重いお役所も動き出すんじゃないの?それにしても直樹さんって、本当に素晴らしいジャーナリストなのね!」

と直樹をベタ褒めして、抱きついた。28歳と些か年はいっているが、大きな瞳をした童顔の可愛いらしい顔立ちで、結構グラマーな身体をしている優香に賞賛されて抱きつかれた直樹は、鼻の下を伸ばしてニヤニヤした。

 直樹の溜飲はいくらか下がったが、しばらくしてアパートにリボンの顧問弁護士から、直ちにツイッターからリボンに関する誹謗中傷を全て削除して、指定した期限までに謝罪文を載せないと、名誉毀損罪で刑事告訴し、併せて巨額の民事損害賠償請求する旨の内容証明便が届いた。明らかに嫌がらせのスラップ訴訟だが、今までの取材でリボンが会計不正している決定的な証拠を掴めていなかった直樹は、訴えられて裁判になると負ける可能性が高かった。

(そう言えば、取材した元シェルター入居者の少女は、外出許可日は月・水・金曜の午後だと言っていたな…)

 直樹は、現在シェルターに入居している女性に直接取材して、リボンが会計不正している証拠を掴む事にした。



 翌日の金曜日、直樹はリボンのシェルター近くの木陰に身を潜めていた。夏場でやぶ蚊が多くて閉口したが、取材のために我慢だと自分に言い聞かせた。午後2時になり、シェルター出入口のスレート鉄板がスライドして開き、三十数名の女性達がぞろぞろ出て来た。直樹は気づかれないように距離を取り、彼女達の後をついて行った。女性達は街中に入ると、バラバラになって行動し始めた。直樹は、たった一人でウィンドウショッピングしている、ショートカットで若く大人しそうな女性に声を掛けて、名刺を差し出した。

「すみません、私はフリージャーナリストの清水と申します。今、リボンについて取材しているんですが、少しお話しをお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 その若い女性は驚いた顔をしたが、直樹は些か強引に女性を傍のファミレスに連れ込み、女性にはオレンジジュース、自分はコーヒーを注文して、話を聞き出す事に成功した。その女性はまだ17歳で、川嶋安奈と名乗った。

安奈が中学生の時に母親が再婚したのだが、義父になったのがひどい男で、どんな仕事も長続きせずに職を転々として、母親に金をせびり、酒に酔っては母親と安奈に暴力を振るった。家は貧しくて、安奈は高校に進学させてもらえず、中学卒業後はアルバイトをして、家計を助けた。半年前に母親が留守の際、義父にレイプされそうになったので家を飛び出し、繁華街を当ても無くうろついていたら、リボンの女性スタッフに拾われた、と身の上話をした。

 直樹は安奈の身の上に同情しながらも、リボンのシェルター内での生活を訊ねると、今まで取材した少女達と似たり寄ったりの話をした。そこで直樹は、安奈に核心を突く質問をしてみた。

「…そうか、シェルターでの生活も大変なんだね。リボンが君達入居者の生活保護費をピンハネしているのは間違いないと思うんだけど、それを証明出来るような証拠と言うか、書類みたいな物が、シェルターのどこかに無いかな?」

 安奈は少し考えていたが、何か決心したような顔つきで、直樹の目を真っ直ぐに見つめた。

「分かったわ、清水さんはリボンが不正している証拠が欲しいのね…私、不正の証拠書類がどこにあるかは知らないけれど、リボンが表沙汰に出来ない、代表が絶対の秘密にしている事を知っているの。それを見せてあげるから、今日の深夜1時丁度にシェルターの出入口に来て。その時間なら皆寝ているから、私が内側から門を開けるわ」

「ありがとう!君達を助けるためにも、是非協力をお願いするよ」

 思いがけずに事が上手く運び、直樹は内心小躍りした。



 アパートで直樹が取材用の一眼レフのデジタルカメラやICレコーダーを用意しながら、今日の深夜1時にリボンのシェルターに侵入すると優香に告げると、彼女は凄く嫌な顔をして、強く反対した。

「直樹さん、大丈夫なの?いくら調査のためだと言っても、真夜中に女性だけしかいないシェルターに忍び込んで、もし捕まりでもしたら、破廉恥な性的犯罪者呼ばわりされて、何の言い訳も出来ないわよ…止めておいた方がよくない?」

 直樹は優香を安心させようと、懸命に説明した。

「大丈夫だよ。シェルター入居者からの協力も有るし、捕まるようなドジは踏まないよ…それに、リボンが不正をしている決定的な証拠を掴めば、裁判に訴えられても勝てるし、マスコミにも売り込める。そうすれば、食うや食わずのしがない風俗ルポライターから、社会派ジャーナリストに転身出来るかもしれない。そうなれば生活が安定して、優香さんと結婚出来るんだ。だから、心配しないで待っていてくれ」

 直樹が「結婚」と言う単語を口にすると、優香の目が輝き、いきなり彼に抱きついた。

「直樹さん、本当に気をつけてね…私、直樹さんに何かあったら、生きていけないから…」

「大丈夫だって…優香さんはただ、心配しないで待ってくれるだけでいいんだよ」

 直樹は優香を強く抱き締め、彼女の柔らかい唇に自分の唇を重ねた。



 深夜1時前、直樹がリボンのシェルター入口付近の木陰で、ハンカチでやぶ蚊を追い払いながら身を潜めていると、1時きっかりにスレート鉄板がスライドして出入口が開き、安奈が顔を出した。直樹は急いで木陰から出て、出入口に向かった。直樹が出入口からシェルターの敷地内に入ると、安奈はレバーを倒して出入口を閉めた。

「清水さん、こっちよ…物音を立てないでね」

 小声で直樹に注意した安奈は、元小学校の校舎に隣接している小さめの元体育館に向け、先導して歩いて行った。元体育館の窓は深夜にも関わらず、照明で煌々と光っていた。
( この時間なら皆寝ていると、安奈は言った筈だが…なぜ灯りが点いているんだろう?)

 直樹は疑問に思ったが、安奈について行くと、彼女は体育館横側の小さな掃き出し窓を指差した。

「清水さん、ここからリボンの秘密が見られるわよ」

 直樹は身を屈めて、掃き出し窓から体育館の中を覗き、驚愕で目を見開いた。体育館内では、乗馬服やボンデージファッションを身に纏った女性達が、全裸の中年男達数人を鞭で打ったり、人間馬にしたり、三角木馬に乗せて苦しめたり、中世の拷問器具のような物で痛めつけたりしていた。

(な、何だ、これは…?まるで大掛かりなSM乱交パーティじゃないか…)

 直樹は唖然として、しばらく体育館内部の異様な光景に見入っていたが、とりあえずこの光景を撮影しておこうと、デジタルカメラをショルダーバッグから取り出した。その途端、

「これがあなたの知りたがっていた、リボンの秘密よ」

と彼の頭上から、リボン代表である仁科雅美の声が降って来た。直樹がはっとして振り向くと、雅美と安奈、それに警備主任の瑞穂と警備服を着た数名の大柄で屈強そうな女性達数名に囲まれていた。

(しまった、罠だ…安奈に嵌められた)

 直樹が慌てて立ち上がり、走って逃げようとした瞬間、彼の左太腿に瑞穂の速く重いローキックが蹴り込まれた。

「ぐわっ」
 


 骨が折れそうな強烈な痛みに、直樹が呻き声を上げてその場にうずくまると、警備服姿の女性達が一斉に、細長い革袋に砂を詰めたブラックジャックで彼を殴りつけたり、黒革ブーツでドカドカと蹴りつけたりした。

「ヒィッ、ヒィッ、止めてくれ…」

 袋叩きにされ、全身打撲で直樹が動けなくなったのを見計らった雅美が、警備服姿の女性達に指示を出した。

「みんな、この不法侵入者の服を剥ぎ取っておやり!」

 すると、直樹を殴る蹴るしていた女性達は、彼に飛び掛かかって服を全て剥ぎ取り、靴や靴下も脱がせて、真っ裸にした。瑞穂は、打撲傷で体を満足に動かせない直樹に後ろ手錠を掛け、首に大型犬用の首輪を巻いた。それから、

「いつまでも寝転がってないで、さっさとお立ち!」

と直樹に怒鳴り、首輪を掴んで上に引っ張り、まともに動けない彼を無理やり立たせた。

「代表、このまま体育館に連れ込みますか?」

 瑞穂は雅美に訊ねたが、雅美は笑顔で首を横に振った。

「闖入者をいきなり連れ込んだら、今SMプレイを楽しんでいる人達が驚くわ…とりあえず、私の部屋に連れて行きましょう」

 雅美は安奈と連れだって、先に元校長室に向かって歩き始めた。瑞穂は首輪を掴んでいた手を離すと、直樹の下半身に手を伸ばし、彼の股間のものをむんずと掴んだ。

「ぼんやりしてないで、とっととお歩き!」

 瑞穂は直樹に命じて、彼のものを強く引っ張りながら、雅美と安奈の後をついて行った。

「ヒィッ、待って、待ってくれ…」

 股間のものが引きちぎられそうな強い痛みに、直樹は泣き出しそうな声で瑞穂に哀願しながら、腰を突き出した惨めな姿で、全身打撲で軋む体を無理に動かし、よたよたと彼女について行った。直樹の周りを取り囲んでいた女性警備員達は、彼の珍妙な格好を嘲笑いながら、一緒に歩いて行った。女性達の嘲笑が直樹の耳に響き、彼はあまりの口惜しさと恥ずかしさで顔が紅潮して、胸が掻きむしられる思いだった。

 元校長室に向かう途中、雅美は安奈に、

「安奈、今日はよくやってくれたわ、お手柄ね…もう遅いから、ゆっくり休みなさい」

と声を掛け、彼女を他の元教室に行かせた。

 以前直樹が取材に訪れた元校長室に着くと、雅美は応接用ソファに座った。瑞穂は直樹の股間のものを下に強く引っ張り、

「ここに跪くんだよ!」

と命じて、彼を雅美の足元の床に正座させた。雅美は直樹を見下し、嘲笑った。

「お前はリボンを色々と嗅ぎ回って、悪い評判を散々ツイッターに載せてくれたわね…リボンの秘密を直接見られて、満足でしょう?オホホホ」

 正座させられている直樹は、雅美を上目遣いで睨み、大声を出した。

「ふざけるな!人をこんな目に遭わせて、暴行・傷害じゃないか…訴えてやる!」

 その途端、直樹の背後で風を切るような音がして、背中を切り裂かれたような激痛が走った。

「ギャアァーッ」

 背中の激痛に直樹が悲鳴を上げて、床に横倒しになると、いつの間にか乗馬鞭を手にしていた瑞穂が、彼の頭を黒革ブーツでぐりぐりと踏みにじった。

「不法侵入者のくせに、代表に対して失礼な物言いをしたら、この私が許さないわよ!」

「松村主任、少し落ち着いて…話が出来ないから、この男をちゃんと座らせて頂戴」

 雅美は手を伸ばして、乗馬鞭を振り上げた瑞穂を制した。乗馬鞭を渋々下ろした瑞穂は、些か不満そうな顔で、直樹の首輪を掴んで引っ張り上げ、彼を再度床に正座させた。全裸に後ろ手錠で正座させられ、鞭に怯える惨めな姿の直樹に、雅美は自分の生い立ちを語り始めた。

「…私の父は、ろくに働きもしないギャンブル好きでアル中の酒乱でね。母から金をむしり取っては、酔っぱらって母と私に暴力を振るう最低の男だった。私が中学生になって、父が肝硬変で死んだ時は、悲しさよりも安堵の方が遥かに大きかったわ。しかし緊張が解けたせいか、母も直ぐに亡くなってしまい、頼れる親戚がいなかった私は施設に送られ、あらゆる辛酸を舐めて育ったの…私が一般社団法人のリボンを立ち上げたのは、私みたいな不遇な少女や女性を少しでも救いたいと言う、純粋な気持ちからだったわ…」

 ここで雅美は、ため息をついた。

「しかし、実際に活動してみると、確かに気の毒な少女もいたけど、殆どは我が儘なヤンキー娘で、薬物に溺れたり、援助交際してはホストクラブに通い詰めるような、箸にも棒にも掛からない単なる非行少女だった…夫や彼氏のDVから避難して来た女性達にしても、いくら正式に別れるよう勧めても、いつの間にかその夫や彼氏に連絡を取ってよりを戻し、そのくせ痴話喧嘩で暴力を振るわれると、何度も助けを求めて避難して来るのよ。割れ鍋に綴じ蓋で、女に暴力を振るう男はクズだけど、そんな男と一緒になる女も負けず劣らずのクズだったわ…そんな身勝手な人があまりにも多くて、私の理念はどんどん歪んでしまってね…それならいっそ割り切って、その非行少女や避難女性で助成金を獲得して、その分を本当に不遇な少女と女性に回そうと思ったのが、会計不正の始まりだったわ…」

 雅美は自嘲しながら、話を続けた。

「それと、私が一般社団法人を立ち上げる時に、許認可の権限がある役人が変態のマゾ男でね…私がラブホでSMプレイの相手をしてあげて、ようやく許認可が下りたの。その役人から、世の中には地位が上の男ほど、マゾが多いと聞かされてね。私はそれをリボンの活動のために利用しようと、思いついたのよ…お前が嗅ぎ回っていた通り、リボンには確かに会計不正があるわ。スタッフの生活保障もあるし、裏金作りに必要だからね…議員への政治献金や役所のお偉いさんへの付け届けとか、マスコミ関係に対する工作資金とか、色々と物入りなの…それとは別に、議員や役所・マスコミ関係の地位の高い男達の中で、変態のマゾ男には、お前がさっき見た通りに、御接待として元体育館で虐めてあげているのよ。誰だって、あんな恥ずかしい姿を表沙汰にされたくないから、皆さんリボンにはとても協力的だわ」

 それで、リボンに対する監査請求を断られ、公文書開示は殆ど黒塗りで、自分の記事がマスコミに全く取り上げられなかったのか…直樹は下唇を噛んだ。同時に、私腹を肥やすための単なる会計不正かと思っていたが、予想以上のリボンの闇に驚いた。雅美の説明は続いた。

「DV夫から避難した、本当に気の毒な女性達から、素質のある人を選んでリボンのスタッフに採用し、変態マゾ男達を虐めてもらっているの。みんな男には恨みがあるから、容赦無くマゾ男を虐めてくれるわ…保護した非行少女達は、生活保護費を引っ張るためだけに滞在させているけど、中には本当に気の毒な境遇で、尚且つ素質のある少女は、スタッフに採用する事にしているの。安奈もその一人で、彼女に声を掛けたお前は、本当に愚か者だわ」

 直樹は、まんまと罠に嵌った自分の間抜けさを呪い、歯ぎしりした。彼は雅美に向けて、再度大声を出した。

「あんたがどんな考えをして、リボンをどのように運営するかは、あんたの勝手だが、税金である助成金を不正入手する事は許されないだろう!とにかく、早く手錠を外せ!」

 失礼な口を利いた直樹に対し、目を吊り上げて乗馬鞭を振りかぶった瑞穂を、雅美は再度手を伸ばして制止した。

「私の目的は、男から酷い目に遭わされた女性達に、男に復讐する機会を与え、男を徹底的に虐めさせる事よ。それが心に傷を負った女性達にとっては、何よりの精神的なリハビリになるからね。もっとも、変態マゾ男達にはそれが喜びになるのは、何とも皮肉な話だけど…そして、議員や役人やマスコミ関係の上位にいるマゾ男達を操って、世の中を思い通りに動かす事が私の最終目標なのよ…それと、リボンの秘密を知ったお前が、外に出られると思っているの?」

 蒸し暑い夏の夜であったが、直樹の背中にぞくりと悪寒が走り、冷や汗が滲み出た。

「ぼ、僕をどうするつもりだ…口を塞ぐのか?」

 雅美は口元を歪めて、邪悪な笑みを浮かべた。

「口封じはするけど、殺しはしないわ。言っておくけど、お前はこのシェルターから二度と出られないわよ。顧問弁護士が、お前の事を少し調べたの…お前はフリーの風俗ルポライターで、優香という女と同棲しているようだけど、お前が行方不明になっても、誰も捜索願は出しそうもないわね。だから少々日数が掛かっても、自分から“ひと思いに殺して下さい”と懇願するようなありとあらゆる虐待をお前に加え、女性の姿を見ただけで怯えきって平伏すようになるまで調教してやるわ。そうなったら、このシェルターの用務員、つまり雑用係の奴隷として飼ってあげる…まあ、これ以上痛い目に遭いたくなかったら、女性スタッフからの調教を甘んじて受け入れ、早く従順な奴隷になることね。今日はもう遅いから、調教は明日朝から始めるわ…松村主任、こいつを檻に連れて行って」

 雅美に命じられた瑞穂は、正座している直樹の首輪を掴み、

「ぼうっとしてないで、さっさとお立ち!」

と言って引っ張り上げ、彼を立たせた。それから、先程と同じように直樹の下半身に手を伸ばし、股間のものをむんずと掴むと、強く引っ張り歩き始めた。

「とろとろしてないで、こっちに来るんだよ!」

「ヒッ、ヒィッ、待って、待って下さい…」

 直樹は又も腰を突き出した惨めな格好で、よたよたと瑞穂の後をついて行った。他の女性警備員達も、先程と同じように直樹を取り囲んで、嘲笑いながらついて行った。瑞穂は離れた元教室に直樹を連れ込んだ。その元教室の隅には大型犬用のゲージが置いてあり、他に直樹には使い道がよく分からない色々な道具が床に転がっていた。瑞穂はゲージの扉を開き、直樹の股間のものを下に強く引っ張って屈ませると、黒革ブーツで彼をゲージの中に蹴り込んだ。

「グワッ」

 後ろ手錠の不自由な体がゲージ内で転がり、打撲傷を負った体を床に打ちつけられた直樹は、強い痛みでヒキガエルが踏み潰された様な悲鳴を漏らした。他の女性警備員がゲージの中にボロボロの古毛布を投げ入れると、瑞穂は扉を閉めてしっかりと施錠した。

「明日…いや、もう今日になったけど、朝から調教を始めるから、今の内にゆっくり休んでおくんだね」

 瑞穂は直樹にそう言い放つと、黒革ブーツのコツコツという足音を響かせながら、他の女性警備員達と元教室を出て行った。一人残された直樹は、後ろ手錠の不自由な体をよじって、何とか古毛布を体に巻き付けた。夏の夜なので冷えはしなかったが、打撲傷を負った体を堅い床に接触させたくなかった。

(大変な事になった…これじゃまるで、女の虜囚じゃないか…何とかここから脱出する方法を考えなければ…)

 横たわった直樹は色々と考えたが、いい方法が思いつかず、いつの間にか寝入ってしまった。



 突然、ガシャンッと大きな音と震動がして、直樹は目が覚めた。瑞穂が彼の入れられているゲージを、黒革ブーツで思い切り蹴ったのだ。

「いつまでも寝てないで、さっさと起きなさい!」

 瑞穂に怒鳴られて目を開いた直樹が周りを見渡すと、元教室はすっかり明るくなっており、既に日が昇っているのに気がついた。それと同時に、強い尿意を覚えた。

「あ、あの…トイレに行かせて下さい…」

 直樹が瑞穂と他に三人いる女性警備員達に恐る恐る訴えると、瑞穂はゲージの鍵を解き、扉を開いた。

「仕方ないわね…とっとと出て来なさい!」

 全裸で後ろ手錠姿の直樹が、ゲージの開かれた扉からもそもそと這い出ると、瑞穂は彼の首輪を掴んで引っ張り上げて、無理やり立たせた。

「こっちに来なさい!」

 瑞穂は直樹の首輪を掴んだまま引っ張って、彼を近くのトイレに連れて行き、その後ろを他の女性警備員達がついて行った。瑞穂は和式便器が設置された個室トイレのドアを開き、直樹を放り込んだ。

「さっさとおしっこを済ますんだよ!」

 両手が使えない直樹は、尿が脇に飛び散らないように、和式便器に跨ってしゃがんだ。

「あの…ドアを閉めて下さい…」

 直樹は瑞穂に頼んだが、彼女は一笑に付した。

「何を恥ずかしがってるの?私達はお前が変な事をしないか、見張らないといけないんだよ。さっさとおしっこおし!」

 直樹は女性の前で排尿するのは嫌だったが、段々と強くなっていく尿意には勝てなかった。止む得ず彼は、女性の様にしゃがんだままで排尿した。ジョボジョボという尿の音が、やけに耳に響いた。

「ふんっ、よく女の前で堂々とおしっこが出来るわね」

「この男には、恥も外聞も無いんだわ」

「恥知らずって言葉は、この男のためにあるのよ」

 女性警備員達の蔑みが、直樹の胸に深く刺さり、彼は恥ずかしさで顔を真っ赤にした。しかし、これはまだ、今後直樹が酷く辱められる、ほんの序章に過ぎなかった。

 直樹の排尿が済むと、瑞穂は腰のベルトに差していた乗馬鞭を抜き取り、手の平をペシペシ叩きながら彼に酷い命令を下した。

「男はおしっこが済んだら、おちんちんを振って雫を切るんでしょう?お前も腰を揺らし、おちんちんを振って、おしっこの雫を切りなさい!」

 あまりの恥ずかしい命令に、直樹は下唇を噛んで体を震わせたが、瑞穂が手にしている乗馬鞭を目にし、仕方なく腰を振り始めた。

「アハハッ、本当におちんちんをぶらぶら揺らせているわ!おかしいわね」

「ウフフ、よく女の前で、こんな浅ましい姿が見せられるものだわ」

「本当に滑稽な姿よね。スマホを持って来ればよかった。動画撮影して、皆に見せられたのに…」

 女性警備員達に嘲笑された直樹は、羞恥心で身震いし、顔から火が噴き出る思いだった。直樹がいい加減腰を振ったところで、瑞穂が笑いを堪えた声で命じた。

「いつまでも腰を振ってないで、立ちなさい!」

 顔を真っ赤にしている直樹が立ち上がると、瑞穂は彼の股間のものを見つめて訊ねた。

「ちゃんとおしっこの雫は切れているんでしょうね?」

 直樹が恥ずかしさに俯き、黙っていると、瑞穂は乗馬鞭で彼の股間のものを鋭く打ち据えた。

「ギャアァーッ」

 股間のものがちぎり取られたような激痛に、直樹は絶叫して、再びしゃがみ込んだ。その彼の背中に、瑞穂の乗馬鞭が二、三度振り下ろされた。

「ヒイィッ、ヒイイィーッ」

 背中を切り刻まれたような痛みに、直樹は叫び声を上げて身悶えした。

「人が訊ねているのに、無視するんじゃないわよ!」
   
 瑞穂は黒革ブーツでトイレの床をドンッと踏み鳴らし、直樹を怒鳴りつけた。痛みでしゃがんでいる直樹は、鞭の恐怖に震えながら瑞穂に許しを請うた。

「も、申し訳ありません…どうか、許して下さい…」

「ふんっ、口だけの謝罪なんて、意味無いわよ!お前が本当に申し訳ないと反省しているなら、私のブーツを舐めて御覧!」

「は、はい…」

 直樹は瑞穂の足元に這い寄り、彼女の黒革ブーツを舐め始めた。男の自分が女のブーツを舐めるなんて屈辱の極みであったが、これ以上鞭を貰わないためには致し方無かった。ブーツに付着した埃が舌にざらつき、直樹の屈辱感を増幅させた。

 瑞穂は自分のブーツを懸命に舐めている直樹の頭を、不意に靴裏で押し出すように蹴り、

「私のだけじゃなく、自分からお願いして、他の人のブーツも心を込めてお舐め!」

と命じた。直樹は止む得ず他の女性警備員達の足元に這い寄り、

「どうか私にブーツを舐めさせて下さいませ…」


と屈辱感を押し殺して、懇願した。

「アハハッ、男のくせに女の靴を舐めたがるなんて、本当に恥知らずだわ!」

「お前、ひょっとして、女の靴の臭いを嗅ぐのが好きな変態じゃないの?学校でこっそり、女子の上履きを嗅いでいたんでしょう?」

「まあ、そんなに舐めたいって言うのなら、舐めさせてあげるわよ…ほら、お舐め!」



と屈辱感を押し殺して、懇願した。

「アハハッ、男のくせに女の靴を舐めたがるなんて、本当に恥知らずだわ!」

「お前、ひょっとして、女の靴の臭いを嗅ぐのが好きな変態じゃないの?学校でこっそり、女子の上履きを嗅いでいたんでしょう?」

「まあ、そんなに舐めたいって言うのなら、舐めさせてあげるわよ…ほら、お舐め!」

 女性警備員達の侮蔑で直樹の胸は深く傷つき、顔が紅潮したが、それでも彼女達が突き出したブーツに舌を這わせ始めた。全員のブーツを舐め終わった時、直樹の舌は靴墨ですっかり黒くなってしまった。

「そろそろ、部屋に戻るわよ…とっととお立ち!」

 瑞穂に命じられた直樹は、よろよろと立ち上がり、女性警備員達に囲まれるようにして、元教室に戻った。元教室に戻ると、直樹は床に正座させられた。

「もう、全員の朝食は済んでいる頃ね…残飯を取って来て頂戴」

 瑞穂に指示された女性警備員は、急いで元教室を出て行った。瑞穂は正座している直樹に、嘲るような口調で話し掛けた。

「午前中、私達のトレーニングに付き合ってもらうから、今の内に腹ごしらえさせてあげるわ…お前もお腹が空いているでしょう?」

 確かに直樹は、昨日夕食を摂っておらず、空腹だった。しかし、深夜に女性警備員達から袋叩きにされて口の中が切れており、顎が痛くて、まともに食事が出来るかどうか疑問だった。

 三分も経たない内に、さっき出ていった女性警備員が、バケツを片手に戻って来た。彼女は床に正座している直樹の前に、バケツをドスンと置いた。

「お前の朝食よ。遠慮せずにおあがり!」

 瑞穂に促された直樹が、バケツの中を覗いてみると、飲み残しの味噌汁やコーンスープ、米飯やかじりかけのトーストの端切れ、歯形の付いた卵焼きやハムや干物、ポテトサラダの残り等がぐちゃぐちゃに掻き混ぜられた汚らしい残飯があった。空腹の直樹も、さすがに顔をしかめてバケツから離れようとすると、瑞穂は乗馬鞭を空中で一振りして、空気を切り裂く音を彼に聞かせた。

「お前、私達がわざわざ用意した朝食を食べないのかい!私達の厚意を足蹴にするつもりなんだね!」

「ひいぃっ、そ、そんな事ありません…ありがたく頂きます」

 乗馬鞭に怯えた直樹が、慌てて瑞穂に言うと、彼女は口元を歪めて邪悪な笑みを浮かべた。

「おや、そうなの…だったら特別サービスに、少し味付けしてあげるわ」

 瑞穂はバケツに顔を近づけると、カーッ、ペッと派手な音を立てて、残飯に痰を吐き掛けた。

「みんなもこいつの朝食に、味付けしてあげて」

 瑞穂に言われた女性警備員達は面白がって、それぞれ残飯に唾や痰を吐き掛けた。

「さあ、みんなが味付けしてくれたわよ。遠慮しないで、早くおあがり」

 瑞穂に促された直樹が、恐る恐るバケツを覗き込むと、ただでさえ汚らしい残飯の上に、女性警備員達の唾や痰がぬめって光り、見るだけで吐き気を催して、鳥肌が立った。直樹がバケツから顔を背けると、瑞穂の乗馬鞭が彼の背中に炸裂した。

「ウギャアァーッ」

 真っ赤に焼けた火箸を背中に強く押し付けられた様な激痛に、直樹は背を仰け反らせて絶叫した。

「いつまでもグズグズしてないで、さっさとお食べ!本当に人をイライラさせるわね!」

 瑞穂に叱責された直樹は、仕方なくバケツに頭を突っ込み、唾や痰が吐き掛けられた残飯に顔を近づけた。しかし生理的嫌悪感で、なかなか口にする踏ん切りが付かなかった。そんな直樹の後頭部に、瑞穂の黒革ブーツの底が載せられた。

「男のくせにグズグズ躊躇ってないで、さっさとお食べ!」

 直樹の頭は瑞穂に踏み付けられ、彼の顔は汚らしい残飯に埋められた。直樹は全てを諦め、残飯を口にして、吐き気を堪えながら咀嚼して飲み込んだ。色々な食べ物が掻き混ぜられた残飯は、筆舌に尽くしがたい酷い味で、いくら空腹であっても、吐き気を抑えるのには凄まじい忍耐力が必要だった。おまけに深夜、女性警備員達から受けた暴行で口中の傷と顎が痛み、正に拷問であった。それでも瑞穂の鞭を恐れた直樹は、精神を麻痺させて機械的に咀嚼し、無理して飲み込んでいった。

 バケツの残飯を全て食べる事は量的に無理だったが、食べられるだけ食べた直樹は顔を上げ、

「もう、お腹が一杯で食べられません…」

と瑞穂に訴えた。直樹の顔を見た女性警備員達は、一斉に噴き出した。

「何、その汚い顔は!?」

「本当にみっともないわねぇ」

「犬でも、もっとお上品に食べるわよ」

 後ろ手錠で拘束され、手が使えない直樹は、残飯に顔を着けて食べるしかなく、顔中に残飯が付着して汚れていた。もっとも、食べる前に瑞穂から頭を踏み付けられて、顔を残飯に押し付けられたせいもあった。それでも女性達から嘲笑われた直樹は、屈辱で身震いした。

瑞穂は肩をすくめて、直樹に命じた。

「仕方ないわね…顔を洗ってあげるから、立ってトイレにお行き!」

 直樹はよろよろと立ち上がり、先程のトイレに向かった。彼の周りを囲むように、女性警備員達がついて行った。トイレに着き、直樹は洗面台で顔が洗えると思っていたが、それは甘過ぎた。瑞穂は先程と同じく、和式便器の個室に直樹を押し込み、跪かせた。それから直樹の髪を掴み、彼の顔を和式便器の底に押し付けた。

「さあ、顔をきれいに洗ってあげるわよ!」

 瑞穂は水洗レバーを下げて、和式便器に水を一気に流した。激しい水流が直樹の鼻孔と口に入り、彼を酷く苦しめた。瑞穂は2回水を流してから、直樹を解放した。顔を上げた直樹は、激しく咽せ込んだ。直樹は便器の水で顔を洗われる屈辱に身震いし、涙がこみ上げてきた。

「さあ、部屋に戻るわよ!」

 瑞穂に言われて、顔面から水を垂らしながらよろよろと立ち上がった直樹は、女性警備員達と元教室に向かってふらつく足取りで歩いて行った。その途中、急に下腹が痛み出して強烈な便意を感じ、直樹は顔を歪めた。空腹にいきなり多量の残飯を詰め込んだので、胃腸が過度に刺激されたのかもしれなかった。直樹は堪らず、瑞穂に訴えた。

「あ、あの、もう一度トイレに行かせて下さい…漏れそうで…」

 瑞穂は怪訝な顔をして、直樹に尋ねた。

「どう言う事?さっき、おしっこを済ませたばかりでしょう?」

「いえ、今度は大の方なんです…急に腹が痛くなって…」

 瑞穂は、大げさなため息をついた。

「本当に手間が掛かるわね…仕方ないから、トイレに戻るわよ」

 直樹と女性警備員達はUターンして、トイレに向かった。直樹は同じ様に、和式便器の個室に入れられ、ドアは開けられたままにされた。和式便器に跨ってしゃがみ込んだ直樹は、瑞穂へ恥ずかしそうに懇願した。

「あの、お願いです…今度はドアを閉めて下さい」

 瑞穂は冷笑して、首を横に振った。

「駄目よ。私達には、お前を見張る義務があるからね」

「いくら何でも、恥ずかし過ぎます…」

 直樹の懇願は、瑞穂から一笑に付された。

「ふんっ、嫌なら大便をしなければいいじゃないの…まあ、普通の男なら恥ずかしくて、とても女性の前で大便なんか出来る筈も無いけどね」

「そ、そんな…」

 直樹とて女性の前で排泄行為はしたくなかった。しかし、下腹の痛みと便意は限界を超えていた。直樹は脂汗を流し、身震いしながら、大きな音を立てて多量の軟便を排泄した。

「ああ、臭い臭い!よく女性の前で大便が出来るわね、この恥知らず!」

 瑞穂は直樹を罵りながら、黒革ブーツで水洗レバーを踏み、水を流した。他の女性警備員達も口々に直樹を罵った。

「男のくせに、よく女性の前で大便が出来るものね!本当に恥も外聞も無いんだわ!」

「むしろ、女性の前で裸を見せたり、恥ずかしい真似をするのが大好きな、露出狂の変態じゃないの?」

「女性に排泄行為を見せつけるなんて、最低の変態男よね!」

 女性警備員達の侮蔑が直樹の胸を深く抉り、彼はあまりの恥辱に耐えきれず、肩を振るわせてすすり泣き始めた。それでもまだ、軟便の排泄は止まらなかった。瑞穂はうんざりした顔で、水洗レバーを二、三度踏んで水を流した。

 直樹の排便が終わると、瑞穂は彼を個室から出してから、洗面台の蛇口にホースを繋ぎ、彼に命じた。

「大便が済んだら、脚を拡げ額を床に着けて、膝立ちしてお尻を上に突き出すんだよ!」

 後ろ手錠をされている直樹が、口惜しさを押し殺して命令通りに屈辱的な姿勢を取ると、瑞穂はホースの先を直樹の肛門に向け、かなり強い水圧で放水した。

「ヒイィィッ」

 神経が集中している肛門に強烈な放水を浴びせられた直樹は、思わず悲鳴を漏らした。

「動くんじゃないよ!この私がわざわざ、お前の汚らわしい尻の穴を洗ってあげてるんだからね。少しでも動いたら、全身の皮膚が裂けるまで鞭打ってやるわよ!」

 瑞穂に怒鳴られた直樹は、肛門から直腸に水が入りそうな不快な刺激に耐えて、震えながら屈辱的な姿勢を保った。

しばらく放水して、直樹の肛門の汚れを洗い流した瑞穂は水道を止め、彼に立ち上がるよう命じた。直樹がよろめきながら何とか立ち上がると、他の女性警備員が掃除道具入れから雑巾を取り出し、彼の体をざっと拭いた。瑞穂はホースを丸めて掃除道具入れに入れると、直樹に命令した。

「ぼうっとしてないで、さっさと部屋へお戻り!」

女性達の前で惨めな姿を晒した直樹は、恥辱ですすり泣きながら、ふらつく足取りで檻のある元教室に向かった。元教室に入ると、他の女性警備員が檻の扉を開けた。

「早く檻に入るんだよ!」

 瑞穂に促された直樹は、後ろ手錠を掛けられた不自由な体で、檻の出入口前に膝を着いて上半身を入れた。その時、瑞穂から黒革ブーツで尻を強かに蹴られ、檻の中に頭からつんのめった。

「うぐうぅっ」

 瑞穂は直樹の呻き声に一切構わず、檻の扉を閉めて施錠した。

「一時間後にトレーニングを始めるから、それまでゆっくり休んでおくんだね」

 瑞穂はそう言い残すと、他の女性警備員達と元教室を出て行った。一人檻の中に取り残された直樹は、古毛布の上で痛む体を丸め、色々と考え事をした。

(畜生、焦り過ぎた…優香の忠告を聞いて、もう少し慎重に動くべきだった…とにかく、ここから脱出する方法を考えなければ…この手錠さえ外されれば、女達を振り切って、何とか逃げられるだろう…一時間後にトレーニングとか言っていたから、その時がチャンスかもしれない…)

 直樹が殆ど堂々巡りの考えに耽っていると、あっと言う間に一時間が経過し、瑞穂と女性警備員達が彼を迎えに来た。直樹は彼女達の服装を見て、目を剥いた。瑞穂と女性警備員達は全員、ダークグレーの警備服ではなく、黒色スポーツブラを胸に着け、黒色ボクサーパンツを穿き、手には指が出るタイプの総合格闘技用グローブ、足にはキックボクシング用のサポーターを着けて、スニーカーを履いていた。瑞穂と女性警備員達は、二の腕が太く、腹筋が浮き出た屈強な体つきをしており、激しい動きの邪魔にならないように、髪は後ろで束ねていた。

 瑞穂は檻の鍵を外して扉を開け、直樹に命じた。

「さあ、トレーニングの時間だよ。さっさと出ておいで!」

 直樹が檻から這い出て立ち上がると、瑞穂は又も彼の股間に手を伸ばし、彼のものを掴むと、強く引っ張って歩き始めた。

「ひぃっ、待って、待って下さい…」

 股間のものが引きちぎられそうな痛みに、直樹は情けない声を出し、腰を突き出してよたよたと瑞穂の後を懸命について行った。他の女性警備員達は直樹を嘲笑いながら、彼を取り囲むように歩いて行った。こんな辱めを受けるのなら、まだ首輪にリードを付けられて、犬のように引っ張られる方が遥かにマシだった。

 直樹と瑞穂達が元体育館に着くと、瑞穂達はスニーカーを脱いで上がり、直樹は元体育館床の中央に立たされた。瑞穂は直樹の後ろ手錠を外してやり、彼から約2メートルの間合いを取った。他の女性警備員達は大きな輪になって、二人を取り囲んだ。

「さてと…今から格闘技のトレーニングをするわ。好きなように掛かってらっしゃい」

 瑞穂は直樹をからかうような口調で言い、おいでおいでするかように左手の指をクイックイッと曲げた。昨日袋叩きにされた打撲傷で体が思うように動かない直樹であったが、瑞穂の馬鹿にして挑発するような態度と、彼女達から受けた今までの酷い仕打ちに怒りが爆発し、ようやく両腕が自由になった事もあって、

「うおぉーっ」

と野獣じみた大声を上げ、右手を大きく振り回して彼女に殴り掛かった。しかし瑞穂は、直樹の大振りの右パンチをひょいと難無く避け、カウンター気味の鋭い左ジャブを彼の顎に決めた。顎を殴られた直樹は、震動が脳を直撃して脳震盪を起こし、声も出せずにその場に膝から崩れ落ちて、床に突っ伏した。

「あら、もう終わり?男のくせに、女のパンチ一発でダウンしちゃって、情けなくないの?」

 瑞穂はからかうような口調で直樹を嘲り、彼の頭を軽く蹴って挑発した。直樹は脳震盪でガンガン痛む頭に手を当て、気力で何とか立ち上がった。

「くそぉーっ」

 怒り狂った直樹は絶叫するような大声を上げ、瑞穂に掴み掛かった。しかし、瑞穂の鋭い右の前蹴りをみぞおちに喰らい、苦悶して体をくの字に曲げたところで、威力のある左回し蹴りを右顔面に受け、声も出せず再び床に崩れ落ちた。

「ほらほら、男のくせに女に負けて、口惜しくないの?失神しないように手加減してあげているんだから、早く起きなさいよ!」

 瑞穂は床にうつ伏した裕之の脇腹を何度も軽く蹴りながら、嘲るような口調で挑発した。男の自分が女に叩きのめされる屈辱に、直樹は顔を真っ赤にさせて体を震わせながら、決死の形相でよろよろと立ち上がった。

「主任だけ楽しむのは、ずるいですよ。私達にも遊ばせて下さい」

「…それもそうね。交代するわ」

 二人を取り囲んでいた女性警備員の一人から声を掛けられた瑞穂は、あっさり彼女と交代した。瑞穂の代わりに直樹の前に立った女性は、瑞穂より幾分か細身で小柄だった。何とか勝てそうだと思った直樹は、

「男をなめるなぁーっ」

と喚き、右腕を大振りして女性に殴り掛かった。しかし、直樹のパンチは女性にあっさりブロックされて、右脚を蹴られバランスを崩して倒れたところで、右腕を絡め取られて腕ひしぎ脇固めを決められてしまった。

「ぎゃあぁーっ」

 関節技をきれいに決められ、肩から腕がちぎり取られそうな激痛を受けた直樹は、喉が張り裂けんばかりに絶叫を上げた。

「ちょっと、直ぐ放してやって…この男を壊したら、他の人が楽しめなくなるわ」

 瑞穂に注意された女性は、些か不服そうに直樹を解放した。交代した別の女性が床にうずくまっている直樹の前に立ち、

「休んでないで、さっさと立ちなさいよ!」

と言って、彼の頭を蹴った。女に負けた屈辱と痛みで涙をこぼしながらも、ふらつきながらも何とか立ち上がった直樹に、女性は摺り足で素早く接近し、右手で強烈なボディブローを叩き込んだ。

「ぐぼぉっ」

 胃の内容物が出そうな強力なパンチに、直樹が呻き声を漏らして前屈みになると、女性は素早い左右のフックを両頬に浴びせ、止めにアッパーカットを彼の顎に決めた。直樹はまたも脳震盪を起こし、その場に崩れ落ちた。

 また別に交代した別の女性が、床に横倒しになっている直樹の顔を踏みにじり、

「ちょっと、寝てないで、早く起きなさい!やっと私の順番になったんだからね」

と立ち上がるように命じた。女性が顔から足を外すと、頭がガンガン痛む直樹は、ふらふらと虚ろな目で立ち上がった。自分では、どうあがいてもこの女性達には勝てないと、徹底して体に教え込まれた直樹は、恥も外聞も捨てて対峙した女性に背を向け、走って逃げようとした。しかし、取り囲まれている女性達から、

「どこに行くんだい!」

「男のくせに、女から逃げるつもり?」

「卑怯者め、さっさと戻るんだよ!」

と罵られ、殴る蹴るされて、強引に中央へ戻された。これは二人が勝負する時に、他の者が周りを取り囲んで逃げられないようにするランバージャック方式だと、直樹はようやく気がついた。

 戻された直樹と対峙した女性は、

「男のくせして、女が怖くて逃げ出したの?本当に情けないクズだね」

と嘲り、不意に素早い中段回し蹴りを彼の脇腹に決めた。直樹が呻き声を漏らして前屈みになると、女性は体を回転させて後ろ回し蹴りを頬に叩き込み、彼を床へ仰向けに倒した。そして直樹の胴体に跨ってマウントを取ると、両手で彼の顔を殴り始めた。

「ヒイッ、ヒイィッ」

 直樹は何とか両腕で顔面をガードしようとしたが、女性のパンチは何発も彼の顔面に叩き込まれた。

「ちょっと、それくらいにして!まだ順番が来て無い人がいるのよ」

 瑞穂は慌てて女性を止め、女性は物足りそうな顔をしながらも、跨っていた直樹の胴体から立ち上がり、他の女性と交代した。



 こんな調子で、全ての女性警備員達と相手をさせられた直樹は、ありとあらゆる種類のパンチ・キック・投げ技・関節技を受け、体がボロボロになり虫の息で元体育館の床にのびていた。瑞穂は直樹の頭を蹴り、

「午前中のトレーニングはこれで終わりだよ…いつまでも寝転がっていないで、とっととお立ち!」

と怒鳴りつけた。しかし、直樹は昨日袋叩きにされた打撲傷に本日の格闘による負傷が加わり、とても立ち上がれなかった。しかし、瑞穂からこれ以上痛い目に遭わないためにも、何とか立とうと体を動かした。それでも、四つん這いになるのが精一杯だった。

「何だい、立てないのかい?女に負けた上に立てなくなるなんて、本当に情けない男だね」

 瑞穂の嘲りが直樹の胸を深く抉ったが、彼は屈辱に身震いするばかりで、何も言い返せずに下唇を噛んだ。瑞穂は元体育館の床に転がっていた、SMプレイ用の犬のリードを拾うと、直樹の首輪に取り付けた。そして、リードは他の女性警備員に手渡し、壁に掛けてあった乗馬鞭を手にした。

「さあ、一旦檻に戻るわよ。さっさとお進み!」

 瑞穂は乗馬鞭を振って、四つん這いになった直樹の尻に一鞭くれ、彼の前に立った女性警備員はリードを強く引っ張り、首輪で彼の喉を圧迫した。

「ヒイィッ…ゲホッ、ゲホッ」

 尻に焼け火箸を当てられたような強い痛みに、短い悲鳴を漏らした直樹は、喉を圧迫されて咽せながら這い進み始めた。しかし、全身打撲で体がひどく痛んで軋み、手足がよたよたして思い通りに動かず、ゆっくりとしか這い進めなかった。瑞穂は直樹の後ろから、彼の股間のものを乗馬鞭の先でつつきながら、嘲笑った。

「もっと速く進めないのかい?それでも男なの?ここにぶら下げている醜いものは、ただのお飾りかしら?」

 周りを取り囲んでいる女性警備員達も、直樹を嘲笑い、酷く侮蔑した。

「男の四つん這いって、本当に見苦しいわね。あんなものをぶらぶらさせて」

「私、女に生まれて、本当によかったわ。こんな醜悪な姿を晒すのなら、死んだ方がマシよ」

「それにしても、男のくせに立って歩けなくて、亀みたいにのろのろ這うなんて、恥ずかしくないのかしら?もう男どころか、人間ですらないわね」

 瑞穂と女性警備員達の嘲りは、直樹を酷く傷つけ、彼の胸をズタズタに引き裂いた。直樹は屈辱で顔を紅潮させて体を震わせ、鼻の奥がつんとして、目に涙がこみ上げてきた。しかし、彼女達に叩きのめされ、とても敵わない事を体に教えられた直樹は、一言も言い返せずに、ただ下唇を噛んで屈辱に耐え、よたよたと這い進む事しか出来なかった。

 元々小さな小学校だったので、元体育館から檻が置いてある元教室までの距離はごく短いのだが、満身創痍の直樹にとっては、1メートル這い進むのにも時間が掛かり、正に難行苦行の行軍であった。よたよたとゆっくり這い進む直樹を、瑞穂は後ろから乗馬鞭でつつきながら、自分の身の上話をし始めた。

「…私はかつて、総合格闘技リーグの女子チャンピオンだったわ。でも、リーグの上層部と意見が合わずに対立し、私に賛同してくれた練習生達と一緒にリーグを辞めて、格闘技のジムを開設したの。でもリーグからの陰湿な妨害にあって、ジムの経営は破綻し、多額の借金を抱えて途方に暮れたわ…そこにリボンの仁科代表が現れて、借金を全額肩代わりしてくれただけじゃなく、私と練習生達をリボンの警備員スタッフとして高給で雇ってくれたのよ。私だけじゃなく、私について来てくれた練習生達の生活も保証してもらった仁科代表には、感謝してもしきれないわ…お前は、私達にとって大恩ある仁科代表の周りをいやらしく嗅ぎ回り、ツイッターで散々悪口を書き散らして、リボンと仁科代表の評判を落としてくれたんだからね…これから、たっぷりとヤキを入れてやるから、覚悟してなさい!」

 直樹は瑞穂から酷い宣告をされ、恐怖で鳥肌が立ったが、彼女の話を聞き、女性警備員達の腕っ節が物凄く強い理由がやっと理解出来た。男とは言え、武道や格闘技の心得が全く無い自分が叩きのめされたのも、無理のない話だった。

 ようやく元教室に辿り着き、檻の前に着くと、リードを引っ張っていた女性警備員が檻の扉を開け、直樹の首輪からリードを外した。しかし、直樹はさすがに自ら檻の中に入る気にはなれず、檻の扉の前で四つん這いのまま、しばらく動かなかった。すると瑞穂が乗馬鞭を掬い上げるように振って、直樹の股間を強かに打った。

「ギエェーッ」

 陰嚢と陰茎を強打された直樹は、獣じみた悲鳴を上げ、両手で股間を押さえて床に突っ伏した。瑞穂は直樹の尻を蹴り、

「ぼやぼやしてないで、自分から檻に入るんだよ!」

と怒鳴りつけた。満身創痍の上に、股間の激痛でまともに動けない直樹であったが、これ以上痛めつけられないためには、何とか檻に入る必要があった。直樹は気力を振り絞って、檻の中に這いずって行った。直樹が何とか檻に入ると、リードを持った女性警備員が檻の扉を閉めて施錠した。

 瑞穂と女性警備員達が立ち去って、直樹は檻の中でぐったりと横たわり、色々と考え事をした。そして、相手が元プロ格闘技の選手であっても、男の自分が女に負けて叩きのめされた屈辱が改めて胸に湧き上がり、鼻の奥が熱くなって目から涙がこぼれ落ちた。そして、女性達から受けた辱めを思い、心が掻き乱された。

(クソッ、何とかしてここを脱出し、シェルター内部の真実を世間に公表しなければ…)

 直樹は脱出方法をあれこれ考えたが、満足に歩く事すら出来ない今の体調では、どうしようも無かった。何しろ、寝返り一つ打つのさえ体がひどく痛み、一苦労する始末だった。

 檻の中で直樹があれこれ考えていると、ダークグレーの警備服に着替えた瑞穂と女性警備員二人が、黒革ブーツの靴音をコツコツと鳴らしながらやって来た。瑞穂は檻の扉を開け、他の女性警備員が水の入った紙コップと数錠の錠剤を檻の中に入れた。

「本当は午後からお前を本格的に調教しようと思ってたんだけど、その体じゃ無理だね…とりあえず、鎮痛剤と消炎剤、それと睡眠導入剤を飲んで一眠りして、ゆっくり休んでおきなさい。言っておくけど、飲まなかったら打撲傷が腫れて発熱し、自分が苦しむわよ」

瑞穂はそう言い残すと、再び女性警備員達と去って行った。さすがにプロ格闘技の元チャンピオンだけあって、直樹の体調を的確に把握していたようだった。直樹は口惜しさで身震いしたが、瑞穂のもっともな忠告を聞き、体を何とか起こして錠剤を口に含み、紙コップの水で流し込んだ。

 横たわった直樹は脱出方法を色々考えている内に、睡眠導入剤が効いてきたのか、いつの間にかぐっすりと寝入ってしまった。



 突然、ガシャンッと大きな音と震動が響き、直樹は目を覚ました。瑞穂が黒革ブーツで檻を強く蹴ったのだ。

「いつまでも寝ていないで、さっさと起きなさい!もう、日が暮れて夜になったわよ」

 瑞穂に言われて、直樹は寝惚けまなこで元教室の窓ガラスを見ると、既に暗くなっていた。どうやら睡眠導入剤のおかげで、昼から夜までぐっすり寝込んだらしい。瑞穂について来た女性警備員の一人が、檻の鍵を外して扉を開けた。

「とっとと檻から出るんだよ…ゆっくり休めたようだから、遠慮無く調教が出来そうだね」

 瑞穂に促された直樹は、檻から這って出て、よろめきながらも立ち上がった。体に痛みは残るものの、消炎剤のおかげか、何とか立てるようになったようだった。その時、空気を切り裂く音がして、直樹の背中に焼け火箸を押し付けられたような、強い痛みが走った。

「ギャアァーッ」

 直樹は悲鳴を上げて、その場にうずくまった。瑞穂が乗馬鞭で直樹の背中を打ったのだった。

「誰も立っていいと言って無いのに、二本足で偉そうに立つんじゃないわよ!さっさと犬みたいに四つん這いにおなり!それがお前にはお似合いだよ」

 直樹は背中の痛みと屈辱に下唇を噛み、体を震わせながらも、四つん這いの格好になった。傍にいた女性警備員が、直樹の首輪にリードを取り付けた。

「さあ、体育館に行くわよ…ついておいで!」

 瑞穂は先導して歩き出し、他の女性警備員にリードを引っ張られた直樹が、よたよたと這って行った。昼程ではないが、まだ強い痛みが残って軋む体では、無理して這い進むだけで、拷問を受けているような気分だった。元教室から元体育館までの距離は短かったが、全身打撲の傷がまだ癒えてない直樹には、正に苦行だった。

 煌々と灯りが点いている元体育館に入ると、安奈とリボン代表の雅美と、もう一人の女性が直樹を待ち構えていた。安奈はまだ17歳だが、もう一人の女性は雅美と同年代の30代後半に見えた。

安奈は赤色のブラジャーとパンティを身に着け、足の付け根まで届きそうな黒革のニーハイブーツを履いていた。髪をアップでまとめた30代後半の女性は、些か豊満な身体に黒色シースルーのブラジャーとパンティを着け、黒色網タイツをガーターベルトで吊るし、膝まである黒革ハイヒールブーツを履いていた。雅美は白色ブラウスを着て、薄いグレーの乗馬用ズボンに、拍車付きの黒色乗馬用ブーツを履いていた。

安奈と女性は黒光りする一本鞭を、雅美は乗馬鞭を手にして、四つん這いでやって来た直樹を見つめていた。雅美と女性は楽しそうに微笑んでいたが、安奈はかなり緊張した面持ちだった。

「さあ、仁科代表の前で平伏しなさい!」

 四つん這いの背中に瑞穂の鋭い一鞭を浴びて命令された直樹は、短い悲鳴を上げて、雅美の足元に平伏した。雅美は薄笑いを浮かべ、乗馬用ブーツの爪先で平伏した直樹の頭を小突いた。

「うふふ、少しは行儀を覚えたみたいね…顔をお上げ!」

 雅美に命じられた直樹は、恐る恐る上体を起こし、不安を浮かべた表情で彼女の顔を見上げた。雅美は隣に立っている30代後半の女性を、直樹に紹介した。

「お前、こちらの女性は初対面よね…彼女は浅海玲子と言って、私とは小学校からの親友よ。彼女は、都内でトップクラスのSMクラブを経営しているの。このシェルターには度々来てくれて、女性達に女王様のテクニックと心構えを指導してもらっているわ。今日は安奈が初めて受ける女王様研修の指導をお願いしているから、お前には研修の相手になってもらうわよ」

 雅美にとんでもない事を言われた直樹は、忌々しげに顔を歪めた。その途端、玲子から一本鞭の洗礼を受けた。黒革の一本鞭が唸りを上げて直樹の体に絡み付き、真っ赤に焼けたワイヤーロープを叩きつけられた様な激痛と衝撃に、彼は喉が張り裂けそうな絶叫を上げた。

「ウギャアァーッ」

 乗馬鞭を遥かに超える激痛で体を硬直させた直樹の顔を、玲子の黒革ハイヒールブーツが蹴り飛ばした。直樹は短い呻き声を漏らし、元体育館の床に倒れた。玲子は、床に横倒しになった直樹の頭をハイヒールブーツで踏みにじり、怒鳴りつけた。

「お前、雅美がわざわざ説明しているのに、返事もせずに嫌そうな顔をするとは、何事よ!まだ、自分の立場と身分が分かってないんだね…安奈、男を調教して服従させるのには、最初が肝心だから、あなたが思い知らせてやって。間違えて打ち殺しても構わないから、思いっきり鞭で打つのよ!」

 玲子のハイヒールブーツが直樹の頭から外れると、些か顔を引きつらせた安奈が一本鞭を振り上げた。

「ヒィッ」

たった今、一本鞭の威力を体に教え込まれた直樹は短い悲鳴を上げ、慌てて立ち上がり、走って逃げようとした。しかし、瑞穂が直樹の首輪に繋がれているリードをぐいっと強く引っ張り、彼は仰向けに倒れてしまった。そこに、安奈の一本鞭が風を切って、直樹の体に襲い掛かった。

「ギャアァーッ」

 胸から腹に掛けて鞭打たれた直樹は、真っ赤に焼けた刃物で体を切り裂かれた様な激痛で、獣じみた絶叫を上げ、芋虫みたいに体を丸めて苦しんだ。

「安奈、一回で済まさないで、何回も鞭打っておやり!」

 玲子に指示された安奈は、

「男なんて、みんな死ねばいいのよ!あんたなんか、くたばってしまえ!」

と喚きながら、引きつった顔で直樹の体に何度も一本鞭を振り下ろした。男に対する憎しみを込めた鞭で、全身を切り刻まれるような激痛を受けた直樹は、床を転がって逃げようとしたが、瑞穂にリードを強く引っ張られ、強引に元の場所へ戻された。一本鞭の激しい嵐の中で、直樹の視界が赤く染まった。

安奈が10回程直樹を鞭打ったところで、ようやく玲子からストップが掛かった。

「安奈、もう止めて!これ以上鞭打ったら、こいつが壊れてしまって、楽しめなくなるわ」

 顔を引きつらせて一本鞭を振りかぶっていた安奈は、はっと気がついたように力無く腕を下ろした。彼女はハァハァと荒い息をして、呼吸を乱していた。床にぐったりと虫の息で横たわっている直樹の体中に、赤い条痕が縦横無尽に刻み込まれていた。

「安奈、こいつの傍の床を、鞭で叩いておやり」

 玲子に促された安奈は、横たわっている直樹の傍の床を一本鞭で叩いて、大きな鞭音を響かせた。

「ヒイィッ」

 鞭音に怯えた直樹が本能的に逃げようと、鞭痕で引きつる体を何とか動かし、よろよろと四つん這いの姿勢になると、玲子が叱りつけた。

「お前、せっかく安奈が鞭で可愛がってくれたのに、何を横着に寝ているんだい!鞭打ってくれた安奈に、這いつくばってお礼をお言い!」

 直樹はよろよろと安奈の足元に這い寄り、平伏して礼を述べた。

「安奈…様、私を鞭で打って下さって、真にありがとうございます…」

 自分を鞭打って痛い目に遭わせた安奈に、命令されたとは言え、お礼を言うのは胸が張り裂ける程の屈辱だった。しかし、これ以上痛い目に遭わないためには、玲子に逆らう訳にいかなかった。しかし玲子は、直樹の傍の床を鞭打ち、派手な鞭音を響かせて、更に酷い命令を下した。

「お礼は、女性の靴にキスして言うものだよ!安奈のブーツの爪先にキスしながら、お礼を繰り返して言いなさい!」

「ヒイィッ…は、はい…」

 鞭音に怯えきった直樹は、安奈の黒革ニーハイブーツの爪先に何度も屈辱的なキスをしながら、

「安奈様、鞭打って下さって、ありがとうございます…真にありがとうございます…」

と繰り返し礼を述べた。30代半ばの男である直樹が、まだ17歳の少女の足元に這いつくばり、ブーツの爪先にキスしながら、鞭打たれた礼を言うのは、心を八つ裂きにされる程の屈辱だった。しかし一本鞭で打たれる恐怖は、直樹に耐え難い屈辱を味あわせながらも、彼にブーツへのキスを繰り返させた。玲子は安奈に、楽しそうな声で説明した。

「安奈、この男は、ちょっと鞭で打たれたぐらいで、あなたのブーツにキスしながら、鞭打たれたお礼を言うのよ…男を調教するには、鞭が絶対に必要だと分かったでしょう?一度厳しく鞭打ってやれば、後は鞭をちらつかせるだけで、あなたに服従するようになるわ」

 玲子の説明を耳にした直樹は、口惜しさで目から涙がこぼれ、それが安奈の黒革ニーハイブーツの爪先を濡らした。それを目ざとく見つけた瑞穂は、這いつくばっている直樹の背中を、乗馬鞭で鋭く打ち据えた。

「アヒイィッ」

 一本鞭の激痛程ではないが、それでも焼け火箸を押し付けられたような強い痛みに、直樹の口から悲鳴が漏れた。瑞穂は黒革ブーツで床をドンッと踏み鳴らし、直樹を叱りつけた。

「お前の汚らしい涙で、安奈のブーツを汚すんじゃないわよ!お前の舌で舐め取って、綺麗におし!」

 直樹は痛みとあまりの屈辱で更に涙をこぼしそうになったが、慌てて腕で目を拭い、安奈の黒革ニーハイブーツをペロペロと舐め始めた。すると、安奈がすっとブーツを引き、直樹の顔を蹴り飛ばした。

「グワアッ」

 呻き声を上げてひっくり返った直樹の顔面を、安奈は黒革ニーハイブーツでグリグリと踏みにじり、怒鳴りつけた。

「お前の汚らしい唾が、ブーツに付いちゃったじゃないの!余計にブーツを汚すなんて、どういうつもり!ふざけるんじゃないわよ!」

 あまりにも理不尽な叱責だったが、今の直樹には何も言い返せなかった。安奈の黒革ニーハイブーツが直樹の顔面から外れると、彼は再度安奈の足元に平伏し、震え声で詫びを言った。

「安奈様…ブーツを汚してしまい、真に申し訳有りません…」

 土下座して謝罪している直樹に、玲子の嬉しそうな声が聞こえた。

「さすがだわ、安奈…もう男の扱い方が身に付いたみたい。その調子で調教を続けて、男に対する自信をつけてね」

 思わず直樹が顔を上げて安奈の顔を見上げると、先程緊張していた表情とは打って変わり、余裕を持った顔つきで、傲慢に彼を見下していた。一本鞭で直樹を苦しめてのたうち回らせ、詫びながら卑屈にブーツを舐める姿を見て、男に対する恐怖心が薄れ、自信がついたようだった。雅美が口を挟んだ。

「安奈は立派なスタッフになれそうね…さてと、お前は私達、いえ、シェルターの女性全員の奴隷にしてあげるわ。女性に絶対服従する奴隷になると、この場で誓いなさい!」

 昨晩、雅美から雑用係の奴隷にするとは言われていたが、面と向かって奴隷になると誓うように命じられると、さすがに抵抗があった。直樹がうつむいて押し黙っていると、不意に安奈が直樹の傍の床を一本鞭で叩いた。

「ヒエェッ」

 大きな鞭音に怯えて、悲鳴を漏らした直樹に、安奈が大声を出した。

「仁科代表が話しているのに、返事もしないで黙っているなんて、どういうつもり!代表を無視するつもりなの?それなら、今からお前を鞭で打ち殺してやるわよ!」

 安奈が一本鞭を振り上げたのを見た直樹は、恐怖で体を震わせてその場で土下座し、奴隷の誓いを述べた。

「ヒィッ、なります、奴隷になります。皆様に絶対服従する奴隷になります…ですから鞭は、鞭だけはお許し下さい…」

 直樹の態度を見て、安奈は振り上げた一本鞭を下ろし、玲子と雅美は嬉しそうに笑った。

「オホホホ、安奈の鞭打ちも大したものだわ。今日初めて鞭を振るったとは、とても思えないわね。まだ若いけど、女王様の素質は十分よ」

「ウフフフ、こんなに短時間で男に奴隷の誓いを立てさせるなんて、安奈は本当に凄いわ…さてと、お前は自分から奴隷になりますと誓ったんだから、今からお前の事は“男奴隷”と呼ぶわ。私は今日、乗馬を楽しみたい気分なの…男奴隷、四つん這いにおなり!」

 雅美に命じられた直樹は、口惜しさで下唇を噛みながらも、その場でよろよろと四つん這いの姿勢を取った。瑞穂が手綱付きのボールギャグを手にし、手際よく直樹の口に咬ませて、革ベルトで彼の頭を締めつけ、しっかりと固定した。雅美は四つん這いの直樹に跨ると、左手で手綱を取り、右手に持っていた乗馬鞭をピシッと彼の尻に当てた。

「さあ、男奴隷、とっととお進み!」

 直樹は、男の自分が女に人間馬として使われる惨めさに泣きたくなったが、それでも手足を動かして這い進み始めた。直樹の首輪に繋がっているリードを持った瑞穂が、彼の前を先導して歩き、後ろからは一本鞭を二つ折りにした安奈がついて来た。

 乗馬服姿の雅美は、乗馬用ブーツの踵に付いた拍車を直樹の脇腹に蹴り込み、

「男奴隷、もっと速くお走り!」

と命令した。鞭とはまた違った強い痛みを脇腹に受けた直樹は、ボールギャグを咬まされた口からくぐもった呻き声を漏らし、懸命に手足を動かした。しかし雅美は見かけより結構体重があり、どうしても速く這い進めなかった。その上、膝が床に擦れて酷く痛み、歩みはますます遅くなった。

「わざとノロノロ這うんじゃないわよ!もっと速く進んで、仁科代表に喜んでもらいなさい!」

 安奈は後ろから直樹の尻を、二つ折りにした一本鞭で横殴りに叩き、速く這い進むように督促した。

「モガァッ」

 ボールギャグのために大声を出せない直樹は、くぐもった悲鳴を漏らした。鞭を恐れた直樹は、一生懸命前に進もうとしたが、直ぐに膝の痛みが限界となり、床にうずくまってしまった。

「何を勝手に休んでいるんだい!」

 瑞穂は直樹を怒鳴りつけてリードを強く引き、彼の首を圧迫させて苦しめ、安奈は彼の尻を二つ折りにした一本鞭で2,3度叩いた。しかし、それでも直樹は動けなかった。瑞穂はしゃがんで直樹の顔面から手綱付きのボールギャグを一旦外し、目が眩む程の強烈な往復ビンタを浴びせた後、彼に問い質した。

「どうして動こうとしないのよ!私達を舐めているの!?」

「ヒィッ、ヒィッ、膝が痛くて、これ以上動けないんです…」

 直樹は殆ど泣き声で答え、彼の背中に乗っている雅美は肩をすくめた。

「しょうがないわねぇ…私とした事が、うっかり膝当てパットを着けさせるのを忘れていたわ」

 雅美がうずくまっている直樹の背中から立つと、膝当てパットを手にした玲子が近づいて来た。玲子は直樹に膝当てパットを放り投げ、

「男奴隷、それをお着け!着けなかったら、膝が擦り切れて骨が出ちゃうわよ」

と言った。まだ勘弁して貰えず、このまま続けて人間馬として使われる事が分かった直樹は、苦しげな表情で両膝にパットを着けた。そしてまた四つん這いになったが、擦れた両膝はパットを当てていても痛んだ。瑞穂が改めて手綱付きボールギャグを直樹の顔面に取り付けた。すると雅美が安奈に、

「今度は私じゃなくて、安奈がこの男奴隷を人間馬に使いなさい」

と言って、自分の乗馬用ブーツに付けていた拍車を、自らの手で安奈の黒革ニーハイブーツの踵に付け替え、自分の乗馬鞭を安奈の一本鞭と交換した。安奈が直樹の背中に跨ると、玲子が瑞穂に指示した。

「松村主任、男奴隷の首輪に付けてあるリードを外して頂戴。安奈自身の手で人間馬を乗りこなさないと、女王様研修にならないからね」

 瑞穂が直樹の首輪からリードを外すと、安奈は手綱を握って、踵の拍車を彼の脇腹に蹴り込み、乗馬鞭で尻を叩いて、命令した。

「男奴隷、私がいいと言うまで、這い回るのよ!」

 直樹は、脇腹と尻の痛みを堪えながら、よたよたと這い進み始めた。雅美よりは体重が軽いのがせめてもの救いであったが、膝当てパットを着けていても擦れた膝は痛みを感じ、一歩這うのも苦痛であった。それでも、鞭と拍車を恐れた直樹は、必死に這い進んだ。

「ウフフ、男を馬に使うのがこんなに楽しいだなんて、全然知らなかったわ…病みつきになりそう」

 自分に跨っている安奈の独り言を聞いた直樹は、30代半ばの男である自分が、まだ高校生くらいの若い少女に人間馬として辱められている惨めさを改めて感じ、目に涙が浮かんできた。

 安奈を背にして元体育館の床を這い回っていた直樹は、膝の痛みと共に、体力を直ぐに消耗してしまった。しかし、直樹の這う速度が遅くなると、すかさず安奈の乗馬鞭と拍車が彼を督促するので、嫌でも這い進まなくてはならなかった。直樹は脂汗を流し、何も考えないようにして、ただひたすら手足を動かした。それでも、やはり限界がやって来て、直樹は目の前が真っ白になり、両腕を折って床へうつ伏せに倒れ込んでしまった。

 直樹の背中から立ち上がった安奈は、

「何を勝手に休んでいるのよ!大体、急に床に伏せるなんて、私を転げ落とすつもりなの!?」

と怒鳴りつけ、彼の背中と尻を乗馬鞭で何度か打ち据えた。皮膚に見る見る赤い条痕が浮かび上がってきたが、ボールギャグを咬まされている直樹は、くぐもった呻き声を出すだけで、体を起こせそうもなかった。

「ちょっと、安奈、それぐらいにして!この男奴隷が壊れてしまって、楽しめなくなるわ…こいつは本当に限界みたいね。女王様はね、男奴隷を調教する時は、体力の限界を見極める必要があるのよ」

 調教指導役の玲子から注意され、安奈はようやく直樹を鞭打つのを止めた。玲子は直樹の顔から手綱付きのボールギャグを外してやり、彼を黒革ブーツで蹴り転がして、仰向けにさせた。ボールギャグを外された直樹は、口を大きく開けて、ゼイゼイと荒い息をした。

「全く、ちょっと人間馬に使われたぐらいでへたばるなんて、情けない男奴隷だね!」

 直樹を罵った玲子は、カーッ、ペッとわざと大きな音を立てて、直樹の大きく開けた口に痰を吐き入れた。直樹は思わず飲み込んでしまい、喉で感じたぬるりとした不快な感覚は、彼の心を苛んだ。

「安奈も、この人間馬すら務まらない役立たずの男奴隷は、痰壺にでも使っておやり」

 玲子から促された安奈は、彼女に倣ってカーッ、ペッと大きな音で、直樹の口に痰を吐き入れた。女の痰壺にまで貶められた直樹は、あまりの屈辱に顔を赤くして身震いしたが、吐き出した時のお仕置きを思うと、吐き気を堪えて痰を飲み込むしかなかった。

 雅美が、仰向けに力無く横たわっている直樹の脇腹を乗馬用ブーツで蹴りつけ、

「男奴隷、いつまで横着に寝てるんだい!さっさと四つん這いにおなり!」

と命じた。直樹は気力を振り絞り、まともに動けない体を無理に動かして、何とか四つん這いの姿勢になった。

「玲子も随分と優しくなったわね。男奴隷の口に、直接痰を吐くなんて…」

 雅美は些か冗談めいた口調で玲子に話し掛けると、四つん這いになっている直樹の前の床に、カーッ、ペッと痰を吐いた。

「男奴隷、痰を舐め取って、床をきれいにおし!」

 雅美に酷い命令をされた直樹は、床の痰を見て体を震わせた。直接口に痰を吐かれるのは、まだ見えない分だけマシだが、床の痰は見るからに汚らしく、強い吐き気を催した。さすがに直樹が躊躇っていると、雅美は彼の傍の床を一本鞭で強く叩いた。

「ヒィッ」

 大きな鞭音に怯えて、短い悲鳴を漏らした直樹に、雅美が怒鳴りつけた。

「男奴隷の分際で、私の言う事が聞けないのかい!それなら、素直になれるように、この鞭で全身を撫でてあげるわよ!」

「ヒッ、ヒィッ、舐めます、舐めて床をきれいにしますから、鞭だけはお許し下さい…」

 鞭を恐れた直樹は、恥も外聞も無く、床の痰を舐め取り始めた。痰のぬるっとした感触と床の埃のざらついた感触を舌に感じ、吐きそうになったが、精神を無理やり麻痺させて舐め続けた。今の直樹には、鞭から逃れられるのなら、何でも出来そうだった。

「うわぁ、何て汚らわしいの!犬だって、痰なんか舐めないわよ。この男奴隷は、動物以下だわ」

 安奈の蔑みが直樹の胸を深く抉り、鼻の奥が熱くなって目から涙がこぼれた。直樹が床の痰を舐め取り終わると、玲子が瑞穂に声を掛けた。

「警備主任、この男奴隷の首輪にリードを付けてやって…今から安奈に人間犬の躾を練習してもらうわ」

  瑞穂は四つん這いで身震いしている直樹に近づき、彼の首にリードを取り付け、リードの端を安奈に手渡した。

「安奈、この男奴隷にチンチンさせてみて」

 玲子が安奈を促して、安奈は、

「あっ、はい、分かりました…男奴隷、チンチンおし!」

と玲子に返事をした後、直樹に命令した。直樹は鞭痕で引きつって思うように動かない体を無理に動かし、曲げた脚を開いて爪先立ちして、両手を胸の高さで下げる犬のチンチンの惨めな格好をした。

「警備主任、安奈の調教の様子を、スマホで動画撮影しておいてね…男奴隷、そのチンチンの格好で『安奈様、私はマゾの変態なんです。どうか私を奴隷にして、虐めて下さい』と安奈にお願いおし!」

 玲子は瑞穂に動画撮影を頼み、直樹に酷い命令を下した。直樹は恥辱で顔を紅潮させながらも、リードを持って自分の前に立っている安奈に、

「あ、安奈様…私は…マゾの変態なんです…どうか私を…奴隷にして…い、虐めて下さい…」


とつっかえながら震え声でお願いした。玲子はニヤニヤと意地悪そうに笑い、

「あ〜ら、お前は変態マゾなの…虐めてあげてもいいけど、その代わり女性に絶対服従する奴隷になると誓いなさい!」
 



と、なぜだか直樹に改めて命じた。

「は、はい…女性に絶対服従する奴隷になります…」

 先程奴隷の誓いを述べた筈なのにと、直樹はふと疑問に思ったが、玲子達の機嫌を損ねるのを恐れ、命じられた通りに再度奴隷の誓いを述べた。

「そう、女性の奴隷になるのね…じゃあ、今からお前の事は、男奴隷と呼ぶわ。男奴隷と呼ばれたら、直ぐに飛んで来て、女性の足元に平伏し、靴の爪先にキスをするんだよ…分かったかい?」

「はい、分かりました…」

 先程と重複する事を言われ、直樹は内心首を捻ったが、玲子に逆らう訳にはいかず、とりあえず素直に返事をした。チンチンの惨めな格好のままで受け答えをする直樹の様子を、瑞穂は面白そうにスマホで動画撮影していた。

「安奈、この変態マゾの男奴隷を犬みたいに扱って、自分の身分と立場を思い知らせてやって」

 玲子の指示された安奈は、直樹の首輪に繋がれているリードをグイッと強く引き、チンチンの格好をしている彼を前に引き倒した。

「男奴隷、お前は犬よ!犬みたいに四つん這いにおなり!」

 安奈に命じられた直樹は、よろよろと四つん這いになった。安奈は直樹の後ろに回り、尻に乗馬鞭の一撃をくれて、命令した。

「男奴隷、犬の散歩をするわよ…とっとと、お歩き!」

 尻に焼け火箸を当てられたような痛みに、直樹は短い悲鳴を上げながらも、安奈の命令通りに四つん這いで這い始めた。安奈は直樹の後ろをついて行き、彼の股間部分を乗馬鞭でつつきながら、酷い命令を下した。

「この犬は尻尾が無いくせに、醜いものをぶら下げているんだね…腰を揺らせて、尻尾の代わりにこの見苦しいものを振りなさい!」

 あまりの恥辱で、直樹の顔は今にも泣き出しそうに歪んだが、乗馬鞭の打撃を受けないためには、安奈の命令に逆らえなかった。直樹は這い進みながら腰を左右に振り、股間のものをぶらぶらと揺らした。その直樹の惨めな姿を、瑞穂は笑いを堪えながらスマホの動画撮影を続け、玲子と雅美は指差して大声で笑った。

「キャハハハ、男の四つん這いって改めて見ると、本当に滑稽よね。私、男に生まれなくてよかったわ」

「アハハハ、あんな醜悪なものをぶらつかせて、女に見せつけるなんて、恥ずかしくないのかしら?」

 玲子と雅美の蔑みは、直樹の胸を深く抉り、彼は死にたい気持ちに追い込まれた。それでも鞭を恐れている直樹は、下唇を噛んで安奈の前を這い進み続けた。

 元体育館を一周したところで、玲子から声が掛かった。

「安奈、この男奴隷をお座りさせて」

「はい…男奴隷、お座り!」

 安奈に命じられた直樹は、床に正座した。人が背中に乗っていなくて膝当てパットをしていても、擦れた膝がいい加減痛んで苦しんでいたので、直樹は内心ほっとした。しかし、残酷な玲子が、直樹をただ休ませる筈は無かった。

「男奴隷、お前は犬だから、女御主人様の匂いを覚えなくちゃいけないわよね…安奈に、『女御主人様の臭いを覚えたいので、パンティを恵んで下さいませ』とお願いおし!」

 玲子の屈辱的な命令に直樹は顔色を変えたが、それでも逆らえずに安奈にお願いした。

「あ、安奈様…女御主人様の匂いを覚えたいので…パ、パンティを恵んで下さいませ…」

 正座している直樹は、震え声で安奈に懇願したが、彼女からの返事は目から火花が散る程の強烈な平手打ちだった。

「ヒイィッ」

 情けない悲鳴を漏らした直樹に、安奈は怒声を浴びせた。

「ふざけるんじゃないわよ、この変態!女のパンティを欲しがるなんて、本当に最低の変態なんだね!お前なんかに、生きる価値は無いわ。この鞭で打ち殺してやる!」

 怒りで顔を赤くした安奈が乗馬鞭を振り上げ、直樹を震え上がらせたが、幸いにも玲子が止めてくれた。

「待ちなさい、安奈!この男奴隷を打ち殺したりしたら、これから楽しめなくなるじゃないの…少し落ち着いて」

 安奈は渋々、振り上げた乗馬鞭を下ろした。

「安奈、この男奴隷はパンティを欲しがっているんだから、今あなたが穿いているパンティを恵んであげなさい」

 玲子に促されたものの、安奈はさすがに嫌がった。

「こいつの目の前で、パンティを脱ぐんですか?それは、ちょっと…」

「いいこと、安奈…男奴隷なんて、私達女王様にとっては、犬畜生か虫けらの類に過ぎないわ。あなたは犬猫や昆虫の前で服を着替えて、裸を見られても全然恥ずかしくないでしょう?今のあなたは、女王様なのよ。犬畜生や虫けらと同じ男奴隷があなたの裸を見ても、恥ずかしさも何も感じない毅然とした態度が必要なの…だから、パンティをこいつの前で脱いで、恵んであげなさい」

 玲子に説明された安奈は、仕方なく穿いている赤色パンティに手を掛け、思い切って下に降ろした。そして脱いだ赤色パンティを、正座している直樹の顔に放り投げた。安奈は女王様らしく振る舞おうと、直樹へ傲慢に言い放った。

「男奴隷、この私がパンティを恵んであげたんだから、しっかりと私の匂いを覚えなさい!」

 それでも若い安奈は、やはり男の前で下半身裸になるのが恥ずかしいのか、顔を赤らめて自分の股間部分を両手で覆った。一方直樹はどうしていいか分からず、安奈の赤色パンティを両手で持って、じっと見つめていた。すると玲子が、正座している直樹の傍の床を一本鞭で叩いて、鞭音を響かせた。

「ヒエェッ」

 鞭音に怯えて悲鳴を上げた直樹を、玲子は叱りつけた。

「男奴隷、せっかく安奈がお前にパンティを恵んでくれたのに、お礼も言えないのかい!」

「ヒィッ、い、いえ、安奈様、パンティを恵んで下さり、真にありがとうございます」

 直樹は慌てて土下座し、安奈に礼を述べた。

「いいから、さっさとパンティを裏返して、クロッチ部分に鼻を押し当てて、女御主人様である安奈の匂いをよく嗅ぎなさい!」

 玲子に促されて、直樹は上体を起こし、安奈の赤色パンティを裏返した。直樹を鞭打ったり、馬や犬にして虐めて興奮したためか、クロッチ部分は安奈の淫液でかなり濡れており、後ろの方は茶色い帯状に汚れていた。直樹は少し躊躇ったが、玲子達の勘気に触れるのを恐れ、思い切って汚れたクロッチ部分に鼻を当てて、臭いを嗅いだ。まだ若いのに似合わず、饐えたような強烈な女の臭いが直樹の鼻孔に流れ込んで脳を直撃し、脳髄が痺れたかのように頭がクラクラした。それでも、女性達から鞭のお仕置きを受けないために、必死に汚れたクロッチ部分の臭いを嗅ぎ続けた。

 直樹がパンティの臭いを嗅いでいる姿を、安奈はうじ虫でも見るような、軽蔑しきった目つきで眺めていた。

「よく、パンティの汚れた染みを嗅げるものね…見るのもおぞましい、最低の変態だわ!」

 安奈の侮蔑が直樹の頭の中で虚ろに響いたが、玲子と雅美がじっと見つめているので、パンティの汚れた臭いを嗅ぐ事は止める訳にいかなかった。

「男奴隷、匂いを嗅ぐだけじゃ、物足りないでしょう…安奈に『私に女御主人様のパンティの汚れを舐めさせて、きれいにさせて下さい』とお願いおし!」

 玲子に酷い命令をされた直樹は、驚いて思わず彼女の顔を見上げたが、強い眼光で睨まれ、力無く視線を落とした。直樹は仕方なく、安奈に泣きそうな声で懇願した。

「安奈様…私に女御主人様のパンティの汚れを舐めさせて、きれいにさせて下さい…」

「何ですって?お前、汚れたパンティの匂いを嗅ぐだけじゃ足りなくて、舐めたいって言うの?底無しの変態なんだね!お前なんか男どころか、人間の内に入らないわよ…いいわ、好きなだけ舐めさせてあげる。その代わり、パンティの汚れを全部舐め取って、きれいにするのよ!汚れが少しでも残っていたら、全身の皮膚がズタズタに裂けるまで、鞭で打ってやるからね!」

「…お許しを頂いて、ありがとうございます」

 安奈に手厳しい事を言われ、直樹は泣きたくなったが、それでも礼を言うのは忘れなかった。さっき礼を言わなくて、玲子にきつく叱られたのが身に染みていた。直樹は強い臭いのするクロッチ部分の汚れに、舌を這わせた。汚れを掬い取るように舐めると、舌に何とも表現出来ない刺激的な味が拡がり、口中には饐えたような生臭い臭いが充満して、直樹は顔を赤くし身震いした。

「本当にパンティの汚れを舐めているわ…こいつは犬畜生以下のうじ虫よ、最低の変態!」

 安奈の軽蔑しきった侮蔑が、直樹の胸を深く抉り、気分を落ち込ませた。瑞穂は、楽しそうに動画撮影を続けていた。それでも直樹が心を無にしてクロッチ部分をペロペロ舐めていると、玲子から声が掛かった。

「男奴隷、舐めるだけじゃ、汚れが十分に取れないでしょう…口に含んで、噛むようにしゃぶって、汚れを取りなさい」

 直樹は心底泣きたくなったが、それでも玲子に逆らえず、汚れたクロッチ部分を口に入れ、咀嚼するように口をモグモグと動かした。分泌される唾液がクロッチ部分に吸い取られて、汚れを直接口で味わうようになり、きつい臭いで頭がクラクラした。かなり苦労したが、それでもしばらく口を動かしてパンティを引き出してみると、クロッチ部分の汚れは目立たない程に薄くなっていた。

 直樹は安奈に、

「安奈様、パンティの汚れをきれいにしました…」

と言って、パンティを両手で捧げるように差し出した。しかし、返事は安奈からの目が眩む程の強烈な往復ビンタだった。

「ヒイィッ」

 安奈は、情けない悲鳴を漏らした直樹の手からパンティを引ったくると、彼の顔面へ叩きつけるように投げ捨てた。

「パンティの汚れをきれいにしました、ですって?お前の唾でベトベトに汚して、何を言ってるの!ふざけるんじゃないわよ!」

 あまりにも理不尽な叱責であったが、直樹は何も言い返せず、その場で土下座して謝罪した。

「安奈様、真に申し訳ありません…どうか、この愚かな男奴隷をお許し下さい…」

 安奈は、土下座している直樹の頭を黒革ニーハイブーツで踏みにじり、罵声を浴びせた。

「ふんっ、土下座すれば何でも許してもらえると思ったら、大間違いよ!お前がしでかした事は、お前の体で償わせてやるからね!覚悟しなさい!」

 安奈の黒革ニーハイブーツの下で、直樹は恐怖に震え上がったが、意外にも玲子が助け船を出してくれた。

「安奈、それぐらいにしておきなさい。あなたの女王様振りは見事なものだけど、この男奴隷にはまだしてもらう事があるからね」

 安奈は直樹の頭から、些か不満そうに黒革ニーハイブーツを外した。

「さてと…男奴隷、せっかく安奈からパンティを渡されたんだから、マスクみたいに顔に被ってみなさい」

 玲子から屈辱的な命令を受けた直樹は、上体を起こし、先程安奈が顔に投げ付けたパンティを床から手にした。そして、脚を通す箇所が目にくるよう、クロッチ部分を鼻に当てて、パンティを顔に被った。

「ウフフ、なかなか面白い格好ね…ところで、お前は安奈のパンティをしゃぶって、興奮しちゃったの?そんなに猛々しく勃起させて…」

 玲子に指摘され、自分の下半身を見た直樹は、初めて勃起している事に気がついた。若い安奈の下の臭いに、体が知らず反応してしまったようだった。直樹は、恥ずかしさで顔を紅潮させた。

「安奈はまだ、男のオナニーを見た事無いでしょう?この男奴隷にオナニーするよう命令して、皆で見物しましょう」

 直樹の顔色が変わり、安奈は彼を罵って非情な命令を下した。

「私のパンティの汚れを舐めて興奮するなんて、どこまで恥知らずなのよ!お前なんか、もう人間じゃないわ!お前は何をしても、恥ずかしくないのよね。それなら、私達の前でオナニーしてみなさい!」

 一瞬直樹は断ろうと思ったが、安奈が乗馬鞭を握り直すの見て、怯えて下を向いた。そして、異様な状況で異様に興奮してしまったせいか、勃起が治まらない自分のものを右手で握った。

「男奴隷、よく見えるように膝立ちになって、オナニーおし…それと、オナニーする前に安奈のお許しを得るのよ」

 玲子に指示された直樹は、泣きそうな声で安奈に懇願した。

「安奈様、この男奴隷に、オナニーするのをお許し下さい…」

「ふんっ、私のパンティを顔に被って、オナニーしたいだなんて、本当に醜悪な生き物ね…そんなにオナニーしたいのなら、さっさとしなさいよ!」

 安奈に蔑まされた直樹は、顔を歪めて膝立ちになり、硬く屹立したものを握っている右手を、おずおずと前後に動かし始めた。

「どう、安奈?これが男のオナニーよ。なかなか面白いでしょう?」

「私も客のマゾ男に時々させるけど、いつ見ても滑稽だわ」

「へぇーっ、男のオナニーって初めて見たけど、皮が前後に動くのね…グロテスクだわ」

 玲子達の蔑みが直樹の耳に響いて、泣きたい気持ちになった。しかし、なぜだか直樹のものは萎える気配が無く、却ってますます硬度を増した。

「男奴隷、せっかくだから、安奈の美しい身体を見て、『この男奴隷は、安奈様の所有物です』と繰り返し言いながら、オナニーおし!」

 玲子に命じられた直樹は、下半身裸になっている安奈の身体を見つつ、

「この男奴隷は、安奈様の所有物です…この男奴隷は、安奈様の…」

と復唱しながら、右手で自分の硬く屹立しているものをしごき続けた。

 先程までの安奈は、自分の股間部を手で覆って隠していたが、今や両手を腰にやり、陰部を直樹に見せつけるように仁王立ちになっていた。安奈は今までの直樹の醜態を目の当たりにして、本気で彼を人間の男ではなく、動物か虫けらと同等に見なし、恥ずかしさを感じなくなったようだった。

 女性達から異様な精神状態に追い込まれて、

「この男奴隷は、安奈様の所有物です…」

と何度も繰り返して言っている直樹は、安奈の陰部を目が吸い寄せられるように見つめ、右手の動きが知らず早くなっていった。しばらくして直樹は、

「ウグゥッ」

と呻いて、白濁した液体を多量に噴出した。射精した後、直樹は全身の力が抜け、その場にへたりこみ、がっくりとうなだれた。いつの間にか目から涙が溢れ、床に涙がポタポタと落ちた。雅美が面白そうに感想を述べた。

「ウフフ、結構沢山出したわね…それにしても、女の前でオナニーして射精するなんて、呆れ果てるわ」

「安奈、分かるかしら?反抗している男を心の底から服従させるのには、目の前で強制してオナニーさせるのが効果的なの…昔のアメリカ南部では、新しく仕入れた黒人奴隷を皆が見ている前で、親子や兄弟姉妹で強制的にセックスさせたり、オナニーさせたりしたんだって。そうすると、黒人奴隷は反抗する気力が無くなり、御主人様の言いなりになったそうよ」

 玲子が安奈に説明するのを聞いていた直樹は、ぼんやりとその通りだと思った。女性達が見ている前でオナニーして射精した瞬間、自分の体から神経や精神や気力と言ったものを、全て引き抜かれたような気がして、最早女性達に逆らう事は精神的に不可能となっていた。

 玲子は直樹に近づくと、顔に被っている安奈の赤色パンティを剥ぎ取り、酷い命令を下した。

「男奴隷、お前の汚らしい精液で床を汚すなんて、どういうつもりなのよ!お前の舌で、残らず舐め取りなさい!」

「…はい、分かりました」

 逆らう気力を全て奪い取られた直樹は、四つん這いになり舌を伸ばして、床に飛び散った自分の精液を舐め取り始めた。口中に拡がる精液の生臭さと、舌にざらつく床の埃の感触が直樹の惨めさを際立たせたが、半ば腑抜けにされたせいか、先程床に吐かれた雅美の痰を舐め取った時程の屈辱は感じられなかった。それが逆に、女達の手で自分の精神がどんどん削り取られていると直樹に実感させ、内心焦りを生じさせた。

 直樹が床に飛び散った精液を全て舐め取ったところで、玲子は邪悪な笑みを浮かべた。

「男奴隷、私達を差し置いて、自分だけ気持ちよくなったんじゃ、申し訳ないでしょう?男奴隷の務めとして、女王様を気持ちよくさせなさいとね…安奈、この男奴隷に命じて、自分のあそこに舌奉仕させて」

 玲子の指示に、安奈は戸惑いの表情を見せた。

「えっ…こいつに、私のあそこを舐めさせるんですか?」

「安奈、女王様は男奴隷に対して、恥ずかしいと思ったり、恥ずかしがる態度を見せては駄目よ…男奴隷なんて、人間の内に入らないんだからね。人間じゃなく、人間もどきのバター犬だと思って、この男奴隷の舌を使ってみて」

 安奈は少し躊躇ったが、意を決して直樹に命令した。

「男奴隷、お前の舌で、私のここに奉仕しなさい!」

 仁王立ちになっていた安奈は、自分の陰部を指差し、正座している直樹に向けて少し腰を突き出した。直樹は、ふらふらと吸い寄せられるように安奈に這い寄り、自分の顔を彼女の陰部に埋めた。若いのに濃く密集している陰毛を鼻でかき分け、伸ばした舌先が安奈の陰唇に触れると、一瞬身体を震わせ、

「あんっ…」

と彼女の口から声が漏れた。直樹を虐待して興奮したためか、安奈の陰唇は赤く充血してめくれていた。既に淫液で濡れそぼっている安奈の陰唇を、直樹は舌を懸命に動かして舐め始めた。安奈も気分が出たのか、強い臭いの淫液が止めどもなく湧いてきて、直樹は咽せそうになった。それでも直樹は、淫液で口元をべとべとにしながら、安奈の陰唇を舐め回し、充血して肥大してきたクリトリスを唇で挟み、吸いながら舌先でつついた。

「あっ、ああっ、いいっ…」

 感じてきた安奈は、持っていた乗馬鞭を床に落とし、両手で直樹の髪を掴んで引き寄せ、彼の顔面を自分の陰部に強く押し付けた。直樹は窒息しそうになったが、安奈を満足させなければ、どんなお仕置きを受けるか分からない恐怖で、更に舌と唇を総動員して彼女に奉仕した。

「ああっ、ああぁーっ、いくぅーっ!」

 若くて感度が良いのか、安奈は直樹の顔面を強く自分の陰部に押し付けたまま、背を反らして大声を出し、予想より早く絶頂を迎えた。しばらくそのままの姿勢で安奈は余韻を楽しんでいたが、直樹の髪を掴んでいた両手を離して、彼を解放した。安奈の陰部から顔を離した直樹は、ようやくまともに呼吸が出来るようになり、ゼイゼイと荒い息をした。

 見物していた雅美と玲子は満面の笑みを浮かべ、盛大な拍手をした。

「お見事だわ、安奈…女王様らしく男奴隷の舌奉仕を、存分に楽しんだわね」

「まだ若いけど、男奴隷の舌を存分に使いこなすなんて、安奈の素質は素晴らしいわ。立派な女王様になれるわよ」

 二人に褒められた安奈は、照れて恥ずかしそうに申し出た。

「ありがとうございます…あの、おしっこしたくなったので、トイレに行ってもいいですか?」

 玲子は笑いながら、床にへたっている直樹を指差した。

「若いから、仕方ないわね…トイレなら、ここにあるじゃない。この男奴隷を人間便器にして、こいつの口の中におしっこを注ぎ込んでおやり」

 安奈は、些か驚いたような表情で直樹を見た。直樹は安奈以上に驚いていた。

「そ、そんな…おしっこなんて飲めません」

 思わず直樹が口答えすると、玲子はすかさず彼の傍の床を一本鞭で叩き、大きな鞭音を響かせた。

「ヒイッ」

 鞭音に怯えて短い悲鳴を漏らした直樹を、玲子は怒鳴りつけた。

「ふざけるんじゃないよ!男奴隷の分際で、拒否出来るとでも思っているのかい!おしっこも飲めないような役立たずの男奴隷は、この鞭で全身の皮膚を剥ぎ取ってやるからね!」

「ヒッ、ヒイィッ、鞭は、鞭だけは勘弁して下さい。どうか、鞭だけは許して下さい…」

 心底鞭を恐がっている直樹は、その場に土下座して玲子に哀願した。玲子は一本鞭をしごきながら、高慢な口調で直樹に問い掛けた。

「そんなに鞭が嫌なのかい…それなら、特別にお前に選ばせてあげるわ。人間便器になって安奈のおしっこを飲むか、鞭で死ぬ程打たれるか、好きな方をお選び!」

「そ、そんな…」

 とても即答出来ずに、直樹が逡巡して口ごもっていると、玲子は彼の体すれすれで鞭を振るい、空中でバチンッと大きな鞭音を鳴らした。

「ヒイィッ」

「さっさと決めて、答えなさい!お前が決められないのなら、私が鞭打ちに決めて上げるわ。今からこの鞭で、お前の体をズタズタの肉片に変えてやるから、覚悟おし!」

 玲子が黒光りする一本鞭を振りかぶったのを見た直樹は、慌てて土下座して、彼女に再度哀願した。

「お願いです、鞭だけは許して下さい…飲みます、安奈様のおしっこを飲みます。ですから、鞭だけは勘弁して下さい…」

 必死に哀願する直樹の態度を見た玲子は、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべて、振りかぶった一本鞭を下ろした。

「そう、安奈のおしっこを飲むのね…自分から安奈に『この卑しい男奴隷に、安奈様のおしっこを恵んで下さいませ』とお願いおし!」

「は、はい…安奈様、この卑しい男奴隷に、安奈様のおしっこを恵んで下さいませ…」

 直樹は一旦上体を起こし、安奈の方に向いて再度土下座して、卑屈に懇願した。その様子を見ていた雅美が、からかうような口調で直樹を嘲った。

「ウフフ、お前は鞭を恐れて、女のおしっこを飲むの?普通の男なら、女のおしっこを飲むより、鞭の痛みを我慢する筈よ。やっぱりお前は人間じゃなくて、人間もどきの男奴隷なんだね」

 雅美に酷く侮蔑され、直樹にわずかに残っていた自尊心が深く傷つき、目の奥が熱くなった。

「男奴隷、安奈の足元で正座して、顔を上に向け、口を大きくお開け!」

 直樹が安奈の足元に這い寄り、玲子に命じられた通りの姿勢を取った。すると安奈は、

「お前は本当に私のおしっこを飲みたいの?救いようの無い、本物の変態ね!見るのも汚らわしいわ!」

と罵り、身を屈めて直樹の開いた口にペッと唾を吐き入れた。さっきの痰程のぬめりは無かったが、それでも直樹の心を傷つけるには十分過ぎるくらいで、彼の目に涙が浮かんだ。

 安奈は上体を起こし、直樹の顔に跨るように立つと、彼の髪を掴んで引き寄せ、自分の陰部を開いた口に密着させた。

「そんなに私のおしっこが飲みたいのなら、たっぷり飲ませてあげるわ!絶対にこぼすんじゃないわよ!一滴でもこぼしたら、鞭で打つからね!」

 安奈に厳しい事を言われた直樹は、覚悟して彼女の尿を飲もうとした。しかし、安奈は尿意が高まっている筈なのに、どういう訳か排尿しなかった。

「駄目ね…おしっこしたいのに、なかなか出ないわ…」

 安奈は、切ない声で玲子に訴えた。男に尿を飲ませるのが初めての安奈は、さすがに緊張して尿が出ないようだった。正座して安奈の陰部を口に押し付けられている直樹は、このままおしっこが出ないで欲しいと、心底願った。

 しかし、玲子が安奈の後ろから近づき、

「安奈、もっと肩の力を抜いて、リラックスしなさい…たかが男奴隷におしっこを飲ませるぐらいで、女王様が緊張したら駄目じゃない」

と優しく言って、両手を安奈の少し強張った肩に置き、優しく揉みほぐした。すると、

「あっ」

と安奈の口から声が漏れ、いきなり陰部から尿が噴き出した。

 不意に口中へ勢いよく尿を注ぎ込まれた直樹は、目を白黒させながら必死に飲み下した。強いアンモニア臭が鼻を突き、舌と口中にピリピリとした刺激を受け、喉につっかえて咽せそうになったが、鞭を何より恐れている直樹は、止めどもなく排泄される安奈の尿を必死に飲み続けた。胃に安奈の尿が溜まっていき、直樹は腹に熱い鉛の塊が生じたように感じた。

 ようやく安奈は長い排尿を終え、直樹の髪から手を放した。何とかこぼさずに尿を飲み終えて、ほっと安堵した直樹の顔面が安奈の陰部から離れると、すかさず玲子から命令を受けた。

「男奴隷、おしっこを飲んだからと言って、気を抜くんじゃないよ!飲み終わったら、いちいち言われなくても、舌を使ってきれいに舐め上げて、後始末するものだよ。さっさと後始末おし!」

 直樹は泣きそうに顔を歪めたが、仁王立ちになっている安奈の股間に再度顔を寄せ、舌を伸ばして、尿で濡れそぼった陰部を舐め始めた。直樹の舌が陰部に触れると、先程の舌奉仕で敏感になっているのか、安奈は微かに喘ぎ声を漏らして、身体を少し震わせた。

「舐めるだけじゃなくて、唇も使って、残っているおしっこを吸い取るんだよ!」

 玲子の厳しい指導を頭上から受けた直樹は、急いで唇を安奈の陰唇に密着させ、残留している尿を吸い取った。直樹の口中と舌に、改めて強いアンモニア臭と尿の刺激的な味が拡がり、本当に人間便器に堕とされてしまったんだと実感させ、気分をひどく落ち込ませた。

 不意に安奈は、直樹の髪を左手で掴んで、彼の顔面を自分の陰部から引き離し、右手で目が眩む程の強烈な往復ビンタを張った。

「ヒイィッ」
   
「いつまでも舐めてるんじゃないわよ、このスケベ奴隷!」

 安奈は、短い悲鳴を漏らした直樹を怒鳴りつけると、黒革ニーハイブーツで彼の顔を蹴りつけ、仰向けに倒した。あまりにも理不尽な叱責であったが、とても逆らえない直樹は、軋む体を何とか動かし、その場で土下座して謝罪した。

「安奈様、申し訳ございません…どうか、お許し下さい…」

 その様子を見ていた雅美は大笑いし、玲子は安奈を褒め称えた。

「アハハハ、昨日まで社会派ジャーナリストを気取っていた男が、こんな若い娘の奴隷になるなんて、本当に愉快だわ…お前も、堕ちるところまで堕ちたものね」

「安奈、初日にしてはお見事よ。気概はもう立派な女王様だわ…今夜はもう遅くなったから、女王様研修はこれぐらいにしましょう」

 雅美が、安奈が直樹を調教する様子を、ずっとスマホで動画撮影していた瑞穂に声を掛けた。

「松村主任、撮影はもういいから、この男奴隷を檻に戻しておいて」

「はい、了解しました」

 瑞穂はスマホを腰のホルダーに納め、他の女性警備員が直樹の首輪に繋がれたままになっているリードの端を手にした。

「男奴隷、檻に戻るわよ…さっさと四つん這いになって、檻まで這ってお行き!」

 瑞穂は直樹に命令し、空中で乗馬鞭を鋭く振って、空気を切り裂く音を彼に聞かせた。直樹は全身打撲の負傷がまだ癒えていないのに、鞭打ちの負傷まで追加されて体が引きつり、這い進むのも困難だった。しかし、今の直樹にとって鞭を手にした女性は、逆らう事の出来ない絶対君主となっていた。女性警備員はリードを引っ張って先導し、直樹は引きつり軋む体を無理に動かして、一歩一歩這い進んだ。その後を、乗馬鞭を持った瑞穂がついて行った。

 よたよたと這って戻って行く直樹に、玲子が後ろから声を掛けた。

「男奴隷、お前も奴隷調教は初めてみたいだから、今日はこの程度で済ませたあげたけど、これから奴隷の行儀作法を体にみっちりと教え込んであげるからね…さっきお前は、安奈のおしっこを飲むのを嫌がっていたけど、男奴隷にとって女王様のおしっこは貴い聖水であり、罰じゃなくご褒美として飲ませて戴くものなのよ。その内に自分から女王様にご褒美として、聖水をねだるように仕込んであげるから、楽しみにしてなさい」

 玲子に凄く嫌な事を言われた直樹は、思わず身震いして暗い顔になった。



 直樹が苦労して檻まで辿り着き、その中に入ると、前と同じように女性警備員が水の入った紙コップと数錠の錠剤を檻の中に入れた。

「お前も満身創痍になったわね…薬を飲んで、早く寝なさい。明日からは、色々と雑用をしてもらうから、今の内にゆっくり休んでおきなさいよ」

 瑞穂は直樹にそう言い残すと、他の女性警備員を連れ、ブーツの靴音を響かせながら立ち去った。残された直樹は、渡された錠剤を口に含み、水で流し込んだ。古毛布を体にくるんで横になったが、鞭打たれた傷が擦れて痛み、なかなか寝つけそうもなかった。

(畜生、人をこんな酷い目に遭わせやがって…絶対にここから脱出して、暴行・傷害・監禁で警察に訴え、リボンの内情を世間に暴露してやる!)

 直樹は優香の顔を思い浮かべながら、脱出方法をあれこれ考えた。今の直樹には、愛する優香の元へ戻る事が、唯一の心の支えとなっていた。鞭痕の痛みを堪えて、色々と考え事をしていた直樹であったが、服用した睡眠導入剤の効果か、いつの間にかぐっすり寝入ってしまった。



 ガシャーンと音がして、檻が震動し、直樹は目を覚ました。昨日と同じように、瑞穂が黒革ブーツで檻を強く蹴ったのだ。直樹が寝惚けまなこで周りを見渡すと、すっかり明るくなっており、既に朝になっている事が分かった。檻の傍には、瑞穂と二人の女性警備員が立っていた。

「男奴隷の分際で、いつまでも寝てるんじゃないわよ!さっさと起きて、檻から出て来なさい!」

 女性警備員の一人が檻の扉を開け、直樹はもそもそと這い出た。消炎剤と痛み止めの錠剤のおかげか、打撲と鞭痕の疼痛は随分とやわらいでいた。それでも動くと体が軋み、かなり痛みを感じた。

「あ、あの…トイレに行かせて下さい…」

 起きてから強い尿意を感じた直樹は、瑞穂に恐る恐る申し出た。

「仕方無いわね…さっさとお行き!」

 直樹はよたよたとトイレに這って行き、昨日と同じ様に瑞穂達の監視下で、屈辱的な排尿をした。そして元教室に戻ると、バケツに入った汚らしい残飯を、犬のように食べさせられた。そして、トイレの水で洗顔させられた後、屈辱的な排便を強いられた。

 屈辱にまみれた朝の日課が終わると、瑞穂はトイレで四つん這いになっている直樹に、自分のスマホを突き出した。

「男奴隷、昨晩動画撮影した調教シーンを、わざわざお前のために編集したあげたのよ…よくご覧なさい」

 顔を上げて動画を見てみると、直樹は強制されたのではなく、まるで直樹が変態のマゾ男で、自分から安奈に奴隷志願して、彼女に虐めてくれと懇願しているように編集されていた。

「もしお前がこのシェルターから逃げ出したりしたら、この動画をUSBに入れて各出版社とマスコミに配り、ネットでも拡散してやるからね!」

 直樹は、がっくりとうなだれた。昨晩玲子が、直樹に奴隷の誓いを繰り返させたり、直樹自身の口から安奈に哀願させたりした理由が、今ようやく分かった。瑞穂はスマホを腰のホルダーに納め、勝ち誇ったような声で直樹に命じた。

「男奴隷のお前に相応しい仕事を与えるわ。今からこの元小学校のトイレを、全て掃除しなさい。掃除中は、人間みたいに立つ事を特別に許可してあげる…早く取り掛かりなさい!」

 瑞穂に命令された直樹は、元気無く四つん這いでよろよろとトイレの掃除道具入れに向かった。



 瑞穂と女性警備員二人の監視の下、直樹はトイレ掃除を始めた。瑞穂ら女性警備員達に見張られて、全裸でトイレ掃除させられるのは屈辱的で非常に辛かったが、夏場で寒くないのがせめてもの救いだった。ひょっとして、便器を舌で舐めて掃除させられるかもと心配したが、幸いにも掃除道具を使う事は許可してくれた。それでも直樹がもたもたしたり、手際が悪かったりすると、情け容赦無く乗馬鞭で打たれた。

元小学校だけあってトイレの数が多いので、一箇所のトイレ掃除が終わると、直ぐ次のトイレに四つん這いで向かわされた。直樹が次のトイレを懸命に掃除していると、シェルターに入居している30代前半の女性が入って来た。

「きゃあっ、何、この人!?」

 女性は直樹の姿を見て驚き、大声を上げた。直樹は首輪を着けただけの全裸でトイレ掃除していたので、女性が驚くのも無理はなかった。

「落ち着いて、恐がらなくてもいいわよ…この男は女性に暴力を振るったり、お金を巻き上げたりと、散々酷い事をして女性を泣かせてきたの。だから私達がこのシェルターで償いの労働をさせているところよ」

 瑞穂が女性に適当な事を言って、説明した。説明を受けた女性は、安心したように瑞穂へ話し掛けた。

「ああ、そうなんですか…この男も、自分から逃げ出した奥さんか彼女を取り戻しに、ここのシェルターへ押し掛けて来たんですか?」

「まあ、似たようなものね…別に気にしないで頂戴」

 二人のやり取りを聞いた直樹は、おそらくリボンのシェルターに押し掛けた男達は、瑞穂ら女性警備員達からボコボコの袋叩きにされ、人にはとても見せられない恥ずかしい姿を力ずくで強要されて、その痴態を動画撮影され口止めされてから、放り出されたのだろうと推測した。

「掃除中なら、他のトイレを使った方がいいみたいですね」

 30代前半の女性が立ち去ろうとすると、瑞穂が声を掛けた。

「ちょっと待って…遠慮せずにこの男を人間便器として使って」

 立ち止まった女性は、驚いた顔で瑞穂に尋ねた。

「人間便器って…どうするんですか?」

「私も丁度催してきたし、お手本を見せてあげるわ…男奴隷、昨日安奈のおしっこを飲んだように、床に正座して、顔を上に向け、口を大きくお開け!」

 直樹は顔色を変えたが、瑞穂が空中で乗馬鞭を一振りして風を切る音を聞かされると、震え上がって直ちにトイレの床に正座し、顔を上に向けて口を開けた。瑞穂は手にしていた乗馬鞭を傍らの女性警備員に渡すと、カチャカチャと音を立ててベルトのバックルを緩め、何の恥ずかしげも無く、制服のズボンとパンティを一緒に膝上まで下ろした。瑞穂は直樹の前で仁王立ちになり、左手で彼の髪を掴んで引き寄せ、彼の開いた口を自分の陰部に密着させた。

「男奴隷、こぼすんじゃないわよ!」

 瑞穂が直樹に注意した途端、彼女の陰部から尿が噴き出した。直樹は昨晩と同じ様に目を白黒させながら、瑞穂の尿を飲み下した。安奈とはまた違った強烈な臭いと刺激的な味が、直樹の心を打ちのめした。まるで自分が、体の内側から叩きのめされて蹂躙されているように思えた。

 幸いにも、瑞穂の排尿は直ぐに終わった。どうやら、女性に手本を見せるために、大して催してもいないのに排尿したみたいだった。瑞穂の尿をこぼさずに飲み終えた直樹がほっとしていると、彼女は一旦彼の顔を自分の陰部から引き離し、目から火花が散る程の力強い往復ビンタを張った。

「ヒイィッ」

 情けない悲鳴を上げた直樹を、瑞穂は怒鳴りつけた。

「男奴隷、何をぼんやりしてるの!おしっこを飲み終えたら、言われなくても舌で後始末するように、昨晩教えてもらったでしょう!さっさと舐めて、後始末おし!」

「…はい、分かりました」

 涙を浮かべた直樹は、舌を伸ばして尿で濡れている瑞穂の陰部を舐め始めた。昨晩玲子から受けた指導を思い出し、舌で舐めるだけではなく、唇も使って陰唇に残留している尿を吸い取った。

 瑞穂は首だけで後ろを向き、女性に話し掛けた。

「見ての通り、人間便器はとても便利よ。ビデの代わりにもなるしね…あなたも是非、使ってみて」

 瑞穂が離れると、女性が興味津々の顔つきで、正座している直樹の前に立った。女性はスカートを捲り、パンティを膝まで下げ、

「警備主任のだけじゃなくて、私のおしっこも飲んでね」

と直樹に声を掛けた。瑞穂が直樹に尿を飲ませるのを間近で見て、既に女性は彼を男と見なさず、何の恥ずかしさも感じないようだった。直樹は屈辱で顔を紅潮させて身震いしたが、それでも鞭が恐ろしく、自分から顔を近づけて女性の陰部に口を密着させた。

 直樹が女性の陰部に口を着けても、女性はしばらく排尿しなかった。彼女は男に尿を飲ませるのはさすがに初めてなので、昨晩の安奈みたいに緊張して、なかなか排尿出来ないようだった。しかし、どうかこのままおしっこが出ないで欲しいと直樹が切に願った瞬間、不意に女性の陰部から尿が迸った。尿をこぼしたらどれ程鞭打たれるか分からないと怯えた直樹は、必死に女性の尿を飲み下した。安奈とも瑞穂とも違う、強いアンモニア臭を発し、ピリピリする刺激的な味の尿が、直樹の喉を焼いて胃に溜まっていった。直樹は懸命に女性の尿を飲み続けながら、人によっておしっこの味は微妙に違うんだなと、ぼんやり考えた。

 女性の長い排尿が終わると、直樹は先程瑞穂から受けた叱責を思い出し、急いで舌と唇を使って、強い臭いがする陰部の後始末した。女性は直樹の舌と唇の感触を楽しみながら、

「うわあっ、男におしっこを飲ませるなんて初めてだけど、こんなに気持ちいいなんて知らなかったわ。病みつきになりそう!私、もう普通のトイレじゃおしっこ出来ないかも!」

と興奮した口調で、瑞穂に感想を述べた。瑞穂はニッコリ笑って、

「この男奴隷は、シェルターで掃除とかの雑用をさせるから、見かけたらいつでも人間便器に使って構わないわよ」

と女性に答えた。陰部の後始末が済むと、女性は服装を整え、足早に自分の居た元教室に戻って行った。瑞穂は、トイレの床に正座して力無くうなだれている直樹に、大声で命令した。

「男奴隷、トイレ掃除は、まだ途中でしょう!さっさと取り掛かりなさい!」

 直樹はよろよろと立ち上がり、掃除道具を手にしてトイレ掃除を始めた。直樹が体を動かすと、胃の中で女性の尿が揺れているのが感じられ、心底情けなくなった。

直樹がトイレ掃除の続きをしていると、小走りでトイレに近づいてくる複数の足音が聞こえた。直樹が足音に顔を向けると、20代後半から50代半ばまでの年齢がバラバラの4人の女性がトイレの前に立った。

「警備主任、聞きましたよ…この男は、人間便器なんですって?」

「使ったら、凄く気持ちいいそうじゃないですか。私達にも使わせて下さいよ」

「男の口におしっこするなんて、考えただけでも面白そう」

「丁度催してきたので、私の大便も食べさせましょう」

 女性達が口々に言うのを聞いた直樹は、顔が真っ青になった。瑞穂は苦笑して、女性達に答えた。

「皆さん、ちょっと待って…いくら人間便器と言っても、大便を食べさせたら内臓疾患を起こして、この男奴隷をこき使えなくなるから、口にさせるのはおしっこだけよ。それとこの男奴隷には、さっき私ともう一人のおしっこを飲ませたから、もうこれ以上は飲めないと思うわ」

 瑞穂の回答に、女性達は一斉にブーイングをした。

「そんな、警備主任ともう一人だけおしっこを飲ませるなんて、ずるいですよ!」

「そうですよ、私達にも楽しませて下さい」

「せっかく、男におしっこを飲ませられると思ったのに…」

 夫やつき合っている男のDVから避難し、シェルターに居住している女性達だけあって、男というものに憎しみを抱いているようだった。苦笑いした瑞穂は、直樹に命じた。

「男奴隷、床に仰向けになりなさい!」

 何をされるのか直樹は不安になったが、とりあえず瑞穂が命じた通りに、トイレの床に仰向けに横たわった。瑞穂は、女性達に代替案を出した。

「皆さん、飲ませる代わりに、この男奴隷におしっこを一斉に浴びせて、自分の身分を思い知らせてやって」

 女性達は面白そうな表情を浮かべると、仰向けになっている直樹の上半身の周りに立ち、スカートを捲って、パンティを下ろした。直樹には、女性達のそれぞれ陰毛に縁取られた陰唇が下から拝めたが、普通の男みたいに目の保養だと喜ぶ余裕は勿論無く、逆に女性器が自分を貶めて蔑む怪物に見えて、恐ろしくなった。

 女性達は、なかなか尿が出ないようだったが、それでも一人が不意に放尿し始めると、他の女性達も一斉に放尿を始めた。女性達は放尿の軌道を出来るだけ直樹の顔面に合わせたので、彼の鼻腔に尿が入り、ゲホゲホと咽せてしまった。咽せた際に口が開いたので、口にも尿が入り込み、更にひどく咽せてしまった。

 女性達の長い放尿がようやく終わると、瑞穂は女性達に直樹から離れるよう指示した。そして、水道のホースを使い、尿まみれでトイレの床に横たわっている直樹の体全体に強い水圧で水を浴びせて、強いアンモニア臭がする女性達の尿を洗い流した。

 水道を止めた瑞穂は、掃除道具入れから雑巾に使う古タオルを取り出し、横たわっている直樹に放り投げた。

「男奴隷、いつまでも横になってないで、起きて体を拭きなさい!」

 直樹は、今にも泣き出しそうな顔でよろよろと立ち上がり、古タオルでずぶ濡れになった髪と体を簡単に拭いた。

「男奴隷、お腹一杯でおしっこが飲めなくても、後始末くらいは出来るでしょう?皆さんに平伏して、『どうか、私の舌で後始末させて下さい』とお願いおし!」

 瑞穂に命じられた直樹は、あまりの屈辱で身震いしながらも、女性達の足元で土下座して、

「どうか…私の舌で…後始末させて…下さい…」

とつっかえながら懇願した。女性達はどっと笑い、

「そんなに私のここが舐めたいの?いやらしい男ね!」

「いいわよ、あそこに残ったおしっこを、きれいに舐め取って頂戴」

「お前は人間便器だけじゃなくて、人間ウオッシュレットにもなるんだね」

「こいつはもう、人間じゃないわよ…豚だわ、豚!」

と直樹を蔑んで、全員が尿で濡れた陰部を彼の顔に突き出した。直樹は泣き出しそうな顔で女性達の股間へ順番に顔を突っ込み、それぞれの強い臭気を発する陰部に舌を這わせ、唇で陰唇の残尿を吸い取った。

 直樹が50代半ばの女性の股間に顔を近づけたところ、彼女は急に、

「私、大の方を催しているのよ…ちょっと待っていなさい」

と言い出し、個室のトイレに籠もった。しばらくして水洗の音が聞こえ、個室のドアが開いた。50代半ばの女性は下半身を露出させたまま瑞穂に、

「警備主任、大きい方を食べさせるのは駄目でも、トイレットペーパーの代わりに使うのはいいんじゃない?」

と訊ねた。瑞穂は笑顔を見せて、

「それくらいは、全然OKよ。遠慮無く、この男奴隷を使って」

と答え、直樹の顔を蒼白にさせた。女性はトイレの床で四つん這いになっている直樹に尻を向け、自分の両手で尻たぶを拡げて、褐色に汚れた肛門を彼の顔に突き付けた。女性達は既に直樹を、男どころか人間と見なしていないようで、何の恥じらいも見せなかった。

「さあ、お前の舌で肛門の汚れをきれいに舐め取るんだよ!」

 女性に命じられて、直樹は恐る恐る彼女の尻に顔を近づけたが、大便独特の強烈な臭気が鼻に突き、とても舐める気にはならなかった。直樹が躊躇っていると、瑞穂が彼の背中に乗馬鞭を鋭く振り下ろした。

「ギャアァッ」

 背中を切り裂かれたような激痛で悲鳴を上げた直樹に、瑞穂が怒鳴りつけた。

「何をグズグズしてるんだい!さっさと舐めないと、鞭で打ち殺すわよ!」

「ヒッ、ヒィッ、舐めます、舐めますから、鞭だけは許して下さい…」

 直樹は殆ど泣き声で瑞穂に哀願し、思い切って50代半ばの女性の汚れた肛門に舌を這わせた。褐色に汚れた肛門を舐めると、舌に何とも表現出来ない臭い苦味と酸味が拡がり、口中に強烈な臭気が充満した。思わずもどしそうになったが、鞭を何より恐れている直樹は、身震いして吐き気に耐え、何も考えないよう自分に言い聞かせ、ただひたすら舌を動かした。

「うわぁ、こいつ、本当に肛門を舐めてる!」

「男のくせに、女の汚れた肛門を舐めるなんて、信じられない!」

「やっぱり、こいつは人間じゃなくて、豚だったのね…最低!」

 傍で見ていた女性達が、改めて直樹をひどく軽蔑し、口々に罵った。女性達の侮蔑と、ほんの少しであっても大便を口にしてしまったという自己嫌悪で、わずかに残っていた直樹の自尊心は完全に粉砕されてしまい、目に涙が浮かんだ。それでも直樹が懸命に舌を動かして汚れを舐め取った甲斐があって、肛門に付着している褐色の汚れが無くなり、ようやくピンク色の襞が露出した。

女性は直樹の舌使いを十分に堪能したのか、不意に腰を後ろに突き出して尻を直樹の顔面にぶつけ、彼を後ろにひっくり返した。

「いつまでもお尻を舐めてるんじゃないよ、変態の豚!」

 50代半ばの女性は、理不尽な事を直樹に言ってパンティを引き上げ、捲っていたスカートを下ろした。

「警備主任、シェルターのトイレにはウォッシュレットが付いて無いから、これからは痔の予防に、大を済ませた後はこいつを使ってもいいでしょう?」

「勿論、構わないわ。遠慮せずに使ってね」

 女性の問いに瑞穂は笑顔で答え、落胆した直樹はがっくりとうなだれた。女性達が立ち去ると、瑞穂は乗馬鞭で自分の黒革ブーツをピシリと叩き、直樹に強い口調で叱責した。

「男奴隷、さっきからトイレ掃除が全然進んでないじゃないの!さっさと掃除を済ますんだよ!」

 直樹は、瑞穂の理不尽な叱責に一言も言い返せずに、震える手で掃除道具を持つと、暗い顔で黙々とトイレ掃除を再開した。直樹の口中と鼻孔には、まだ舐め取らされた肛門の汚れの、強い異臭が充満しており、それが彼の精神を酷く苛んでいた。



 午前中はトイレ掃除で潰れ、檻を置いてある元教室に連れ戻された直樹は、昼の餌としてバケツに入った残飯を犬のように食べさせられた後、檻に入れられた。

「お前はこれから、水分補給は必要無さそうね。シェルターの女性達が入れ替わり立ち替わり、お前におしっこを飲ませてくれるでしょうから…午後からは少し運動してもらうから、今の内に休んでおきなさい」

 瑞穂は嫌な事を言い、他の女性警備員達と黒革ブーツの靴音響かせて、立ち去った。一人檻に取り残された直樹は、とりあえず体を横たえた。ここからの脱出方法をあれこれ考えたが、打撲傷や鞭痕で体が引きつって思うように動かず、体調が万全でない事もあって、良い考えは浮かばなかった。直樹は今までの疲労もあって、いつの間にか眠ってしまった。



 朝と同じように瑞穂が黒革ブーツで檻を強く蹴り、音と震動で直樹は目を覚ました。瑞穂について来た女性警備員が、檻の扉を開けた。

「男奴隷、もう午後一時になったから、昼寝の時間は終わりよ。さっさと檻から出なさい!」

 直樹が檻から這い出ると、他の女性警備員が彼の首輪にリードを取り付け、リードの端を瑞穂に手渡した。

「午後からは、校庭で運動するわよ…とっととおいで!」

 一本鞭を輪にして持っている瑞穂は、リードを引っ張って先導して歩き、直樹は慌てて這い進んだ。うっかり二本足で立つと、嫌と言う程鞭で打たれるのは、身に染みて分かっていた。女性警備員二人が四つん這いの直樹を挟むようにして、同行した。

(校庭に出された時、塀の外に向けて大声で助けを呼べば、通行人の誰かが聞いて通報してくれるかもしれない…)

 直樹は淡い期待をしたが、元校舎を出る直前、瑞穂は彼の口にボールギャグを咬ませて、しっかりと頭に固定した。これで直樹の口から叫び声は出せずに、くぐもった呻き声しか漏らせなくなった。

 夏の暑い日差しが降り注ぐ午後の校庭に出ると、まだ10代の若い少女達数名と安奈が、上衣はTシャツ、下衣はジャージでスニーカーを履いて、直樹を待ち構えていた。首輪だけの全裸で、犬のように四つん這いで瑞穂に引き回されている直樹を見て、ヤンキーの非行少女達は嬌声を上げた。

「きゃあっ、見て見て、安奈の言った通り、マジでマッパよ!」

「チョーウケル…でも、フリチンでヤバくない?」

「サイテーマゾの変態だから、全然ハズくないって」

「アタシらに見られて、逆にチョーラッキーじゃないの?」

 少女達は笑いながら四つん這いの直樹を指差し、口々に好き勝手な事を言った。10代の若い少女達にも見下された直樹は、恥辱で体が震えて顔が真っ赤になった。

「さあ、皆さん、楽しみにしていたレクレーションの時間よ…安奈、リヤカーを取って来て」

 瑞穂に指示された安奈は、元校舎の近くに置いていた古いリヤカーを、直樹の所まで持って来た。瑞穂は、直樹に命令を下した。

「男奴隷、立って両手を後ろに回し、リヤカーの取手を握りなさい!」

 直樹はよろよろと立ち上がり、瑞穂の命令通りに両手を背中の方に伸ばして、リヤカーの取手を握った。瑞穂は紐で直樹の両手とリヤカーの取手を強く結び、彼に手を放させないようにしっかりと固定した。

「じゃあ、二人ずつリヤカーに乗って頂戴」

 瑞穂は少女達に声を掛け、まず安奈ともう一人の少女がリヤカーに乗った。瑞穂は、安奈に黒光りする一本鞭を、もう一人の少女には直樹の首輪に繋がれたリードを手渡した。

「これで、即席の人間馬車が出来たわね…安奈、この男奴隷に校庭を走って回るよう、その鞭で促してやって」

 安奈は、直樹のすぐ傍の空間で鞭を振り、空中でバチンッと大きな鞭音を響かせた。

「ムグォウッ」

 鞭音に怯えた直樹は思わず悲鳴を上げたが、ボールギャグを口に咬まされているため、その悲鳴はくぐもった呻き声にしかならなかった。

「男奴隷、さっさとお走り!」

 安奈に命じられた直樹は、慌てて足を動かした。しかし、今までの打撲傷と鞭痕で体が引きつる上に、若い少女と言っても二人で体重は100s以上にはなる。直樹は懸命に走ろうとしたが、よたよたと歩いてリヤカーを引っ張るのが精一杯だった。その上、10代の少女達に馬車馬としてフリチンで使われる屈辱が、直樹の心を酷く苦しめた。

安奈ともう一人の少女は、転ばないようリヤカーの縁に手を掛けてバランスを取っていた。安奈は、直樹の歩む速度が少しでも遅くなると、

「サボるんじゃないよ!もっと速く走りなさい!」

と叱って、彼の直ぐ傍の地面を一本鞭で叩いた。鞭に怯えた直樹は、気力と体力を振り絞って、懸命に足を動かした。隣の少女が、不思議そうに安奈に訊ねた。

「ねえ、安奈、何でこいつを直接打たないの?」

 安奈は、少し考えるような顔をして答えた。

「昨日、玲子さんから指導されたのよ…むやみやたらに男奴隷を鞭打っていたら、直ぐに壊れて使い物にならなくなる。だから本当に必要な場合以外は、鞭はちらつかせて男奴隷を畏怖させ、絶対服従させる事に意義があるってね…だからまだ、鞭を直接当ててないのよ」

「フ〜ン、鞭ってガチムズイんだね」

 二人の会話を漏れ聞いた直樹は、とりあえず鞭打たれそうもないと一瞬油断し、足の動きが遅くなってしまった。その途端、風を切る音がして、背中を強かに鞭打たれた。

「ムグゥウッ」

 一本鞭による背中を切り裂かれた様な激痛と衝撃に、直樹はボールギャグを咬まされた口からくぐもった呻き声を出して、その場にうずくまった。

「男奴隷、自分が鞭打たれないと勘違いするんじゃないわよ!お前が壊れても、私は一向に構わないだからね。お前の替わりなんか、いくらでもいるのよ。分かったら、とっととお走り!」

 安奈はうずくまっている直樹を怒鳴りつけ、彼の傍の地面を再度一本鞭で叩いた。直樹は苦しそうに顔を歪め、よろめきながらも立ち上がると、ふらつく足取りで進み始めた。安奈は隣の少女に話し掛けた。

「見たでしょう…この鞭は威力が有り過ぎて、男奴隷が動けなくなっちゃうのよ。だからと言って、下手に手加減して打つと、鞭の威力を舐めて掛かる虞もあるし…だから、こいつを鞭打つのは、こいつが動こうとしなくなった時になるわね」

「なーるほど…リョーカイ」

 懸命にリヤカーを引っ張っている直樹は、とりあえず動いている間は鞭打たれなくて済みそうだとは思ったが、逆に動けなくなったら鞭打たれる事が分かり、顔が青くなった。

 2.5mの高さのスレート鉄板で囲まれて、外から見えなくなっている校庭を一周したところで、瑞穂が交代するように言った。交代した少女達に、手綱代わりにしている直樹のリードが手渡された。しかし安奈は一本鞭を、威力が有り過ぎるし扱い方が難しいと言って、渡さなかった。代わりに、女性警備員の一人が交代した少女に乗馬鞭を手渡した。

 交代してリヤカーに乗った二人の少女達は、楽しそうにはしゃいで乗馬鞭を振り回し、直樹を急き立てた。うだるような午後の熱さで、夏の強い日差しが降り注ぐ中、直樹は汗だくになってリヤカーを延々と引っ張り続けた。

 しかし、夏の焼き付けるような強い日差しと肉体の酷使で、直樹の体力と気力に限界が来た。脱水症状と熱中症の一歩手前まで追い込まれた直樹は、年若い少女達に馬車馬として使われる屈辱を感じる余裕すら無くなり、もう何人目の少女達が交代したのか、校庭を何周回ったのかも分からなくなっていた。全身に汗をかいている直樹は、瑞穂ら女性警備員達と少女達がたむろする場所に戻ったところで、目の前が真っ白になり、がっくりと膝を着いて動けなくなってしまった。

 さすがに直樹の体調の異変に気づいた瑞穂が、跪いた彼の口からボールギャグを外した。

「男奴隷、何を勝手に休んでるの?誰も休んでいいとは、言ってないでしょう…言いたい事があるのなら、言って御覧」

 瑞穂が直樹に問い掛けると、彼はかすれた声で哀願した。

「あの…喉が渇いて…死にそうで…どうか、水を飲ませて下さい…」

 瑞穂は仕方無いといった顔をして、直樹の両手をリヤカーの取手に括り付けている紐を解いた。直樹は自由になった両手を校庭に着けて、ハアハアと喘いだ。

「男奴隷、お前は人間様みたいに、普通の水が飲めるとでも思っているの?お前が飲めるのは、女のおしっこだけよ!」

「そ、そんな…」

 瑞穂に酷い事を言われた直樹は、力無くうなだれた。

「さあ、皆さんに『どうか、おしっこを飲ませて下さい』とお願いおし!」

 瑞穂に命じられた直樹は、葛藤に苦しんだ。とてもじゃないが、おしっこなんて飲みたくはない。しかし、この喉の渇きには、とても耐えられそうもない。今、水分補給をしなければ死ぬと、自分の体が訴えている。女のおしっこなら、昨晩も今日の午前中も既に飲まされた。しかし、まだ子供みたいな10代の少女達に、おしっこを飲ませて欲しいと、自分から頼むなんて…。

 瑞穂は安奈から一本鞭を受け取ると、直樹の前で一振りして、空中でバチンッと大きな鞭音を立てた。

「ヒィッ」

 鞭音に怯えて短い悲鳴を漏らした直樹に、瑞穂は大声で決断を迫った。

「男奴隷、どうするのよ?皆さんのおしっこを飲むの、飲まないの?」

「の、飲みます、皆様のおしっこを飲みます」

 鞭音が直樹の背中を押し、彼は尿を飲むと瑞穂に答えてしまった。瑞穂はニヤリと邪悪な笑みを浮かべると、

「それなら、皆さんにお願いをおし!」

と直樹に命じた。直樹は、たむろしている10代の少女達に土下座し、

「どうか、皆様のおしっこを飲ませて下さい…」

とかすれ声でお願いした。少女達はどっと笑い、

「ウッソー、マジ信じられない!ガチでおしっこ飲ませてなんて、ヤバッ!」

「チョーサイテー!こいつ、マジで人間止めたんだ」

「ガチの変態を初めて見ちゃった、マジキショイ!」

と口々に直樹を侮蔑した。少女達の侮蔑は、直樹の胸を深く抉り、死にたい気分にさせた。

「男奴隷、顔をお上げ!」

 瑞穂は土下座している直樹に命じ、彼は上体を起こした。直樹の顔は、先程までは土気色だったが、少女達に罵られた恥辱で、今は赤くなっていた。瑞穂は、安奈に声を掛けた。

「安奈、この男奴隷をどのように人間便器に使うか、皆さんに手本を見せてあげて」

 安奈は頷くと、地面に正座している直樹の前に立ち、命令した。

「男奴隷、昨日みたいに顔を上げて、口を大きく開けなさい!」

 直樹は安奈の命令通りにしたが、他の少女達の視線が気になって仕方なかった。逆に安奈は何の恥ずかしげも無く、ジャージとショーツを一緒に膝まで下ろした。そして、両手で直樹の髪を掴んで、彼の顔を自分の陰部に引き寄せた。直樹が自分の口を安奈の陰唇に密着させると直ぐに、彼女の尿が迸った。直樹は安奈の尿をこぼさないよう、慌てて喉を上下させて飲み下した。

 その様子を見物していた少女達から、派手な嬌声が湧いた。

「キャアーッ、マジ飲んでる、マジヤバイ!」

「マジでおしっこが飲めるんだ…ガチ変態!」

「チョーキショイ!やっぱ人間じゃないわ、サイテー!」

 必死に安奈の尿を飲み続けている直樹の耳に、少女達の罵声が酷く響き、底無しの奈落へ落ちていく気持ちになった。しかし、脱水症状一歩手前の体にとっては、安奈の尿はありがたかった。今までなら喉につっかえて、飲み下すのに苦労する尿が、今は滑らかに喉を通過した。それに、大汗をかいていたので、尿の少し塩辛い味が丁度良く感じられた。

 ただ、まともな人間なら飲める筈のない、強いアンモニア臭がする尿を抵抗無く飲めるなんて、自分が人間として壊れてしまい、どんどん人間便器として完成されていくようで、直樹を酷く落ち込ませた。

 安奈の排尿が終わると、直樹は躾られた通りに舌と唇を使って、尿で濡れた彼女の陰部を後始末した。少女達は、その様子を指差して嘲笑い、またも直樹を酷く罵った。

 安奈が直樹から離れ、ジャージとショーツを引き上げると、瑞穂が少女達に声を掛けた。

「皆さん、どうやってこの男奴隷を人間便器に使うか、よく分かったでしょう。ウォシュレットの代わりにもなるから、とても便利よ…誰か、この男奴隷を使いたい人はいるかしら?」

 ヤンキーの非行少女達と言っても、自分の女性器を露出して男の口に排尿するのは、さすがに抵抗があるみたいで、互いに顔を見合わせて、もじもじしていた。しかし、一人が手を挙げて、

「アタシ、トライしてみる!」

と思い切って言い出すと、群集心理なのか殆ど全員が手を挙げて、

「アタシも!」「アタシも!」

と言い出した。

 結局、直樹は少女達全員から人間便器に使われた。いくら喉がカラカラの直樹でも、全員の尿はとても飲めなかったが、胃が一杯になって飲みきれなくなると、飲んだ尿を途中で吐き、吐いては次の少女から口に排尿されるという、地獄のような悲惨な目に遭わされてしまった。



 檻に戻された直樹は、夕食の残飯を食べさせられた後、ぐったりと力無く横たわり、何とかしてここから脱出し、愛しい優香の元に帰らなければと、色々脱出方法を考えた。しかし思考が堂々巡りするばかりで、名案が全く思いつかず、女の虜囚になってしまった自分の惨めさだけを実感していた。

 無駄に時間が過ぎ、夜更けになると、瑞穂ら女性警備員達が直樹を迎えに来た。彼女らの服装は、警備員の制服ではなく、黒色のスポーツブラとボクサーパンツだったので、また格闘技の訓練で叩きのめされるのかと、恐怖で直樹の顔は蒼白となった。

 女性警備員の一人が檻の扉を開け、瑞穂が檻から出て来るよう促し、直樹は檻から這い出た。直樹の首輪にはリードが付けられ、瑞穂が先導して引っ張って行き、彼は四つん這いで懸命について行った。

 元体育館に到着すると、瑞穂達と同じ様に黒色のスポーツブラとボクサーパンツを着けた安奈が、直樹を待っていた。瑞穂は、四つん這いになっている直樹の首輪からリードを外しながら、

「安奈は警備員スタッフになりたいそうだから、今から格闘訓練を行うの…お前には安奈の練習相手になってもらうわ」

と彼に告げた。

「男奴隷、早くお立ち!」
 
 瑞穂に命じられた直樹は、少しよろめきながらも立ち上がった。すると、他の女性警備員達が直樹の両手を後ろに回し、素早く手錠を掛けた。両足首にも、間の鎖の長さが50p位の手錠、いや足錠を掛けられた。

安奈が、総合格闘技用のグローブとキックボクシング用のサポーターを着けると、直樹は2mの間合いで彼女と対峙させられ、二人の周りを瑞穂ら女性警備員達が取り囲んだ。昨日と同じ、勝負から逃げようとする者を強引に押し戻す、ランバージャック方式だ。

「安奈は全くの格闘技初心者だから、男のお前とスパーリングするのにハンデを付けさせてもらったわ。お前も遠慮無く安奈と戦いなさい…それじゃ、ファイト!」

 遠慮無く戦えと言われても、後ろ手錠を掛けられ、両足も鎖で繋がれていては、何も出来ない。直樹が困惑していると、安奈が近づいて、急に右のボディブローを繰り出した。

「グオッ」

 不意にみぞおちを殴られた直樹が、呻き声を漏らして体を曲げると、安奈の左ショートフックが直樹の突き出された顎の先をかすった。直樹の頭に震動が強く伝わり、彼は脳震盪を起こして床に崩れ落ちた。


「お見事よ、安奈!さっきパンチのコンビネーションを教えたばかりなのに、素晴らしいわ。格闘技の才能があるのね」
 

 瑞穂は手を叩いて安奈を褒めちぎり、彼女は照れたように少し顔を赤らめた。瑞穂は床に倒れた直樹の上体を起こし、彼の背中に膝を強く押し当てて、柔道の活を入れた。

「男奴隷、直ぐにダウンしたら、練習にならないでしょう!さっさとお立ち!」

 瑞穂に髪を掴まれ、強く上に引っ張られた直樹は、ふらつきながらも何とか立ち上がった。

「安奈、次はキックのコンビネーションを試してみて」

 安奈は頷くと、直樹の左腿に右のローキックを放った。

「ギャアッ」

 太腿を強く蹴られた痛みで悲鳴を上げ、膝を折りそうになった直樹のみぞおちに、安奈の左前蹴りが入った。

「グボオゥッ」

 呻き声を漏らして前屈みになった直樹の左顔面に、安奈の右回し蹴りが決まった。直樹は悲鳴も上げられずに、床に倒れた。瑞穂は同じように拍手して、安奈を褒め讃えた。

「安奈、凄いわ!初心者でこれだけ滑らかに動けるなんて、本当に大したものよ。これなら、立派に警備員スタッフが務まるわね」

 気絶する一歩手前で床に倒れている直樹を、他の女性警備員達が引き起こし、激しい往復ビンタを浴びせて気合いを入れた。

「寝転がってないで、しっかり立つんだよ!」

「横着に寝ていたら、安奈の練習にならないでしょう!」

「次に寝転がったら、鞭で打つからね!」

 女性警備員達に怒鳴られた直樹は、特に鞭という単語に反応し、ふらふらしながら気力で立った。

「じゃあ、安奈、今度はパンチとキックを組み合わせて、攻撃してみて」

 瑞穂に指示された安奈は、すっかり自信をつけた目で直樹を見据えた。直樹は口惜しさで、目に涙が浮かんだ。

(畜生、手足が拘束されてなければ、こんな小娘にいいようにされないものを…)

 直樹は、元プロ格闘技選手の瑞穂ら女性警備員達にはとても敵わないが、まだ17歳で素人の安奈になら、さすがに男の自分が楽に勝てる自信はあった。しかし、手足を拘束されていては、安奈から好き勝手にパンチとキックを浴びせられる、惨めな人間サンドバッグ状態だった。

 瑞穂に褒められてすっかり自信をつけた安奈は、緊張が解けて無駄な力みが無くなり、流れるようなコンビネーションでパンチとキックを次々と直樹に打ち込み、繰り返し彼を倒した。直樹は何度も安奈に倒されては、女性警備員達から無理やり引き起こされたが、遂に引き起こされても足に力が入らず、床にへたり込んでしまった。瑞穂は、

「仕方無いわねぇ…」

と呟くと、一本鞭を手にして、へたり込んでいる直樹を強かに鞭打った。

「ギャアァーッ」

 焼けた刃物で体を切り裂かれた様な激痛に、直樹は獣じみた絶叫を上げ、身悶えして苦しんだ。

「男奴隷、さっさと立ち上がらないと、鞭で打ち殺すわよ!」

 瑞穂に怒鳴られた直樹は、すすり泣きながらも気力で何とか立ち上がった。安奈は、立ち上がった直樹のみぞおちに腰の入ったフックを叩き込み、呻き声を上げて体をくの字に曲げた彼の顎に、強力な膝蹴りを突き上げた。強い衝撃を顎に受けた直樹は、脳震盪を起こして視界が真っ暗になり、床に崩れ落ちて、そのまま失神してしまった。



 直樹は、瑞穂が黒革ブーツで檻を蹴った音と震動により、目を覚ました。周囲はすっかり明るくなっており、既に朝になっていたようだった。

「全く、安奈の格闘訓練でお前が気絶したまま、目を覚まさなかったから、私達がわざわざ担架で檻まで運んであげたんだよ…少しはありがたく思いなさい!」

 瑞穂に大声を出された直樹は、打撲傷で引きつり軋む体を無理に動かし、檻の中で土下座して、瑞穂に謝意を述べた。

「瑞穂様、私を運んで下さり、真にありがとうございます…」

 自分を散々痛い目に遭わせた瑞穂に、土下座して礼を言うのは、胸が掻きむしられる程の屈辱だったが、礼を言わなければ鞭が飛んで来る虞があった。

 瑞穂について来た女性警備員達が檻の扉を開け、元教室の床に残飯が入ったバケツを置いた。

「もういいから、とっとと檻を出て、朝の餌を食べなさい!」

 瑞穂に命じられた直樹は、よたよたと檻から這い出て、そのままバケツに顔を突っ込み、グチャグチャの残飯を食べ始めた。直樹が残飯を食べ終えると、首輪にリードを取り付けられ、近くのトイレに這って行かされた。便器の水で洗顔させられてから、瑞穂ら女性警備員達の監視の下で、恥辱の排泄を強いられた。

 朝の屈辱にまみれた日課が終わり、直樹は檻のある元教室に戻ろうとしたが、瑞穂に強くリードを引っ張られて、停められた。

「男奴隷、どこへ行くんだい?お前の行き先は、こっちだよ」

 瑞穂は逆方向にリードを引いて先に歩き、首輪で喉を圧迫された直樹は、慌てて四つん這いでついて行った。他の女性警備員達は、その後に続いた。

 瑞穂は、他の元教室の扉を開けて、直樹を引き入れた。そこには、昨日の午前中に直樹を人間便器にしたり、尿を浴びせたりした20代後半から50代半ばの女性達が、期待に目を輝かせて彼を待ち構えていた。瑞穂は、不安そうな顔をしている直樹に説明した。

「男奴隷、今からお前の舌で、皆さんをお慰めするのよ…つまり、バター犬になるの。心を込めて、しっかりと舌奉仕おし!」

 真っ青になった直樹の首輪に繋がれているリードを、瑞穂は50代半ばの女性に手渡した。リードを受け取った女性は、直樹の目の前で何の恥じらいも無く、手早くスカートとパンティを脱ぎ捨て、濃い陰毛に縁取られた陰部を露出した。他の女性達もさっさと下衣と下着を脱ぎ、下半身裸となった。昨日直樹を人間便器に使ったためか、女性達は誰も彼を、男どころか人間とすら見なしてないようだった。

 50代半ばの女性は、椅子に浅く腰掛けて両脚を開き、リードを強く引っ張って、直樹の顔面を自分の陰部に引き寄せた。

「えーと、お前の事は、男奴隷と呼ばなくちゃいけないのよね…男奴隷、早くお舐め!」

 直樹は泣きたい気持ちで、女性の陰部に顔を埋めた。密集した濃い陰毛を鼻でかき分け、既に興奮しているのか、赤く充血してめくれている陰唇に舌を這わすと、熟女独特の咽せ返るような強烈な臭いが口中に拡がり、鼻孔の奥まで届いて、直樹の頭をクラクラさせた。

 ここでこの女性を満足させられなかったら、鞭で死ぬ程打たれると本能的に察した直樹は、一生懸命舌を動かし、強い臭いを発している陰唇を舐め回した。次々に溢れ出て来る臭いのきつい淫液が口に入り、思わず吐き気を催したが、体を震わせて耐え、何とか飲み込んだ。直樹は、舐めるだけではなく唇も使い、興奮して肥大したクリトリスを吸いながら舌先でつついたりして、女性を喜ばす事に集中した。

「うわぁっ、この男奴隷、夢中で女のあそこを舐めてるわ!」

「ひょっとして、本当に犬の生まれ変わりじゃないの?」

「人間便器にもバター犬にも使えるなんて、凄く便利ね」

「私も、自分専用の男奴隷が欲しくなっちゃったわ」

 周りの女性達が好き勝手な事を言っているのを聞いた直樹は、怒りと屈辱で顔を赤くして、身震いした。しかし今の彼には、舌奉仕に集中して、目前の女性に満足してもらう事しか出来なかった。

 直樹の懸命な舌奉仕のおかげか、50代半ばの女性は背を仰け反らせて、絶頂に達した。彼女は、そのまましばらく余韻に浸りたかったようだが、他の女性達から催促を受けて席を立ち、些かふらつく足取りで直樹から離れた。

 次に直樹の前の椅子に座ったのは、40代前半の女性で、彼女は両脚を開きながら、

「さあ、私も気持ちよくさせるのよ!」

と言ってリードを引っ張り、直樹の顔面を自分の陰部に密着させた。直樹は、この調子で女性達全員に舌奉仕したら、舌が擦り切れてしまうんじゃないかと、本気で心配した。しかし、瑞穂ら女性警備員達の監視下では手を抜く事は許されず、おずおずと舌を伸ばし、既に興奮してぬめっている女性の陰部を舐め始めた。前の女性に負けず劣らず強い臭いを発する陰部に顔を埋めて、懸命に舌を動かしている直樹は、女性によってそれぞれ臭いが違うんだなと、ぼんやり考えた。

 舌奉仕に励んでいる直樹の横で、瑞穂が女性達に何やら話し掛けていた。

「皆さんは、一度でいいから男をレイプして辱めてやりたいと、以前言っていたでしょう…だから、いいオモチャを持って来たわ。是非、使ってみて」

 瑞穂が女性達に言うと、傍らの女性警備員が手提げ袋からペニスバンドを取り出し、女性の一人に手渡した。女性達の嬌声が上がり、その様子を横目でチラリと見た直樹は、それがどのように自分に使われるかを瞬時に察して、顔面が蒼白となった。

 それでも懸命に舌奉仕を続けている直樹の後ろから、ワセリンの缶を手にした女性警備員が近づいて来た。彼女は缶の蓋を開けると、ワセリンを多めに指で掬い取り、それを直樹の肛門に塗り込んだ。

「アヒィッ」

 肛門に感じた異様な感覚に、直樹は思わず声を出し、舌の動きが止まった。すかさず40代前半の女性から頭を叩かれ、

「男奴隷、サボるんじゃないわよ!」

と怒られた。

 直樹が泣きそうな顔をして舌を動かしていると、20代後半の女性がペニスバンドを腰に装着し、彼の後ろに廻った。四つん這いになって舌奉仕している直樹の尻の高さに合わせて、女性は膝を床に着け、ペニスバンドのディルドゥ部分先端を、彼の肛門に宛った。20代後半の女性が両手で直樹の腰をしっかりと掴み、力を込めて自分の腰を突き出そうとすると、直樹は舌の動きを止め、

「ヒィッ、止めてくれ!」

と大声を出して括約筋に力を入れ、出来る限り肛門を窄めた。その途端、瑞穂から乗馬鞭の鋭い一撃を背中に受けた。真っ赤に焼かれた鉄棒を背中に押し付けられた様な激痛に、直樹は悲鳴を上げて、体を硬直させた。

「男奴隷、舌奉仕をサボるんじゃないって、さっき注意されたばかりでしょう!それと、皆さんがわざわざお前のお尻を可愛がってくれるんだから、もっと力をお抜き!」

 瑞穂に大声で叱責された直樹は、泣く泣く舌の動きを再開し、括約筋の力を緩めた。20代後半の女性が力強く腰を突き出すと、肛門に塗り込められたワセリンのおかげか、ペニスバンドのディルドゥ部分がすんなりと直樹の肛門に挿入された。

「アヒイィッ」

 肛門を犯された異様な感覚に、直樹の口から悲鳴が漏れ、舌の動きが一瞬止まった。しかし、乗馬鞭の激痛を思った直樹は、慌てて舌を動かし始めた。

 20代後半の女性は、最初はゆっくりと腰を前後に動かしていたが、気分が乗ってきたのか、段々と腰の動きが速くなった。神経が集中している肛門を犯され直腸を擦られて、直樹は悶え苦しんだが、それでも舌の動きを止める事は許されなかった。

 男の自分が、女から肛門を犯されながら、バター犬扱いで女の陰部を舐め回さなければならないのは、気がおかしくなる程の屈辱だった。しかし、直樹は瑞穂から鞭打ちを受けないために、涙をぼろぼろこぼしながら、必死に舌を動かした。

 直樹の必死な舌奉仕のおかげか、40代前半の女性は喘ぎ声を立てて、絶頂を迎えた。それに合わせて、ペニスバンドを装着していた20代後半の女性も、腰を引いて直樹の肛門からディルドゥ部分を引き抜き、立ち上がった。20代後半の女性は、自分の腰からペニスバンドを外すと、50代半ばの女性に手渡した。

 次は30代前半の女性が、待ちかねた様に直樹の前の椅子に座って、両脚を拡げた。50代半ばの女性が腰にペニスバンドを装着し、直樹の後ろでしゃがむと、彼女はある事に気がついた。

「あらっ、お前、ひょっとして興奮してるの?」

 ペニスバンドのディルドゥ部分で前立腺を刺激されたためか、直樹の股間のものはいつの間にか、硬く屹立していた。

「お前は、私達のあそこを舐めて、興奮したの?それともお尻を可愛がられて、感じて勃起したの?ひょっとして、ホモの経験があるんじゃない?どっちにしても、最低の変態だね!」

 50代半ばの女性から蔑まれた直樹は、恥辱で顔を紅潮させ、体を震わせた。

「ちょっと、男奴隷、やっと順番が来たんだから、早く舐めなさいよ!」

 椅子に腰掛けた30代前半の女性から催促され、直樹はおずおずと女性の開いた両脚の間に顔を埋め、舌を伸ばして強い臭いがする陰部を舐め始めた。

 それと同時に50代半ばの女性は、直樹の肛門にペニスバンドのディルドゥ部分先端を宛い、腰を力強く突き出した。既に前の女性から犯されていた直樹の肛門は、ディルドゥ部分を滑らかに飲み込んだ。肛門を犯されるのに慣れる筈が無い直樹は、短い呻き声を漏らし、身悶えして苦悶の表情を浮かべた。それでも瑞穂からの鞭打ちを恐れ、舌を動かす事に専念した。

 ペニスバンドを装着した50代半ばの女性は、両手で直樹の腰を掴み、しばらく自分の腰を前後に揺らしていたが、ふと思いついた様に彼の股間へ右手を伸ばし、硬く屹立しているものを握った。

「お尻を犯されて喜んでいる変態さん、もっと気持ちよくさせてあげるわよ」

 50代半ばの女性は直樹にからかうような口調で言うと、腰の動きに合わせて、彼の硬く勃起しているものをしごき始めた。

「アァッ」

 直樹は短い悲鳴を上げ、舌の動きが瞬間止まったが、慌てて直ぐまた舌を動かした。

「ほらほら、どうだい?気持ちいいでしょう?」

 50代半ばの女性は、直樹へ嘲るように訊ね、腰と手の動きを速めた。直樹は、自分の下半身部分が感じないよう舌奉仕だけに集中しようと、死に物狂いで舌を動かした。

 しかし、唐突に限界がやって来た。不意に脊髄に電流が走って脳まで到達した様な感覚に襲われて、直樹の下半身が小刻みに震え、彼の口から喘ぎ声が出て、しごかれて極限まで硬く怒張したものから、夥しい白濁液を床に迸らせてしまったのだ。そして、直樹が死に物狂いで舌を動かした甲斐があったのか、彼の射精と同時に30代前半の女性も絶頂を迎えた。

 50代半ばの女性は腰を引いて、ディルドゥ部分を直樹の肛門から引き抜くと立ち上がり、ベニスバンドを腰から外した。30代前半の女性は気だるそうに椅子から立ち上がり、ややふらつく足取りで直樹から離れた。

「アハハハ、男のくせに女から肛門を犯され、感じて射精するなんて、本当に最低の男奴隷だね…やっぱりお前は、ホモにオカマを掘られた経験があるんでしょう、この変態の舐め犬!」

 瑞穂に嘲笑された四つん這いの直樹は、がっくりとうなだれた。はらわたが煮えくりかえる思いであったが、肛門を犯されて射精してしまったのは事実で、それを指摘された直樹は心底落ち込んだ。

 しかし、直樹にゆっくり落ち込ませてあげる程、女性達は優しくなかった。20代後半の女性が直樹の前の椅子に座り、40代前半の女性が腰にペニスバンドを装着して、彼の後ろに廻った。

 女性達は、陰部を舐めさせるのとペニスバンドで責め立てるのを、順次交代して楽しみ、直樹は屈辱の射精を三度も強制させられた。そして、女性達が飽きて疲れるまで直樹は嬲り抜かれ、最後に彼は床に放出した自分の精液を全て舐め取らされた。直樹は落ちるところまで落ちたと、とことん惨めな気持ちにさせられてしまった。



 午前中、女性達に嬲られて辱められた直樹は、昼の餌としてバケツに入った残飯を食べさせられた後、精神的にも肉体的にも疲れ果てて、檻の中でぐったりと横たわっていた。

 午後から何をされるのか、直樹は不安で全く落ち着けなかった。瑞穂ら女性警備員達から格闘訓練と称して袋叩きにされるのか、安奈の女王様研修として酷く虐待されて辱められるのか、ヤンキーの非行娘達から虐められて嬲りものにされるのか…リボンのシェルターに潜入して捕まり、女の虜囚となってまだ二日半であったが、こんなに短期間で人間の気力と体力が削ぎ取られるとは、直樹には想像もつかなかった。まだ自分の精神に異常を来してないのが、不思議なくらいであった。

 今の直樹には、何とかしてここから脱出し、愛する優香の元へ帰るという目標だけが、唯一の心の支えとなっており、それがかろうじて彼を正気に保たせていた。

 檻の中で横たわっている直樹が、優香の事を色々考えていると、乗馬鞭を手にした瑞穂と二人の女性警備員達がやって来た。

「男奴隷、もう午後2時だよ。さっさと出て来なさい!」

 瑞穂に命じられた直樹は、泥の様に重く感じる体をだるそうに動かし、開けられた檻の扉からもそもそと這い出した。

「体育館に行くわよ。とっととついておいで!」

 瑞穂はさっさと元体育館に向かって歩き出し、直樹は急いで這ってついて言った。その後を女性警備員達が続いたが、今更誰も直樹の首輪にリードを付けようとはしなかった。

 元体育館の出入口に到着し、誰が自分を待ち構えているんだろうと、直樹は不安でしょうがなかったが、中に入ると誰もいなかった。瑞穂は元体育館の床中央を指差し、

「男奴隷、そこで頭を出入口に向けて、平伏しなさい!」

と直樹に命令した。直樹が命じられた通りにすると、瑞穂は彼に説明し始めた。

「今から、新しくリボンのスタッフになる女性が来るのよ。お前は男奴隷として、新人の女性スタッフにも礼を尽くさなければならないわ。だから、私がよしと言うまで、顔を上げずにそのままの姿勢でいなさい。そして、新人スタッフがお前の前に立ったら、私が挨拶するように言うから、丁寧に挨拶を述べるのよ…」

 直樹は土下座した格好のまま、床を見つめながら瑞穂の説明を聞き、漠然と考えた…どんな女性が来るのか、新人の女性スタッフに自分を虐めさせて、男に対する自信をつけさせるのか、その女性からどんな屈辱を受ける羽目になるのか…瑞穂の説明は続いた。

「…挨拶の口上は、こうだよ。『お待ちしておりました。私は変態マゾの男奴隷です。私は女性に虐められるのが、何よりの喜びなのです。お願いですから、どうか私を虐めて下さい』ってね。さあ、言ってごらん!間違えるんじゃないよ!」

 直樹は土下座の姿勢を保ったまま、些か震えた声で瑞穂から言われた挨拶の口上を述べた。つっかえたり、言い間違えたりすると、すかさず瑞穂の乗馬鞭が背中に振り下ろされ、悲鳴を上げさせられた。そのために直樹は、嫌でも集中して挨拶の口上を覚え、三回目には淀みなく話せるようになった。

 満足した瑞穂は傍らの女性警備員に、新人女性スタッフを呼んで来るよう指示した。元体育館を出た女性警備員は、直ぐに人を連れて戻って来た。コツコツと複数の足音が近づいて来るのが聞こえた直樹は、土下座の姿勢で顔を床に向けたまま、上目遣いでちらりと前を見た。すると赤いハイヒールと黒革ブーツが近づいて来るのが、彼の目に入った。直樹の前で足音が止まると、瑞穂が、

「男奴隷、ご挨拶おし!」

と命令した。直樹は、瑞穂からお仕置きの鞭を受けないように注意して、

「お待ちしておりました。私は変態マゾの男奴隷です。私は女性に虐められるのが、何よりの喜びなのです。お願いですから、どうか私を虐めて下さい」

とはっきりした口調で、滑らかに挨拶の口上を述べた。

「よし、男奴隷、顔をお上げ!」

 瑞穂に命じられた直樹は、長く続けさせられた土下座の姿勢からようやく解放され、上体を起こしてほっと一息ついた。しかし、前を見た瞬間、驚愕で目を見開いた。赤いハイヒールを履いていたのは、白色ブラウスにえんじ色スカート姿の、リボン代表である雅美だったが、黒革ブーツを履いていたのは、ダークグレイの警備服に身を包んだ、優香だったのだ。

 愛する優香の顔を見た直樹は、彼女が自分を助けて、迎えに来てくれたのかと一瞬思ったが、警備員の制服を着ている理由が分からなかった。

「優香、何でここに?それに、その格好は…?」

 驚いた直樹は優香に訊ねたが、彼女の返事は目が眩む程の激しい往復ビンタだった。

「ヒイィッ」

 悲鳴を上げ、両手で往復ビンタを張られた両頬を抑えた直樹を、優香は怒鳴りつけた。

「何でじゃないわよ!直樹さんが…いえ、お前がアパートに二日も戻って来なかったから、今朝このリボンのシェルターを訪ねたのよ。そしたら、こちらの仁科代表から、お前はマゾの変態で、自分から奴隷志願してここに住み着いていると説明されたわ。その証拠として、お前が若い女の子に頼んで、虐めて貰っている動画を見せられたのよ!」

 自分が変態マゾに見えるように、都合よく編集された、安奈の女王様研修の動画か…直樹はうつむき、内心歯ぎしりした。優香の罵声は続いた。

「自分が変態マゾなのを隠して、私と一緒に住んでいたなんて、それだけでも許せないのに、お前が私の事をどう思っていたのかを教えられて、死にたくなる程ショックだったわ!」

 優香の隣に立っていた雅美が微笑みを浮かべて、床に全裸で正座している直樹に、スマホを突き付けた。スマホの液晶画面には、直樹の上半身が映っており、『優香はセックス付きの家政婦として、アパートに住まわせているだけで、結婚は全く考えてない』『どうせ優香に自分のマゾ趣味は理解出来ないから、どちらにしても結婚は無理』『元々優香なんか愛してないし、その内風俗で働かせて金を貢がせるつもり』『優香には行く所が無いから、風俗で働けと言われても断れない』等々、優香について酷い事を喋っていた。

「ち、違う、優香、僕はこんな事は言ってない!これは捏造だ、ディープフェイクだ!」

 直樹は焦って、優香に訴えた。おそらく、リボンのスタッフでパソコン関係に詳しい者か、またはどこかのIT関連の会社に生成AIで作らせたものだろう。雅美は都合よく編集した動画とディープフェイクを優香に見せて、直樹との仲を引き裂こうとしているのだ。

 直樹は、何とか優香の誤解を解くために、これまでの経緯を説明しようとした。しかし、直樹が説明する前に、またも彼女から強烈な往復ビンタを張られた。

「ヒイィッ」

「誤魔化そうとするんじゃないわよ!たった今、私の目の前で、私は変態マゾです、女に虐められるのが喜びです、どうか虐めて下さいと、言ったばかりじゃないの!」

 優香に怒鳴りつけられた直樹は、瑞穂が自分に奴隷の挨拶を厳しく強要した理由が、ようやく理解出来た。編集した動画とディープフェイクを見せた優香に、彼女の目の前で直樹自身の口から奴隷の挨拶をさせる事で、直樹が身勝手な変態マゾだと完全に信じさせる為だったのだ。

 嵌められた…おそらく、優香の愛と信頼を取り戻すのは無理だろうと悟った直樹は、全身の力が抜けて、がっくりとうなだれた。気落ちした直樹に、雅美が勝ち誇った口調で説明した。

「お前に裏切られていたのを知って、ひどく落ち込んだ優香さんの相談に乗ったら、私と似たような不遇な家庭環境で育った事が分かってね…優香さんに、私はもう行く所が無いと泣かれたから、リボンの住み込みスタッフとして採用する事にしたのよ。初日は警備員スタッフの研修をするため、わざわざ警備員の制服に着替えてもらったの。相手は勿論、男奴隷のお前よ」

 直樹は、唯一の心の支えであった愛する優香を自分から取り上げられ、更にその愛する優香の手で自分が虐待されるのを無念に思い、歯噛みして口惜しがった。雅美は、瑞穂に指示した。

「それじゃ、松村主任、優香さんにコーチしてあげて」

「はい、仁科代表、了解です」

 瑞穂はきびきびと返事をすると、優香に黒光りする一本鞭を手渡した。

「優香さん、手首を柔らかくして、肩に力を入れないで、腕を振ってみてね」

 瑞穂のアドバイスを受けた優香は、首輪だけの全裸で床に正座している直樹に向き直ると、一本鞭を持った右手を、頭上まで振り上げた。

「直樹さん…いいえ、変態マゾで男奴隷のお前に、女の怒りを思い知らせてやるわ!」

 直樹に大声を出した優香は、右腕を素早く振り下ろし、彼の体に思い切り一本鞭を叩きつけた。風を切って直樹の体へ袈裟懸けに絡みついた一本鞭は、真っ赤に焼けた日本刀で体を切り裂かれた様な激痛と、内臓まで響く衝撃を彼に与えた。

「ウギャアァーッ」

 直樹は喉が張り裂ける様な絶叫を上げ、両手で頭を抱えて、床に横倒しとなった。優香は、倒れた直樹へ更に一本鞭を振るった。直樹は又も絶叫を上げ、這って鞭から逃げようとしたが、あまりの激痛で体が硬直して、動けなかった。

「私の心の痛みは、こんなものじゃないのよ!」

 優香は、次々と直樹の体に一本鞭を打ち込み、彼に悲鳴を上げ続けさせた。顔を赤くして目を吊り上げ、直樹の体に鞭の雨を降らせる優香の姿には、鬼気迫るものがあった。可愛さ余って憎さ百倍と言うが、愛する男に裏切られたと思い込んでいる優香は、一片の情け容赦も無く直樹を一本鞭で叩きのめした。

 優香が直樹を十二、三回鞭打ったところで、さすがに彼の命を心配した瑞穂が、ストップを掛けた。

「優香さん、もういいわ、それぐらいにして…これ以上鞭打つと、男奴隷が壊れて、使いものにならなくなるから」

 優香は、はっと気がついたように、鞭を振るう手を止めた。

「ごめんなさい、つい逆上しちゃって…」

 少し息を乱した優香が恥ずかしそうに言うと、瑞穂は笑顔で彼女を褒めた。

「いえいえ、見事な鞭捌きだったわ。今日初めて鞭を使ったなんて、信じられないくらいよ。優香さんにはきっと、鞭の才能があるのね」

「いえ、そんな…」

 赤い条痕が体中を縦横無尽に覆い、息も絶え絶えで床に横たわって、二人の会話を聞いていた直樹は、鞭打たれた痛みと度を超えた屈辱で、目から涙が溢れた。リボンのシェルターで女の虜囚となり、色々な女性達から散々鞭打たれたが、愛する優香から受けた憎しみの鞭は、心底骨身に応えた。

 瑞穂は他の一本鞭を持って来て、横たわっている直樹の傍の床を叩き、大きな鞭音を響かせた。

「ヒィッ」

 瑞穂は、鞭音に怯えて悲鳴を漏らした直樹に、大声で命令した。
  「男奴隷、いつまでも横着に寝てるんじゃないよ!これ以上鞭打たれたく無かったら、優香さんの足元に平伏して、慈悲を請いなさい!」

 直樹は焦って、鞭痕で引きつる体を無理に動かし、よろよろと優香の足元で土下座した。そして彼女が履いている黒革ブーツの爪先にキスしながら、

「優香様、お願いします…もうこれ以上、鞭打たないで下さい…鞭だけは、お許し下さい…お願いです、何とぞ御慈悲を…」

と卑屈に哀願した。愛し合い同棲した優香に対して、こんな惨めな哀願をするのは、胸が張り裂ける程の屈辱であったが、鞭に怯えきっている今の直樹にとっては、鞭打ちから逃れる事が何よりも最優先された。

 だが、平伏して自分のブーツにキスしながら、卑屈な哀願を繰り返す、直樹の見苦しい姿を見下ろしている優香の胸中には、どす黒い業火が燃え広がっていた。

(こんなに醜悪で最低な変態マゾ男を好きになって、結婚を夢見ていただなんて…)

優香は、肥溜めで蠢いているうじ虫を見るような目つきで直樹を見下し、彼の頭にペッと唾を吐くと、黒革ブーツでその頭をグリグリと踏みにじった。
 

「お前みたいな最低の変態を好きになり、一緒に暮らして体まで許してしまっただなんて、自分に腹が立つわよ!私の人生の中でも最大の汚点で、真の黒歴史だわ!お前なんか、この鞭で打ち殺して、この世から抹消してやる!」

 優香に怒鳴られた直樹は、彼女のブーツの下で恐怖に震え上がった。優香は怒りにまかせて一本鞭を振り上げたが、これは瑞穂が慌てて止めた。

「優香さん、待って、少し落ち着いて…優香さんの腹立たしい気持ちは分かるけど、この男奴隷にこれ以上の鞭打ちは、さすがに限界よ。お願いだから、気を静めて頂戴」

 瑞穂が鞭打ちを止めてくれたので、直樹は優香のブーツの下で、ほっと安堵した。しかし、瑞穂がこんなに優しい筈は無かった。

 振り上げた一本鞭を下ろした優香が、直樹の頭から黒革ブーツを外すと、瑞穂が次のアドバイスをした。

「優香さん、男を辱めるのなら、鞭打ち以外にも色々と方法はあるわ…とりあえず、この男奴隷を人間便器にして、優香さんのおしっこを飲ませてやりましょう」

 直樹は顔色を変え、思わず上体を起こした。これまで色々な女性達から尿を飲まされたが、よりによって愛する優香の人間便器にされるなんて…直樹は一瞬、瑞穂に拒絶しようかと思ったが、彼女が手にしている一本鞭を見て、口をつぐんだ。

「えっ、人間便器ですか…それは、ちょっと…」

 優香は戸惑って躊躇う素振りを見せたが、瑞穂はねばり強く説得した。

「優香さんは、この男奴隷に酷く裏切られたんでしょう?鞭打って痛い目に遭わせただけじゃ、まだ足りないわ。こいつにおしっこを飲ませてやり、自分は人間じゃなく、犬畜生以下の最低の便器なんだと思い知らせて、とことん貶めてやりましょうよ。人間便器の扱い方は、動画で見たでしょう?」

 優香は、まだ少し躊躇ったが、直ぐに決心した顔つきになり、大きく頷いた。

「分かりました…この男奴隷を人間便器に使います!」

 優香は凛とした声で答えて、瑞穂は喜んだが、直樹は気落ちしてがっくりとうなだれた。

「優香さん、決心してくれて嬉しいわ…男奴隷、何をぼんやりしてるの!とっとと顔を上に向けて、口を大きくお開き!今まで大勢の女性のおしっこを飲んできたくせに、私にいちいち言わすんじゃないよ!」

 優香の足元で正座している直樹は、瑞穂に大声で命じられて、今にも泣きそうな表情で顔を上に向け、口を開いた。直樹の上向いた顔を汚らわしそうに見下した優香は、安奈のように彼の開いた口にペッと唾を吐いた。それから、制服のベルトをカチャカチャと音を立てて緩め、ズボンとパンティを一緒に膝まで下げた。優香は両手で直樹の髪を掴んで引き寄せ、彼の開いた口を自分の陰部に密着させた。

 直樹が愛する優香の陰部に口を着けるのは、同棲していたアパートでセックスする際に数限りなくあったが、この様な形で彼女の陰部に口を着けさせられるのは、屈辱の極みだった。

 優香は直樹の目を、じっと見つめた。直樹は目を逸らせたかったが、何かを決意したような優香の力強く輝く瞳に吸い込まれるように、視線を外す事が出来なかった。優香が、直樹に言い聞かせるように告げた。

「男奴隷…いえ、直樹さん。私は今から直樹さんを人間便器にして、おしっこを飲ませるわ。私にとって、これで直樹さんは人間じゃなくなり、汚らしい最低の便器になるのよ。私のおしっこは直樹さんと私の、別れの水盃だわ。私のおしっこを残さずに飲んで、私との思い出は体の中から全て洗い流して、きれいさっぱりと消し去って頂戴…いくわよ!」

 優香の陰部が僅かに震え、陰唇から尿が迸った。直樹は優香の強いアンモニア臭がする尿を飲みながら、目から涙を滾々と流していた。直樹は、優香が自分に尿を飲ませる事で、彼女が本気で自分と決別するのが分かり、唯一の心の支えを完全に失ってしまった。

 優香の排尿が終わると、直樹は今まで仕込まれた通りに、殆ど条件反射で舌と唇を使って、彼女の尿にまみれた陰部の後始末をし始めた。その様子を見ていた雅美は、笑いながら直樹に告げた。

「お前は、同棲していた優香さんの人間便器にまで落ちぶれたんだね…今日からしばらく優香さんには、お前専属の看守係をしてもらうわ。優香さんの人間便器だけじゃなく、バター犬や人間馬にも使って貰いなさい。少しでも口答えしたり、逆らったりしたら、お前の大好きな鞭が待っているわよ…それと優香さんの補佐役として、常に松村主任に付き添ってもらうから、何の心配も要らないわ。優香さんと松村主任は、このシェルターの住み込みスタッフだから、お前は24時間優香さんの調教を受けられるのよ。嬉しいでしょう?オホホホ…」

 愛する優香との仲を引き裂き、その優香に自分を虐めさせる雅美の陰湿なやり方に、直樹は怒りで体が震えた。しかし今は、舌と唇を使って優香の陰部の後始末に専念する事しか出来なかった。雅美の勝ち誇った笑い声が、舌を懸命に動かしている直樹の頭の中で虚ろに響き、彼の今まで築き上げてきたものが、全て崩れ落ちたような気がした。リボンのシェルターから二度と外に出られず、女の虜囚として優香に虐められて過ごすこれからの日々を思うと、直樹は自分が二度と這い上がれない奈落の底に落ちていくように感じられたのだった。



終わり