前編
 私は宇佐美 絵梨、平凡で夫思いの良い妻だった。つい2週間前までは・・・・・・
 絵梨は都心から少し離れた住宅街に住む30歳の女性、この家は夫と結婚する時に買ったものだ。その夫の文也とは1年半前に結婚をしてすぐにここに住居を構えたのである。
 夫の文也は35歳だが一流企業の部長である、その彼の部署にいた彼女は全く女性のうわさのなかった彼に勇敢にアタックして妻の地位を得たといっても過言ではなかった。
 彼は入社直後から実力を示し、どんどんと出世して35歳で部長にまでなった人物だ、しかも性格や人柄も良く、おまけにイケメンだったため多くの女性社員が彼に近づいてきたが、彼は絶対に一線を超えさせはしなかった。いつしか、彼のことを皆あきらめるようになっていたのだった。
 そんな彼を8年間ずっと見てきた絵梨は着かず離れずの関係を保ってついに彼とゴールインしたのであった。
 二人の結婚生活は幸せだった。彼は優しく、家事なども手伝ってくれて休みの日にはいろいろなところにも連れて行ってくれるのだった。SEXは淡白だったが週に1回はその勤めを果たしてくれるのだった。そんな幸せな期間が1年間続いたのだった。

 しかし1年後から彼の様子が少し変わりだしたのだった。彼は相変わらず優しく自分に気を使ってくれるのだが、SEXがなくなったのだった。そして毎週、水曜日必ず帰宅が遅くなるようになったのだった。しかも自分には裸を見せないようになったのだった。
着替えなども自分の部屋でして肌を露出するような事もなくなった。
絵梨はピンときた。「・・・・浮気してるのでは」
 そして、彼になにくわぬ顔で聞いてみた。
「ねえ、貴方。この頃いつも水曜日は遅いのね。何かあるの?」
「ああ、水曜日に必ず誘って来る取引先があって・・・ごめんね」
「ううん。いいの・・・週に一日ぐらいは寄り道しないとね・」
「ああ、はは・・」
 彼がうそをついているようには見えなかった。
 絵梨はSEXYなランジェリーなども買って彼の興味を惹こうと試みたが、やはりセックスはない・・・
 そして、ついに水曜日の彼の行動を尾行する決意をした。
 もともと、勤めていた会社だけにできるだけ他の人に気付かれないように普段着慣れないお水系のスーツなどを着てさらに、サングラスや付け毛までして出掛けたのだった。

「私は彼の妻よ・・・どんな事があっても彼を信じるわ」と自分に言い聞かせていた。
 6時半・・・いつも帰社する時間に彼は出てきた。しかもひとりだった。取引先との接待なら一人ととういうことはまずない。やはりおかしいと彼女は思った。そして普通に近くの駅に入り電車に乗る・・・しかし家とは逆方向の電車だ。そして降りた駅は渋谷。彼が接待で渋谷を指定することはまずなかったので、ここでもおかしいと思った。
 そして彼は交差点を渡り東急本店通りへ向った。そしてある路地を左に入った、すかさず追いかけると彼はその先のビルに入って行った。私は気付かれないようにエレベーターに乗る彼を確認した。そして乗った後にすかさず止まった階を確認する。
「5階・・・」
 外に出て看板や案内板がないかどうか確認したがなにもない・・・・
「どうしよう・・・行ってみるしかないか」
 勇気を出してエレベーターに乗り込む。そして5階へ・・
エレベーターの扉が開く・・・そこには10mほどの通路と扉が2つあった。奥の扉の前にはダンボールなどが積んであり、人の出入りはなさそうだった。手前の扉を見ると小さい看板が取り付けてあった。
「サロン・女神」という文字が書かれていた。
「なんだろう、バーとかスナックなのかしら?」
不思議そうに看板を見ていると急に扉が開いた。
「あっ」と驚きの声を上げた私に・・・
「あっ、ごめんなさい。タバコ買いに行こうかと思って・・・・びっくりさせちゃって・・・お客様・・・どうぞ・・・」
そう言った彼女の服装は黒の革の衣装にロングブーツ、いわゆるボンデージファッションだった。
「い、いえ・・・私は・・・・」
「あら、はじめての方ね。どうぞ、どうぞみんな最初はそうやって引き気味なんですよ。でも必ずはまっちゃいますよ、。きっと」
「さあ、どうぞ」
 私は無理やり引っ張られて扉の中に入った。中は意外と広くステージのような場所があり、周りにいくつかのイスやテーブルなどが並べられていた。
 その奥に部屋が二つあり、ひとつは奴隷控え室・もうひとつは女神の部屋と書かれてあった。
女神の部屋というところに連れていかれその中のイスに座らされた。
「このお部屋でお着替えなどもできますのよ、そのロッカーのいずれかをお使い下さい。それからここに置いてあるお道具なども自由にお使い下さい」
「あ、あの・・私は・・・」
「あっ、今日は見学だけですね。だいたい、最初は皆さんそうされますから。ちょうど今、奴隷が一匹入って来ましたからそれをご覧になれますわ」
「ど、奴隷?・・・」
「あ、そうです、ここではマゾ男の事をみんな奴隷って言う事にしてますの」
「・・・・ああ、そうですか・・・」
・・・・・ここはSMのしかも女王様と奴隷の世界・・・・とんでもないところに来てしまった。しかしなぜ、ここに夫が?・・・まさか・・
私は気が動転していたのと妖しい世界に惑わされ彼女の言うがままに頷いていた。
「料金は女性は一律2000円になっています」
「はい・・・」
意外と安い料金に安心した。
「ふふ、安いでしょう2000円で飲み放題。でも男性は10倍の20000円ですから」
「20000円?」
「でもSMクラブに行く事考えれば安いものだと思いますよ。それにたくさんの女性に虐めて貰えるし・・・」
「あの・・・男性会員はどのくらい?」
「登録だけで400人くらいいますよ。それに奴隷達には身分証明書の提出を義務づけてありますから安心して下さいね。きっとお気に入りの奴隷が見つかると思いますよ」
「400人も・・・」
「じゃあ、今日は見学席へどうぞ・・・」
 部屋から出てステージのある大きい部屋へ連れてtいかれ、ステージのほぼ正面の席に座らされた。よく見るとステージの中央には檻のようなものがあり鎖のような物がたくさん釣り下がっていた。少し辺りを見回していると先ほどのボンデージの女性が男を連れてやってきたしかも黒いパンツ一枚の姿で首輪を引かれ四つん這いになって、まるで犬のような格好でやってきたのである。
「こいつに今日はお世話をさせます。これはうちの従業員奴隷ですからなんなりと言って下さい。いくら痛めつけてもいいですよ」
「ほら、ご挨拶をおし!」
「女御主人様、ようこそいらっしゃいました。本日、お世話をさせて戴きますミツルと申します。どのような事でも御命じ下さいませ」
そういって私の足下に土下座をしたのだった。私は急な出来事に驚いて足をひっこめてしまった。土下座などされたのは初めてだったからだった。
「あ・・よろしく・・ね」
やっとの事で開いた言葉だった。
「それではごゆっくり・・」
そう言ってボンデージ姿の女性は奥へ姿を消した。
 ミツルという名の奴隷はお酒を作ったり、グラスを持ってくれたりして、かいがいしく私の世話をしてくれた。20代前半の男の子であろうか、その間中ずっと跪いたままであった。私は悪い気はしなかった。そして彼にいろいろと尋ねる事にした。
「ねえ、私初めてだからいろいろと聞いていい?」
「はい、女御主人様。どんな事でもお聞き下さいませ」
彼は持っていたグラスをテーブルに置き、再び私の前に土下座した。
「ここに、来る男性のお客さんはどんな人が多いの?」
「はい、だいたいが普通の会社員ですね。学生もたまに来ますけどやっぱりお金がかかるから、30代から50代の人が多いです。僕もここのお客で来ていたんですけど、お金がないからここで雇ってもらいました。今は女御主人様のような美しいお方に跪く事ができて幸せです」
「じゃあ、貴方も・・その・・・マゾなの?」
「はい、私は真性のMだと思います」
「真性って?」
「はい、真性のマゾヒストは女性にお仕えし虐げられる事のみに快楽を感じ、普通のSEXなどできない体の持ち主の事を言います」
「セックスができない?」
「はい、私はセックスの経験が一度もありません。女性のお体に私の汚い物をなど・・・考えただけでもいやです」
「じゃあ、どうやって?」
処理をしてるのの聞きたかったが・・・声にでなかった。
「あの・・・女性に虐められる事を想像しながらオナニー・・します」
「・・・・・そう・・・」
「今日も男性会員が来てるのよね?」
「はい、先ほどここの常連の方が来ていました。もう少しでステージにあがると思います」
「え、ステージに?」
 私は慌てたもし、その男が夫の文也だった場合こんな目の前の席だったらすぐにばれてしまうからだ。
「私・・いやだわ。誰だかわからない人に顔を見られるのは・・」
「あ、大丈夫です。男性会員は許しがない限り全頭式マスクを被らされていて目の部分には特殊の柔らかいレンズが入っているから、人を見てもシルエットのようにしか見えないようになっていますから」
私は安心した・・・こんな所にいる自分に逆に負い目を感じていたからだ・・・
「それにプレイの時には声も変化させられるように、変聴器も取り付ける事ができるので女性のお客様のプライベートは完璧に守られます」
「そ、それならいいわ・・」
「女御主人様、そろそろショーは始まります。どうかわたくしめを足置きマットにして下さいませ・・・」
「あ・・・いいわ・・・」
何が足置きマットだか分からずOKをする私・・・・
ミツルは私の足元に寝そべったのだった。
「どうぞおみ足をお上げ下さいませ」
言われたとおり足をあげると彼はするりとその下に移動した。
私が足を下ろせば彼の体を踏む事になる・・・・・これが足置きマット?・・・仕方なくハイヒールを彼の胸のお腹の部分に下ろした。
「ああ、ありがとうございます。女御主人様・・・・幸せです。お望みでしたら顔の方にも移動しますのでご命じ下さいませ」
「あ。うん・・・・これでいいわ」
 私は体を踏んでいる足の感触に何かくすぐったさを感じた。それと同時にこんな事にこんなに喜んでいる青年に対して親しみを感じ始めていた。同時に足に力を入れてピンヒールを肌に食い込ませてみたらどんな反応をするんだろう・・などとも考えていた。
 店内のライトが消えて真っ暗になった。そして数秒後ステージ中央の檻に白いパンツ一枚の男性が現れた。彼の頭には皮製であろうか、顎まですっぽりと入った全頭式マスクが被されていたさらに首には首輪が手には手枷が・・・・・その姿で檻の中で膝をついてこちらを見ていた。
・・・・似てる・・・体の格好が夫の文也にそっくりだ・・・・私はそう感じたがまだ、心の中では絶対違うと思っていた。夫に限ってこんな・・・・・違うわ・・・・・きっと・・願うよう感じでその男を見ていた。
 すると先ほどのボンデージの女性が出てきて挨拶をした。
「皆様、ようこそサロン女神へ、ミストレス真紅です。今宵も奴隷たちが皆様のキツイお仕置きを待ち望んでいます。どうぞ楽しんでいって下さい」
あちこちでパチパチという拍手が起こった。
「さあ、お前。皆様にご挨拶してごらん!」
そう言って男の頭を掴んで押し下げた。
「み。皆様・・・わたくしめは恥知らずのマゾ奴隷でございます。女性に虐められるのがなによりも好きな変態犬です。どうか皆様でご存分にお嬲り下さいませ」
その声を聞いて私は息を止めた。紛れもない夫・文也の声だった。
ステージでは彼が土下座をしてお願いをする頭をミストレス真紅がブーツの足で踏みにじっている。さらにその背中を鞭で叩き始めた。
ビシッ、ビシッと音がして彼がよがり始めた。
「あ、あぅ〜・・・・・ありがとうございます。ミストレス・・・・あああ・・・・ひぃ〜」
「ほら、もっと皆様にお願いするんだよ。この豚が!」
「あああ・・・どうか皆様、わたくしめを・・・わたくしめを・・・嬲って・・・お願いです〜」
夫のそんな声を聞いた私はあまりの恥ずかしさと、裏切られた屈辱感から足の下にいるミツルの体を思い切り踏みにじっていた。
(後編に続く)

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