●私が崇拝申し上げる、Black Onyx [ブラックオニキス]の ゆきな梨央(ryonaz)様が、私の妄想を作品にして下さいました。
 ゆきな梨央様、ありがとうございました。

●原案:kazowk 作:ゆきな梨央様
 くいと顎を持ち上げれば、その生き物は私の傍らに座り込む。
 そう行動するとわかっていて、あえて試してみた行為だった。私の期待を裏切ることなく、そいつは私の思惑通りに動いた。
 薄汚い身体を恥らうことなく晒し、鼻息を荒げている。愚棒をそそり立てている。
 ――まるで発情期の犬だね……
 春も過ぎたというのに、盛んなことだ。こいつはおそらく年中、こうして盛っているのだろう。
 私に服従し、私の命令だけを待ち、ただひたすら私に頼って生きる無様な存在 。
 そう考えると、自然と私の口の端は持ち上がった。
 組んだ私の足下で、そいつは土下座し、
「明菜様、カズでございます」
 と、名乗る。私はふうっと息を吐き、視線だけをカズへと注いだ。
「この度は、拝謁の機会を与えていただき、ありがとうございます」
 そう口にするカズを、私は冷たい視線で見守る。
 注意深く、カズの言葉の端々にまで神経を尖らせて耳を欹てる。
「何の取り得もない薄汚い奴隷ではございますが、精一杯御仕えさせていただきます」
 そう言葉を紡ぐ奴隷――カズの様子を、私はただじっと観察していた。そこに表される言葉が本心から出ているものか否かは、この時点での態度を見ればすぐにわかるからだ。
 一通りの駄言を聞き終えた後、私は、
「うん、バカなわりにはよくできた挨拶ね」
 結論の言葉と同時に、カズの頭を靴で踏み躙った。これが合格の証だ。
「せっかく来たんだから、靴底でも舐めさせてやるよ。ありがたく思いなさい!」
「はい、明菜様。もったいないご命令、ありがとうございます」
「本当はお前なんかの舌が触れられるような場所じゃないのよ。感謝なさい」
 そう言って、足先をカズの眼前に放り出す。
 しかしカズは、そこで粗相をしでかした。事もあろうに、私の足を両手で持ち上げようとしたのだ。奴隷のくせに、私の足に手で触れようなど、おこがましいにも程があるというものだ。
「触れるんじゃないよ。汚らわしい!」
 目下に厳しい視線を送り、私は怒声を上げた。全身を震わせ始めるカズに、
「お前、何様だと思ってるの? 這いつくばって舐めるんだよ、バカ奴隷!」
 罵倒の言葉とともに、白い靴先で口元を躙る。カズは恐縮しながら、
「も、申し訳ございません……明菜様、お許し下さいませ」
 消え入りそうな声を絞り出した。床に頭を擦りつけ、私の白い靴底を舌で舐め始める。
 物覚えが悪い。年中欲情している。汚らわしく、醜い。それが、私の奴隷、カズだ。
 私は呆れた表情でカズを見下ろす。それでも、この瞬間、私は自分の口元にうっすらと笑みが浮かんでいることに気付く。無様な奴隷の姿と、靴へのわずかな刺激。それが相俟って、私は悦に浸る。下劣で馬鹿な奴隷だが、こうしてしつけてやればきちんと態度を改められる。それがこいつの長所だと思う。だからこそ、私はこの奴隷を大切にしようと決めたのだ。
「ふん、嬉しいだろう、奴隷?」
「はい……嬉しゅうございます」 
 その言葉に耳を傾けながら、その雰囲気に身を委ねながら、それでも私は視線をカズから放したりはしない。愚息の存在を強調し、あまつさえビクビクとそれを脈打たせている。年中盛っている、汚らわしい生き物なのだ。私がそれを忘れるわけがない。
 カズはさらにその汚い顔を、靴の下に沈ませる。懸命に舐め続ける様子が可愛らしく思えてくる。
 ――今回は、私の命令通りにできるかな?
 しかしその期待は、再び、一瞬にしてカズの馬鹿な行為によって踏み躙られた。
 全身の血が、みるみるうちに凍りついていくような感覚を覚える。この駄目奴隷を、どう痛めつけてやるべきだろうか……。そんな考えが頭を過る。
 私の足を覗き見る嫌らしい視線に、私が気付かないとでも思っているのだろうか。
 ――ねぇ……、カズ……?
 私はすいと足を後ろに引き、容赦なくカズの顔面を、
「あがっ!」
 強く蹴り上げた。両手で顔を覆い、みっともなく仰向けになって倒れこむ。カズの肩は、再度、大きく震えていた。その情けない、怯えた様子に、私の身体がゾクリと疼く。
「お前はまだ自分の身分が分かってないようだね。少し早かったかなぁ」
 嘲笑混じりの罵声を浴びせながら、
「うっぐぐ〜……」
 私はカズの腹に、靴底を叩きつけた。バスッという音とともに、みじめに倒れこんだカズの腹に足が埋もれる。苦悶の声を上げ、カズは腹を抱える。身を守る権利など、与えた覚えはない。
「お前の身分を教えてやるよ。手をどけろ、奴隷!」
「はい……明菜様……。申し訳ございませんでした……」
 カズの謝罪の言葉は、既に私の耳をするりと抜けていく。
 たたみかけるように、私は奴隷の腹を何度も踏みつけた。せっかく快感を与えてやったのに、やはり馬鹿は馬鹿だ。このダメ奴隷には、もっと調教が必要だろう。
 ――褒美は十分与えた。今度は、私の快楽の道具として使う……
 身体を丸めるカズの腹に、爪先を突き立てる。奴隷の放つ醜い声は、私にとっては心地良い響きだ。
 涙ながらに許しを乞うカズの言葉は、もはや私の意に介すところではない。
 十発――、二十発――、三十発――!
 カズが吐瀉物に塗れた頃、私はその足の動きを止めた。いつの間にか、満足感が全身を包み込んでいた。
 ――結局、私を楽しませることができるのは、こいつだけなのかもしれない。
 ヒクヒクと全身を痙攣させる奴隷を見下ろしながら、私はそんな風に感じていた。
 ふと見れば、カズの股間から白濁液が垂れている。私は呆れつつ、未だ漲りを弱めないソレを足の先で小突いた。ピクッと奴隷の身体が反応する。私は苦笑しながら、
 「まだ、死んじゃダメだからね……」
 そう言い放ち、再び椅子に腰を下ろした。
 カズの瞼が、わずかに開いたように思えた。
 気を失う直前、奴隷の目に何が映っていたのかはわからない。

 そんなの、私には関心のないことだから。

 END
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